第3章28話『この神父……欲に塗れてやがる!!』
そうして各々の戦いは終結した。
「ぜぇ、ぜぇ。もう……限界だ。なんなのだ、この神父はぁ」
「
カヤは魔力やら気力やらを使い切って教会の床にうつぶせになって倒れている。もう立つ気力も無いらしい。
そして僕とレンディアと言えば、
「す、すまねぇな洒水。俺の物覚えが悪いばっかりに」
「いや、僕も売り言葉に買い言葉でついつい熱くなっちゃったからお互い様だよ」
衝動に任せてお互いに言いたいことを言い合って落ち着いた僕たちは少し落ち着いて仲直りすることができた。というよりも、
「洒水も辛い目に遭ってんだなぁ。俺でよければいつでも力になるぜ?」
「あ、あはは。ありがとう、レンディア」
もはや僕が同情される感じで決着がついていた。僕がレンディアに対して衝動に任せて言った言葉の多くはこの世界で振り回されてきた理不尽な出来事の数々だった。それをレンディアが聞いて僕に同情して口喧嘩は終わったという流れだ。これはこれで良かったのだろうか?
まぁ考えていても仕方ない。今はレンディアの蘇生をしてもらうとしよう。カヤと神父の戦いも終わったみたいだし。
……しかし今気づいたけどカヤがあれだけ火球を撃ったり爪で暴れまわったりまた黒い腕を召喚とかしてたのに教会には傷一つないな。どれだけ強固に出来ててもおかしいと思うんだよなぁ。これも世界を包む理不尽の一つってやつなのかなぁ。
「まぁそれはそれで置いてこう。さて、神父さーん」
僕はレンディア(棺桶状態)を引っ張って神父さんの前まで歩いていく。
「
「凄く切り替え早いね神父さん。あ、レンディアの蘇生をお願いします」
とてもついさっきまでカヤに泣かされていた人とは思えない。いや、泣いているのはカヤも一緒だけどさ。
「おぉ、レンディアよ! 死んでしまうとは情けない!!」
「相変わらず死者に対して辛辣ですね!?」
予想していたこととはいえやはり神父として失格じゃないだろうか?
「蘇生は承りました。では100Gの寄付をお願いします」
もうこれ寄付と言う名の商売だよね? 神様の奇跡を悪用した商売だよね?
「はいよ。これでいいか神父さん」
「はっはっは。レンディアさん。これは100Gではなく100万Gですよ? まぁこれはこれで頂いておきましょう」
「ん? 足りなかったか?」
「まぁ今回は特別ですよ?」
「悪いな神父さん。今度はもっと持ってくるぜ」
「楽しみにしています」
「詐欺ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
目の前でぼったくりと言う名の恐ろしい詐欺事案が発生していた!?
「ちょっと神父さん!? 何しれっとそんな大金懐に入れてるの!? さっさとお釣りの99万9900Gをレンディアに返してやってよ!」
「…………さて、それでは蘇生の準備を」
「目を逸らすなぁ!! ちゃんとこっちを見ろぉ!!」
神父さんはレンディアから受け取ったお金を懐にしまいながら僕と目を合わせようとしない。こ、こいつ……。
「レンディアもレンディアだよ! いくらなんでも桁が違いすぎるでしょ桁がぁ! さすがに気付こうよ!?」
コンビニで百円出そうと思って間違えて百万円出すようなものだ。そしてそんなバカは見たことも聞いたことも無い。
「だが洒水……俺もう手持ちの金がねぇよ……」
気落ちした感じに聞こえるレンディアの声。
「手持ちがどうとかじゃなくてそもそも払い過ぎだって言ってるんだよぉぉぉぉぉぉぉ!!」
そこら辺は話の流れで察してほしかったなぁ!!
「なぁに言ってんだ洒水? 前に来た時も俺は神父さんに金が足りねぇ所を特別に助けてもらったんだぜ? なぁ神父さん?」
「……………………」
神父さんは視線をあからさまに僕とレンディアと合わないようにしていた。あからさまに怪しい……まさかとは思うが、
「おい神父さん? まさかとは思うが貴様、レンディアが来るたびに似たような感じで騙してたんじゃ……」
「!?(ビクッ)……は、はて、何のことかわかりかねます」
こ……この神父……欲に塗れてやがる……。
僕は僕たちと目線を合わせないように必死になっている神父さんの肩を優しく掴んで、
「神父さん……今まで貰いすぎてた分、返しましょっか?」
と、耳元で囁いてみた。
「……取ってまいります」
そう言って神父さんは教会の奥へと引っ込んでいった。
「ん、神父さん? って行っちまった。なぁ洒水。神父さんは気分でも悪りいのか? なんか顔が真っ青だったんだが」
棺桶状態ってそこまで周りが見えるんだ?
もう普通に生きてる状態と変わらなくない?
「あぁ、大丈夫だよレンディア。ただ、これからはあんまり騙されないようにね? まぁ言っても無駄な気がするけど」
「ん? おぉ。なんだか分からねえが分かったぜ!」
断言しよう。絶対に何も伝わってないだろう。そして何もわかってない以上、また誰かに騙されるだろう。
そうして待機していると奥から神父さんが肩を落としてやって来た。
「レンディアさん。こちら、神からの祝福です」
「ん? なんだぁ祝福って? ってこりゃ金じゃねえか。なんで俺に?」
どうやら今までちょろまかしていたとは言いたくないらしい。まぁキチンと返すならそれでいいか。僕はもう何も言わないでおこう。ただ、それにしても神からの祝福と言ってお金を渡すのはどうなのだろうか? この教会はどこまで俗っぽいのだろう? そりゃ信者も少ない訳だ。
「神のお告げによりレンディアさんには神の祝福が与えられることになりました。お受け取りください」
どこまでも神の祝福で押し通すらしい。神父失格というか人間失格じゃないかな?
「神からの祝福か……じゃあ貰っておくぜ! ありがとうな!」
そう言って神父から受け取ったお金を棺桶の中へと仕舞うレンディア。前も思ったけど死んでる状態なのに元気すぎやしないだろうか? そしてレンディア。お願いだからそろそろ人を疑うことを覚えよう?
「さて、では神の祝福も払っ……与えたことですし蘇生を始めましょう」
「おう、頼むぜ!」
そうして神父さんは懐から一冊の本を取り出した。前の蘇生の時も本を取り出していたけどやはりあれが無いと蘇生が出来ないのだろうか?
「主様」
そんな事を考えている僕のすぐ横に這うようにして移動してきたカヤ。もう力を使いすぎて歩く気力すら無いようだ。でもだからと言ってかわいい女の子なんだからそんな芋虫みたいに床を這ってこなくても……とは思ったが口には出さないでおこう。
「どうしたのカヤ? まだ神父さんに対しての怒りは収まらない?」
「まぁ確かに怒りは収まっておらぬが無駄だという事が身に染みて分かったからな……。時に主様。主様は蘇生ってどういうふうにやるのか知っているのか?」
「蘇生ね……うん。知ってるよ」
ウェンディスを蘇生してもらった時を思い出す。
「どうした主様!? 目が虚ろになっているぞ!? そんなに壮絶な内容の蘇生だったのか!?」
どうやら過去の事実から目を背けたいがあまり目が死んでいたようだ。
「まぁまぁ、聞くより見たほうが早いよ。僕たちはただ見てるだけだし」
「まぁ、それはそうなのだが……」
カヤが渋々と言った感じで黙る。その時だった。
「ハーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッ!!」
以前の蘇生の時と同じように神父さんが聖書を広げて奇声を上げる。どうやらあれも蘇生に必要な物らしい。これっぽっちもそうは見えないけど。
そして神父さんは聖書を持った右手を振りかぶって、
「きえええええええええええええええええええええええええい!!」
レンディア(棺桶状態)を聖書を持った右手で殴った。
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