第4章17話『クイズ』
「さぁ、今回のチャレンジャーはこちら、豊友 洒水さんです! 現代日本で何を考えているのか――勇者を目指す痛々しい若者です! しかしその夢も今回のクイズで八十点以上を獲得すればなんとぉ! 勇者が持つにふさわしい聖剣レーヴァテインを手に入れる事で一歩前進できるかも? さぁ、チャレンジャーは聖剣を手にして勇者への道を歩むことができるのかぁ!?」
「だぁれが痛々しい若者だぁ!? ってかあんた誰!? そしてここどこ!?」
試練の扉に通され……いや、試練の扉から落ちた僕は気が付いたらどこかの番組のスタジオのような場所に居た。目の前にはクイズ番組の回答者が座るような台。台の上にあるのは大きなボタンが一つ。それだけだった。
「おーっと、目が覚めたようですねチャレンジャー! それではチャキチャキ行くとしましょう! 第一問!」
「待って!? そしてあんた誰!?」
いきなり訳の分からない空間に連れ込まれて第一問とか言われても混乱するだけなんだけど!?
「わたくしですか? 私はこのクイズ【チキチキ! レーヴァテインを手に入れるのは君だ】の司会を務める『黒い影』です。まぁわたくしの話など視聴者にとっては聞き飽きた物だと思われるのでさっさと第一問へ行っちゃいましょう!」
「視聴者って何の話!? そして僕の話を聞けぇぇぇぇぇぇ!」
司会の『黒い影』はまさに黒い影で体が覆われており、姿だけでは男か女かすら分からない。どこかの推理アニメに出てくる犯人みたいな感じだ。『黒い影』では言いにくいから黒さんと略させてもらおう。
――まず整理しよう。
僕は試練の扉に入り、(正しくは試練の扉の前に立ったら落とし穴的な物に落とされたなのだが、もう入ったことにしとく)気づいたらクイズ番組的な所に居た。ここから考えられるのは……あれ? 関連性なくね? 整理しても何が起こったのか訳が分からないよ?
「さぁいきます! それでは第一問! 目の前に三人のおばあさんが現れました。勇者であるあなたは二人のおばあさんに金銭をだまし取られ、もう一人のおばあさんにお年玉をせがまれています。さぁ、この場での正しい対応はなんでしょうか!?」
A.広い心でおばあさんたちを許し、お年玉もきちんとあげる。
B.正義の心に従い、悪に落ちたおばあさんたちを抹殺する。
C.全て魔王のせいだと責任転嫁し、魔王へと挑む。
D.お年玉をせがんでいるおばあさんを始末し、身ぐるみを剥いでから残り二人のおばあさんを追う。
「なんじゃこりゃああああああ!?」
どこから突っ込めばいいの!? 問題も答えもツッコミどころ満載なんだけど!? この問題に正解なんてあるの!?
「いや、待て」
結論を出すには早い。もう一度問題文を思い出してみよう。
問題に出ているのは勇者であるぼくが非道の限りを尽くすおばあさん達にどう対処するかというものだ。つまり、答えの中から選ぶべきは勇者としてふさわしい行動のはず。
Bは無いだろう。いくら悪いことをしているとはいえ、おばあさんたちを抹殺するなんて正義の行いをする勇者の行動とは思えない。Cはもはやただの八つ当たりだし、Dはもはやゲスの行為だ。だからこの三つは不正解のはず。ならば……
ピンポーン!
目の前の台の上にあるボタンを押すとそんな効果音が聞こえてきた。やはりどこぞのクイズ番組のようにこれを押してから答えろという事らしい。しかし、回答者が僕しかいない状況でボタンを押す意味ってあるのかな?
「はい、チャレンジャー! 答えをどうぞ!」
「答えはAの『広い心でおばあさんたちを許し、お年玉もきちんとあげる』だ!」
これこそが勇者として正しい答えのはず! っていうか消去法で答えはそれしかない!
「答えはAですか……。本当にAでよろしいですか?」
「もちろんです!」
…………
……………………
………………………………
会場を包む沈黙。なんだか合ってるってわかっててもこういうのって緊張するものなんだなぁ。はやく答えをオープンして欲しい。
「残念!!」
……pardon?
えっと……なんとおっしゃいましたか黒さん? 残念? え? 不正解? いやいや、そんな馬鹿な。
「正解はDの『お年玉をせがんでいるおばあさんを始末し、身ぐるみを剥いでから残り二人のおばあさんを追う』でしたぁ! 勇者として悪を見逃してはいけませんよねぇ。再犯を防ぐという意味でもDが正解です! Bならば部分点を差し上げたのですがAは勇者としてあり得ませんねー」
「あんたは勇者を何だと思ってるの!?」
Dって僕がさっきゲスの行為だと切り捨てた答えじゃないか。いくら相手が悪いことをしたおばあさんだとしても身ぐるみを剥ぐって鬼畜過ぎない!?
「いきなり不正解のチャレンジャー! こんな初級問題を間違えてどうしたのでしょうかぁ!? 気を取り直して二問目に行きたいと思います! おぉっと、これはサービス問題だぁ!」
今のが初級って……この司会者には勇者云々ではなくまず道徳というものを学ばせる必要があるんじゃないだろうか?
「それでは第二問! 勇者であるあなたは時速3千キロで魔王城へと向かっています。魔王城までは三千キロあります。さて、あなたが魔王城に着くのは何時間後でしょう!? また、途中で魔物は出てこないものとして扱います!」
A.二時間後
B.一時間後
C.三年後
D.辿り着けない
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