第11話 研究

 正直大変だし、めんどくさそうだけど、推しの頼み事なら、聞かないはずがない!


「……いいよ。じゃあ、明日に私たちの館のある山を降りた麓ふもとにある村に行こうか?」

「はい! ありがとうございます!」

 目を輝かせている。うっ、眩しい……。


「ふぁあ……」

 アリアナはあくびをする。

「眠いの?」

「あ、いえ、なんか、気が緩んだといいますか」


 もしかしたら『ヒール』には、リラックスさせる効果とか、精神面の効果もあるのかもしれない。


「ごめんなさい、私も眠くなっちゃった」

「あ、そうですね。ではお休みなさい、お姉様」


 アリアナはそういうと、一礼して、部屋から出て行った。

「ふぅ……」

 私は相変わらずめっちゃ広いベットに横になる。

『ヒール』については自己的に研究していかないといけない。なんせ、もうゲームとのストーリーとは完全にずれてしまったから。


 私が『ヒール』を手にしたことによって、おそらく、ストーリー的には王宮で働くことになるのは私に変わるはず。でも、私はクリストバル様との婚約をしている。もしかしたら、破棄になるかもしれない。


 もともと、クリストバル様は私のことが好きで婚約をしている訳ではないし。色々と、未知な事だらけになる。大丈夫かなぁ……。ま、なんとかなる!


 さて、『ヒール』についての実験をしたいところだけど……。よし、理系じゃないけど●治大学の力、見るがいい! 


 私は手を胸に当て、『ヒール』と念じた。

 すると、先ほどのヒールを獲得した時と同じように、手を当てた場所が緑色に光る。


 光が消えた瞬間、体がとても軽くなった。今日は妖精とのやりとりもあって、大分疲れたはずだけどな……。このままどこまでも飛んでゆけそうな感じがした。もう一回、『ヒール』と唱えた。


 だが、今度は何も起こらないどころか緑の光も出てこなかった。

 なんでだろう……。一番あり得るのは魔力切れか。そう考えると『ヒール』は、1日に2回が妥当な回数のようだ。よし、じゃあ今日は一回研究はやめ!


 ベットの上で天井を見上げる。目をつぶったことにより、少し思考が冷静になる。

 ……『ヒール』強くね……!?

 もとのゲームでは、そこまでアリアナが『ヒール』に興味を示していなかったから、心の中で唱えれば回復することぐらいしか知っている事はなかったけど、今となっては『ヒール』がチート能力に見えてくる。まあ、考えてても仕方ない!寝よう!とりあえず、蝋燭ろうそく消さないと。



 ……だが、どれほどのチートでも、困ったことはある。

 例えば、先ほど『ヒール』なら、寝る前に使ってしまうと細胞を活性化させてしまうため、

「……寝れねぇ……」

 体がとても元気になり、このような事態が起こるのだ。



 次の日 朝 修練場


「大変なんです! かくかくしかじかで、ヒールが使えるようになってしまいました!」

「なんだと!? なら、こいつの足を治してやってくれないか?」

 騎士の1人がを指さす。

「あ、はい! 『ヒール』」

 すると、緑色に光り、その騎士の足は綺麗に治った。

「なっ……」

 ラールド団長は目が飛び出そうなほど驚いている。

 カムレアも驚いていた。


「これは……、王国側には秘密にしておいた方がいいな」

 ラールド団長が言う。

「何故です?」

「こんな希少な魔法を使える者がいると分かると、すぐ、奴らはお前の体を使って、研究を始めるだろうからな」

「っ! 怖……」

「いいか? だからあまり無闇に人には言わないようにしろ。今知っているやつは後、誰がいるんだ?」

「えっと、アリアナ……あ、妹です。と、三方だけです」

 ラールド団長とカムレアと私が怪我を治した騎士さんを見渡しながら言う。


「……そうか、いいか? もう一度言うが、死んでも言うんじゃないぞ? すぐ捕まって体をいじられるからな」

「ひぇっ……。わ、分かりました!」


 でも、ゲームの方で、アリアナはそんなことをされてはいなかった。も、もしかして、あの乙女ゲームは研究されつくして、絶望したアリアナが頭の中で描いた話……とか?

 いやいや、そんな怖いわけないよね。



 私は練習が終わったら、一旦家に戻った。

 すると、アリアナはもう玄関の前に立っていた。


「ごめんね、待たせちゃった?」

「いえいえ! そんなことはないです! さ、とりあえず行きましょう! 村へ!」


 アリアナは笑顔で言う。よっぽど、村へ行くのを楽しみにしていたのだろうか。ならば期待に応えるのが姉の使命っ! と、思ったのだが、さっきの団長の話を聞いたら少し怖くなったし、あんまり、行きたくないなぁ。


「あのさ、アリアナ、________」

「なんですと!?」

「だからさ、あんまり人にバレたくないんだよね。だから、ルーク様とかにも言わないでくれない?」


「も、もちろんです! カムレア様にも内緒ですね?」

「あ、いや、カムレアは知ってる」


(いつのまに!? やっぱり、最近は朝、いらっしゃらないと思っていましたが、カムレア様に会いに行っているのでしょうか)


「はい。では、カムレア様以外にバレないよう、頑張ります! ならば、今日の村へ行くのは無理ですかね……?」

「……ごめんね」

「ああ、いえいえ、お姉様の所為ではございません! 構いませんよ!」

「そう? じゃあそのかわり、ルーク様のところに行こうか?」

「へ? いや、それは、私は邪魔なのでは……?」

 やっぱり、私が婚約者だから、彼女は遠慮してしまっている節がある。まあ、当たり前なんだけど。

「別に大丈夫だよ、なんでいるのって聞かれないと思うけど、聞かれたら、暇だったから付いてきたって言えばいいんだから」

「そ、そうですかね?」

「うん!」




 王城内


 シャンデリアや赤いカーペットといった、ザ・城のような装飾が沢山ある城だった。


「うわ〜! ひっろいね!」

「そ、そうですね……」

「えっと、最上階の真ん中の部屋だって。やっぱ第一皇子は伊達じゃないね」

「は、はい……」


『コンコン』

「ルーク様〜?」

 私は言う。

「はい? 入ってどうぞ?」

 絶対、誰だって思われてる……。


 私たちは扉を開けてルーク様の部屋に入る。すると、紅茶を静かに飲むルークがいた。


 うわ〜やっぱイケメンは絵になるねぇ……。

 ちらっとアリアナを見ると赤面していて、それどころではないようだ。


 ふふふ、アリアナはルーク様が好きなの、バレていないと思っているんだよね。なら自然に私はこの場から立ち去らないと、アリアナにバレていることがバレちゃうから。あれ? 日本語おかしい?


「あぁぁぁぁあ!」

 私はとりあえず叫ぶ。

「ど、どうしたのですか!? 大丈夫ですか!?」

 ルーク様は驚いてこちらに寄って来る。

 いい人ですね。

「お、お腹が……ぐぁぁぁあ!」

「ちょっ!」

 今で言う、胃潰瘍みたいなイメージで!

「あ、あぁぁぁぁぁあ!」

「お姉様!?」

「リーン様!?」

 二人はとても動揺している。

「ちょっ、ちょっと失礼……」

 私はそう言うと、ルーク様の部屋から出て行った。

「よし、これでスムーズに行けたはず!」


 そのまま、王城の下の広い庭にやって来た。

 うわ〜! 薔薇とか咲いてるじゃん! きれー!


 すると、「あら? 貴女は……」という、女の人の声がした。

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