番外編 二人のお出かけ

「いやぁ〜。今日は晴れてよかったですね〜!」

 アリアナは日差しに手を当てて言う。

「そうですね」

 カムレアはニコニコしている。


 ここは、ある街の商店街のようなところ。昼ごろ、急にアリアナに呼び出されたカムレアは、急いで駆けつけて、今に至る。


「……さて、要点を整理しますね。まず、今日の目的は、お姉様にプレゼントを買うこと。なぜ今日か、それは、お姉様が丁度出て行ったから!」


「はい、つまりぼくも、急に招集されたんですよね」

「あはは、すみません!」


 リーンが出かけている時に、二人が奮闘する……というか、リーンが美咲さんと会って、話し合いをしていた日(第12話の時空)のお話です。まあ、つまり、リーンもこの街にいるのです。はたして、リーンがいることに気づいていない二人は、バレないでサプライズプレゼントを調達できるのか!?


「じゃあまず、少し店を見て回りましょうか」

 カムレアが言う。

「そうですね。あ、まず、あそこなどどうでしょう!」

 アリアナは指を指す。そこには、おしゃれなブティックがある。

「ああ、あそこですね、はい。では、行きましょう」


(やっぱり、女の子はああいうものオシャレなものがいいのかな)

 カムレアは思う。

「そうですねぇ……」

 急に、アリアナが言う。


「っ!? え、今……?!」

(心を読まれた……?)


「ふふふ、読んでないですよ〜!」

「え……なに? 怖……」

「まあいいじゃないですか、行きましょう!」


(不思議な子だな……)

 カムレアはまた思う。

「不思議? そうですかね?」

 アリアナは言う。

「また!?」



 ***



「いや〜。なかなかいい物が見つかりませんね〜」

「そうですね、一旦休憩しましょう」

 カムレアはそう言い、近くのベンチに座る。


「カムレアさん、一つ聞いてもいいですかね?」

「はい?」

「カムレアさんって、お姉様のこと、好きですよね……?」

「! な、ぜ、それを……?」


 カムレアはとても顔が赤くなっている。アリアナはすかさずニヤニヤしている。


「やっぱりそうなんですねぇ〜!」

「な、なんでそんなことを聞いたのですか!?」

 まだ、ニヤニヤしているアリアナに、カムレアは顔が真っ赤だ。


 すると、急にアリアナは悲しそうな顔をして言う。

「……私と同じですね」

「……それは……どういう……?」


「ああ、はい。私は、ルーク・アーノルド様、知ってます?彼が好きなのです。だから、お姉様は恋敵、なんです」

 アリアナは笑う。

「……」

「あはは、でも、絶対にお姉様には敵いませんけどね」

 アリアナは少し、目線を下に落とす。まっすぐ前を見るのが辛かったからだ。

「あ、すみません、辛い空気になっちゃいましたね。じゃあ、カムレアさん、お姉様を好きになった理由はなんですか!?」

「っ……。それは……」

 カムレアは目を逸らす。

「それは?」

「彼女、ぼくのお母様のこと、『優しそうないいお母さんだね』って言ってくれたんです。きっかけはそれですね」


「え……? マザコンですか……?」

 アリアナは少し、引いているような顔をする。

「ちっ、違いますよ! ぼくは____________」

 少し、悲しそうに笑う。

「……それは……」

 アリアナは驚く。


「ぼく、身体が_________。だから……」

「もう……結構です……」

 アリアナは止める。

「……。あ、でも、彼女リーンには内緒にして下さい。心配をかけたくないので」


「……はい。分かりました」


 少し、重い沈黙が流れる。


「あ、そうだ! 敬語じゃなくてもいいですよ! だって、元々カムレアさんは年上ですし、もしかしたら、お姉様の旦那様になるかもしれない方ですから!」


 アリアナはそう言い笑う。

 勿論、リーンとカムレアが結婚するには、リーンの気持ちと婚約破棄という、二層の分厚い壁がある。だから、絶対に無理だとカムレアは思っている。


「たしかに、現実的には難しいかもしれない。でも、きっと、気持ちを強く持てば、願いは叶います!」


「……そうだね。アリアナも頑張ってね」

「はい!」

「じゃあ、プレゼントの続き、見に行こうか!」

「はいっ!」



 ***



「やっぱり、実用的な剣にして、よかったですね!」

「うん、そうだね、喜んでくれるといいけど……」

「……あ、」


 アリアナは立ち尽くす。

「どうしたの?」

「お、お姉様がいます……」

「え……!」

「あれは……金髪の美少女と一緒にいますね……。二人で路地裏に入っていってしまいました」


「あれって、ルーク様の妹君のミサ・アークリー様じゃないかな?」

カムレアは言う。騎士団にいた時から見覚えのある方だったからだ。


「え……、それって、将来のお姉様の義妹になる方と言うことですか?」

「あ……うん、そうだね……」


(しまった、深い傷を負わせてしまった!)

 アリアナは思う。


「でも何でしょう。何故か、あの方とは親友になれる気がします……」

 アリアナは笑顔で言う。


 少し経った後、ミサ(美咲さん)だけが路地裏から出てきた。入れ違いに、柄の悪い男たちが入っていく。

「あれ? 二人は別れたね」

「そうですね、何の話をしていたのでしょうか」

「う〜ん、ルーク様について……とか?」

「たしかに、二人の共通点ってルーク様ぐらいですもんね」


「……今、路地裏に入った男たち……」

 アリアナはそう言いかけた。

「うん。少し様子を見よう」

 カムレアは路地裏の奥のリーンがいる場所まで見える位置に行き、様子を伺う。


「……リーンに話しかけているね」

「これって、お姉様が危険です!」

「うん、そうだね。アリアナ、君はここで待っているんだ。いいかい?」


 カムレアはそう言い、外套の下から短剣を出す。


「……はい」


(でも、カムレアさんは護身用の短剣しか持っていない。どう戦うつもりなのでしょう……)

 カムレアは音を立てずに路地裏に入る。

 すると、やつらはリーンの服を脱がせようとしていた。

「っ……!」


 カムレアは後ろから、一人の後頭部に蹴りを入れる。


「ぐぁっ!」

 一人が倒れる。

「お前、何者だ!!」

「……」


 カムレアはすぐに、リーンを抱えて走る。

「あっ、待てよ!」

 二人もやはり追いかけてきた。

(くそ……。意識がないのか……)


 カムレアは路地裏から出てきて、アリアナに言う。

「今すぐ逃げるぞ! 不毛な戦いはしたくないんだ!」

「はい!」

 街をうまく目眩しに使い、サッと逃げた三人は違う路地裏まで逃げた。


「うん、ここまでくれば大丈夫だと思う」

 カムレアはそう言う。

「はい……。お姉様は大丈夫でしょうか……」

「うん、でも、今のぼくたちにできることは、できるだけ早く医者に届けることぐらいしかない。心配なんて、してもしなくても、結果は変わらないから」


「……。」

(やっぱり、カムレアさんは……)


 その時、カムレアの後ろに、さっきの男二人がいた。

 そのまま、カムレアを刺そうとする。


「っ、カムレアさん!!」



 すると、彼は短剣を後ろにぶっ刺した。


「ぐあぁぁぁあ!」

 男たちの方を向きもせずに、そのまま。


「えっ…….」

「……だからさ、今はリーンを医者に連れていかなきゃ行けないんだって。話聞いてたか? ……お前ら、そこを退け。さもないと、もう一度斬るぞ……!」


 カムレアは二人の男を睨みつける。


「ひっ!!」

 男たちは逃げ帰っていった。


「はぁ、とりあえず、アリアナ。リーンはぼくが運ぶから、先に、診療所に行って連絡をしておいてくれ。『気絶しているから』と」

「は、はい!」


 アリアナは走って診療所に向かった。カムレアは、リーンをまた抱えると、アリアナの後を追った。

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