第3話『お前らが魔王倒しに行けよ!』


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 豊友ほうゆう 洒水しゃすい 16歳 男 レベル:1


 クラス:村人 ■■■


 筋力:397


 すばやさ:681


 体力;578


 かしこさ:387


 運の良さ:1


 魔力:27


 防御:478


 魔防:388


 技能:鑑定・耕作・言語理解


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「いや……ホントになんなのこれ!? ステータス軒並み高すぎない!? さっきのドラゴンどころかレンディアも上回ってるんだけど!?」


 筋力と運の良さだけはレンディアより下回ってるけどさぁ!?

 っていうかなんだよ!! 運の良さ:1ってぇ!! なんでそこだけ低いんだよぉ!!


「そんなに騒いでどうしたんだ洒水しゃすい? さっきからお前変だぞ?」


 そういえばなんでレンディア達は僕の事を前から知ってるような感じで話しかけてくるんだろう?


「さっきから変って……普段の僕がどんなのか知ってるの?」


「そりゃあ10年来の戦友だからな。しかもこの村の防衛リーダーの事を知らないわけがねえだろ」


 ……防衛リーダー? 10年来の親友?


「10年来の戦友って……僕がレンディアと?」


「おう」


「僕がこの村の防衛リーダー?」


「おう。さっきからなんでそんなことを聞くんだ? もうボケが始まったか?」


 何故かは分からないが、レンディアの中では僕は10年来の戦友で頼りになる仲間っていうポジションらしい。ここは話を合わせておくとしよう。


「ああ、ごめんごめん。ちょっとぼーっとしちゃってたよ。ついでに他にもいろいろ聞いてもいい?」


「剥ぎ取りしながらでもいいか?」


「……う、うん」


 出来ればやめてほしいんだけどなぁ……まさかドラゴンに対して憐れみの視線を向ける日が来るとは思ってなかったよ……。


「で? 何が聞きたい? オレァ頭ワリィから難しいことは分かんねぇぞ?」


「かしこさ:10だしね……」


「あ? なんだ? かしこさ10ってのは?」


「レンディアのステータスだよ。かしこさ:10でしょ?」


「すてーたすぅ? なんだぁそりゃあ? うめえのか?」


 食べ物じゃないよ! 定番か!?


「魔物や人をジッと見てたらなんか数字が浮かんで来るでしょ?」


「ん~~? ……見えねぇぞ? なんだぁ!? 頭がワリィ奴は目もワリィなっておちょくってんのかぁ!!?? だぁれが魔物以下の低能だぁ!!?? ぶっ殺すぞぉぉ!!」


「そんなことは言っていない!!!」


 いや、まぁレンディアのかしこさは少なくともドラゴンのかしこさを遥かに下回っていたけれども!!

 

 それにしても見えないのか……。このステータスが見えるのは僕だけって事かな?

 そういえば僕のステータスの技能に鑑定というのがあったな。もしかしたらこれが理由かもしれない。転生した特典みたいなものかな?



「見えないなら見えないでいいんだよ。気にしないで」


「おう! 気にしねえことにするぜ!」


「え?」


「ん? どうしたんだ?」


「いや……なんでも……」


 凄いぞ!! 気にしないでって言ってここまでその通りにされた事は今までにないぞ!? なんて幸せそうな頭をしてるんだよ、このレンディアは!!


 いや、楽でいいんだけどね!? それに好感が持てるなぁ……会ってまだ半日も経ってないけど嘘が付けない人なんだなって思わされるよ!


「それで聞きたいことなんだけど……なんで勇者を待ってるの? 魔王ってそんなに強いの? 村のみんなで倒しに行けたりしないの?」


 先ほどのドラゴンのレベルが83だったし、おそらくこの世界でのレベル上限は100とかだろう。

 まぁこれはRPGに照らし合わせた推測だから間違ってる可能性もあるけど……。


「何をバカな事言ってんだよ洒水……魔王なんだから強いに決まってんだろ?

 俺らみたいなか弱い村人じゃあ手も足も出ねえよ」


 ドラゴンの剥ぎ取りをしながらその身を震わせるレンディア。


「ダウトォォォォォォォォォォォォ!!」


 嘘つけぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!! 村人がか弱い!? さっきのレンディアと村人A《レデック》がか弱い!? 今この瞬間もドラゴンなんていう魔物の剥ぎ取りをしている2人がか弱い!?


 あれがか弱いんならライオンやチーターはもう愛玩動物になっちゃうよ!!

 さっきの2人に比べたら僕が今まで見てきた凶悪な人や動物が全部かわいく見える!!

 


「いや、これ勇者待つ必要ないだろ!? お前らが魔王倒しに行けよ!

 あれだけ強いんなら十分行けると思うよ!?

 多分僕とレンディアと村人A《レデック》が力を合わせれば倒しに行けると思うよ!?

 もっと言うと、他の村人で強い人が居ればその人たちも連れて行けば魔王なんて簡単に倒せるんじゃないかなぁぁぁぁ!!!!」


「酒水お前……俺たちをどれだけ過剰評価してるんだよ……。

 俺たち村人は日々襲ってくる魔物におびえながらその日その日を生き延びるのに必死なんだよ……」


 暗い顔と声でレンディアはそう言う。


「レンディア……」


 












 ……ドラゴンの剥ぎ取りをしながらそんなこと言っても説得力がないよ??


 魔物に怯えながらぁ!? 嘘つけぇ!! ドラゴンが現れても怯みもせずに向かって行ったじゃないか!!

 賭けなんてものも持ち出してたじゃないか!?

 それなのに魔物に怯えながらぁ!? 説得力0なんだよぉぉぉぉぉぉ!!!



 ……いや、待て。落ち着くんだ。

 もしかしたら今日襲ってきたドラゴンは魔物の中じゃ弱いのかもしれない……。

 もしかしたら勇者や魔王が規格外に強いのかもしれない。

 それに比べたら村人は弱いよ? っていう意味かもしれない……。

 魔王の姿を見ることさえできればそのステータスから色々判断できるんだけどなぁ……。


「ちなみに召喚の儀式ってどこでやっているの?」


「そんなの王都に決まってんだろ? あそこの姫さんくらいしか儀式出来るお方はいねえしな」


 ほう……王都か……。少し行ってみたいな。

 それに勇者や今レンディアの口から出たお姫様にも興味がある。会ってそのステータスを見てみたいものだ。


「ちなみに王都からここまでどれくらいかかるの?」


「知らねえよ……なんだぁ!? また馬鹿にすんのかコラァ!! だぁれが距離っていう言葉も知らないお猿さんだゴラァ! ちょっと算術が苦手なだけだ! 1桁同士の足し算ならギリギリできらぁ!!」


「いちいちキレないで!? 僕何も言ってないからさぁ!!」


 どこでキレるのか予測不可能すぎる!! もはやただの言いがかりだ!!

 そして1桁同士の足し算ってもはや算数だよね!? それがギリギリっていうのはごめん! 馬鹿だね!! さすがかしこさ:10!


「ならいいか……。それで王都までの距離だっけか?

 そんなに知りたきゃ雑貨屋にでも行くか? 俺もこのドラゴンの鱗を売りに行きたいしよぉ」


「雑貨屋?」


「ああ、確か地図とかも売ってたはずだぜ。まぁあんなの冒険者や勇者にしか普通は売れねえけどな」


「雑貨屋か……うん、行くよ」


 地図にも興味はあるが、雑貨屋にはとても興味がある。

 僕がやっていたRPGゲームの雑貨屋では、魔物の情報なんかも売っていた。もしそういうのがあるのであれば欲しい。


「あ、でもお金がないか……」


 この世界に来たばかりの僕はお金を持っていない。

 一応持ってたりしないかなぁと探してみるが、やはり無い。


「何言ってんだよ洒水しゃすい

 お前の金は全部ウェンディスちゃんが管理してんだろうが。

 っていうか村で一番稼いでるくせに金がないとか嫌味かよ!」

 

 ん? ウェンディスちゃん?

 誰だ? それ?


「ウェンディスちゃんが?」


「おいおい、なんでお前がちゃん付けするんだよ。お前の妹だろうが」


 I・MO・U・TO!?

 妹!?

 妹ってあの妹!?

 1人っ子の僕には縁のなかったあの妹なのかい!?




 ……落ち着け……たかが身近な年下の女の子が出来ただけじゃあないか。

 ここで取り乱したらまた不審に思われる。冷静に! クールに行こう!



「そうだね。妹に全部渡してるんだった……それでその妹はどこだい? 美人なのかな? かわいい系かな? 何歳かな? 僕の事をどう思っているのかな? 今どこに居るのかな? スリーサイズは?

 いや別に知ってるんだけど念のため確認しておこうかなってさあははそれでどうなんだい早く答えてくれ!!!」


「……洒水しゃすい……お前……」


 全然冷静じゃなかった!?

 

 でも仕方ないじゃん! 妹だよ妹!

 夢にまで見ていた妹だよ!!

 妹居る人は妹なんてとか良く言うけど1人っ子の僕からしたら羨ましいんだよ!!

 

 って言ってる場合じゃない! すごい変な奴を見る顔でレンディアがこっちを見つめてる! はやく何か言い訳をしないと!?


「ごめんごめん。魔物と戦った後で変に興奮しちゃってたよ!」


 って僕のバカーーーー!!! 魔物と戦ったのはレンディアと村人A《レデック》じゃないか! 僕は見てるだけだったじゃないか!

 こんな言い訳が通じる訳が


「ああ、なら仕方ないな」



 通じたーーーーーーーーーーーー!!!!????

 なに? 馬鹿なの? 大馬鹿なの? レンディア? そうだったね! 馬鹿だったね! でもそんなに馬鹿だと詐欺とかに引っかかっちゃいそうで不安だよ? 大丈夫!?





「おお、ウェンディス!」


「妹キターーーーーーーーーーーーーーー!!」


 レンディアが僕の背後に視線を向けながら、僕の妹だというウェンディスちゃんの名前を呼び掛けた瞬間、僕は喜びの悲鳴を上げながら全力で振り向いた。


「お疲れ様です。兄さま」


 そこには……銀! 髪! ロリ!!


 腰まで届く銀髪に輝く髪をなびかせ、かわいらしい笑顔で僕に微笑みかける美少女の姿があった!

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