第3章29話『蘇生成功! そしてまともなのは誰だ!?』
「きえええええええええええええええええええええええええい!!」
「んんんんんんんんんんんんんんんんんんんん!!!???」
なんと、神父さんはレンディア(棺桶状態)を聖書を持った右手で殴った。それを見てカヤが目をひん剥いて驚きを露わにしている。まぁ気持ちは分かる。というかまんま前回蘇生を見ていた時の僕である。
そしてレンディアの入っていた棺桶にヒビが入り、ヒビが広がっていく。
「なぁ主様ぁ!? あの神父は何をトチ狂っているのだぁ!? 一体何を仕出かしているのだぁ!?」
「あれが蘇生なんだよなぁ」
僕につかみかかるカヤにそう説明するが、
「なんだ!? 主様までおかしくなったのか!? あんなので蘇生するわけがなかろう!? むしろ止めを刺しているではないか!」
「まぁ見てれば分かるって」
棺桶のヒビが全体へと及んだ時、ちょっとした光とともに棺桶が消失する。
そしてその場には棺桶は元からなかったかのように消失し、代わりにレンディアの姿があった。なるほど、前回はこうやってウェンディスも生き返ったのか。その瞬間だけ見てなかったけどこれで理解できた。……理解できないという事がね!!
「何が見てればわかるなのだぁ!! 現実を見ろ主様ぁ!! ただ殴っただけで死人が生き返るなどあるかぁ!?」
そんな中、まだ僕へと詰め寄ってくるカヤ。っていうか蘇生に文句があるなら神父さんの所に行くべきじゃないかな? まぁ僕にだけ気を許していると思えばそれはそれで嬉しいのかなぁ。まぁそれは置いておいて、
「とりあえずカヤは現実とか置いといてまず後ろを振り返ってみようか?」
「後ろだと? 後ろにはレンディアぬおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」
レンディアと目を合わせて奇声を上げるカヤ。まるでお化けにでも出会ったかのような驚き方だ。まぁある意味似たようなものなのだが。
「どうしたんだカヤちゃん? そんなに驚いて」
「い、いき、生き返ってる? あ、あれで? う、嘘であろ?」
未だに神父さんの行った蘇生が信じられないようだ。ふむ、ここはひとつ納得できるように僕がピシッと言うべきだろう。
「カヤ、これが現実なんだよ」
「いやいや主様! これはおかしいであろう!? だってだって、ただ殴っただけではないか!?」
どうしても現実に今起こった事が信じられないらしい。
「カヤ! 逆に考えてみるんだ! ……今まで納得できるような出来事がこの世界で一つでもあった?」
「……そういわれてみれば確かに!! って黙りゃあああ!!」
「うわわぁ!?」
襲い来るカヤの爪の一撃! 僕は予想外のそれをぎりぎりで躱し、
「何をするんだよカヤ! 僕は君にとって必要な人なんでしょ!」
「殺しはせぬから安心するがいいわぁ! だが今のはさすがの童もイラッときたぞ! 頼むから一発殴らせるのだ!!」
さっきの攻撃は殴るというより切り裂く気満々の攻撃だった気がしたのだが気のせいだろうか?
「イヤだよ! っていうか何にイラついてるの? カヤもさっき確かに! って納得してたじゃないか!」
「それとこれとは話が別だ! 事実だからと言って全て言って良い訳ではないのだぞ主様! わかるだろう?」
「ふむ」
僕は先ほど言った自分の言葉を反芻して考える。僕がカヤの立場だったらどう思うだろうか……。
「…………カヤ」
「なんだ、主様?」
「ごめんなさいでしたぁ!!」
僕はカヤに向けて土下座を敢行した。さっき僕が言ったことを自分の身に置き換えてみよう!
僕「なんで勇者目指してるのにこんな理不尽な目に遭わないといけないんだぁ!!」
誰か「ほら、ベッド入ってすぐ眠ったり、装備品を武器屋じゃないと外したり装備できなかったりとかが勇者っぽくね?」
と言われているようなものだと考えたら確かに腹が立つ! そんな事を言われたら僕はそいつを泣くまで殴るだろう。いや、むしろこの世から消え去るまで殴り続けるかもしれない。
「分かってくれればよいのだ。童も短気だったな。殴るのはやめておこう」
「そうはいかない!!」
あれだけ失礼な事を言ったんだ! カヤには僕を殴る権利がある! そして僕には殴られる義務があるんだ!!
「さぁ! 僕を殴るんだカヤ! 盛大に熱烈に強烈に! 君には僕を殴る権利がある!」
「嫌なのだが!? というか主様にはそっちの趣味でもあるのか!? 引くぞ!?」
「仕方ありませんねぇ。それでは間を取って兄さまが私を性的に虐めるという事で手を打ちましょう」
「「どこから現れたウェンディスゥゥ!!??」」
いつの間にかカヤと僕の間にひょっこりとウェンディスが姿を現していた。本当に神出鬼没な子である。
「私を甘く見ないでください兄さま! 兄さまあるところに妹あり! 兄と妹はいつでも一緒に居るものなのですよ!? 精神的にも肉体的にも兄と妹との繋がりは固いのです!」
「全国の兄と妹に謝れぇぇ!!」
そんな兄弟愛は聞いたことがない。
「さて、そんな事より兄さま。レンディアさんの復活も済んだことですし行きましょう!」
なんて自由な子なんだウェンディスは……。自分で会話をかき乱しときながらこの態度。ある意味感服するよ。褒めてないけど。
「行くってどこへ? 一応ギルクさんの武器屋に行くって話だったけど……」
「童はどこでも構わんぞ? 武器屋に行きたかったのは伝説級の武器を没収しようとしての事だったのだが……無理だという事が分かったからな」
「あれ? それはどうして?」
確かこの前は魔王である自分が武器屋の商人如きに負けるわけがない(笑)みたいな事を言っていた気がするんだけど。
「主様、なぜだろう? なぜか主様の視線が不快なのだが?」
「気にしない気にしない。ささ、なんでギルクさんの武器屋の商品を奪うっていうのが無理だと思ったの?」
さすが魔王。直感が鋭いとかそんなのだろうか? 僕の視線の意味になんとなくでも気づくとはさすがである。
「うっぬぅ。何か引っかかる気はするがまぁ良い。なんでも何も主様が言ったのではないか。武器屋に居る人物が人外の生物で童よりも格段に強いとな」
断言するが、そこまでは言っていない。
「ギルクさんに向かってなんてことを言うんだよカヤ! 彼は一応人間だよ!」
「一応!? 主様、それフォローしたつもりかもしれぬがフォローになっていないからな?」
どうやら本音がポロっと出てしまっていたらしい。
「あの時の童は主様の目が節穴かと思っていたのだが……この村に住んでいる者たちはどうやら全員童と同等かそれ以上の力を持っている人外生物のようだからな」
「「「異議あり(です)!!」」」
「却下だこの人外どもがぁ!!」
村の住人である僕とレンディアとウェンディスが抗議の声を上げるが却下される。何故だ!!
二人はともかく僕は真人間のはずだよ!?
これは……抗議する必要があるだろう。
戦争だって辞さない覚悟である。
そして――
「次回、真人間を決める戦い! まさかこの争いがあんな悲劇を彩ることになろうとは……」
「誰に言ってるか分からんが主様よ!? おそらくその戦い決着つかぬぞ!?」
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