第7話 お出かけ
「はぁ、だるい」
あまり昨日は寝れなかったからか、体の疲れが取れなかった。だが、あいにく剣術は今日お休みだからゆっくりできる。
「……ごろごろしてよ〜」
クッションを握り本を手に取る。
本を読もうとすると、アリサが飛び込んできた。
「お嬢様! もう、何をしているのですか!?」
「え? どうしたの?」
「クリストバル様がいらっしゃりながら、他の男性を侍らせるとは!」
アリサは額に手を置きため息をつく。
「ど、どうゆうことよ!?」
「玄関にいらして居ます」
「誰が……?」
「えっと、凄いイケメンです!」
「あ〜」
カムレアだな。……でも、なんで私の家に来たんだろう。
「じゃ、迎えに行ってくる〜!」
私が下に降りようとするとアリサが手を掴んだ。
「ちょ、待ってください! 男性に会うのですよ!? 少しぐらいは身だしなみを整えてください!」
「え? 別に大丈夫だよ〜」
「そんなことはないです! 自分の服装と髪型をよく見てみて下さいませ!」
私は目を下に向ける。
寝起きのボサボサの髪にしわくちゃのドレスを着ている。
「あ〜。確かにまずいかも……」
「はぁ、手伝いますから、早く終わらせてしまいましょう」
「ありがとう!」
アリサは水色でフリフリの丈が長いドレスを持ってきた。
「え〜。派手すぎない?」
いつも動きやすい服でしか会ってないから、ちょっと恥ずかしい……。
「大丈夫です、このくらいがいいのですよ!」
「え〜、まあ、そういうならそれで……」
私がそのドレスを着ると、アリサは濃い水色の大きいリボンを持ってきて私の腰に付けた。
「わぁ〜! このドレス綺麗だね……」
「そうでしょう! このドレスはキャスリーンお嬢様の服の中でも一二を争う上物です!」
私、始めてこんなに綺麗な服を着た。凄い……。
「ありがとう、アリサ! じゃあ行ってくるね!」
「待って下さい! まだです!」
「え〜、待たせたらカムレアに悪くない?」
「大丈夫です! 女性は準備に2時間かかるのが普通ですから! 男性方はお母様の影響などで、待つのは当たり前のようになっているはずです!」
「そ、そう?」
「はい! では、今日はハーフアップに結び目をリボンでいきます!」
アリサは片手に櫛、もう片手にリボンを持つ。
「ぷっ、プロだ……」
「当たり前です! 本当にプロですから!」
アリサは私の髪をいじりながら言う。
そういえばいつも、アリアナは出歩く時、毎回違う髪型をしていた。あれもメイドさんがやっているのか……。アリサ達、すごい。
「完了っ! 行ってきてください!」
「あっ、うん! ありがとう!」
私は駆け足で階段を降りて、応接室に行く。
「失礼します!」
扉を開けて部屋に入る。
すると、カムレアとアリアナが話していた。
どうやら、私が来るまでアリアナが対応していてくれたようだ。
「遅れてごめんカムレア、アリアナもありがとう!」
「っ! あ、リーン?」
「え、うん、そうだけど?」
カムレアは顔が赤くなっている。
「大丈夫? もしかして、また熱!? 大変じゃない! 待ってて、薬を持ってくるから!」
「!」
アリアナは何か察したようだ。
「待ってください! お姉様、カムレア様はたまに、顔が赤くなってしまうような病気にかかってしまっているのです! 熱ではございませんし、感染る可能性はありませんので、ご安心ください!」
「そ、そうなの? カムレア、大丈夫?」
今で言う、りんご病みたいなものかな?
「……あ、う、うん。そ、そうなんだよね、でも、痛かったりはしないから、全然大丈夫だよ」
「ならいいけど……」
「そうなのです。ただ熱くなるだけ。まあ、とりあえず私は部屋に戻ります。では」
アリアナは微笑み……どちらかと言うとニヤニヤ? しながら扉を開ける。
「アリアナ嬢。ありがとうございました」
カムレアは言う。
「ええ」
アリアナは笑顔でいい、出て行った。
「? ねえ、カムレア、何がありがとうなの?」
「え! 特に意味はないよ……?」
「そうなの?」
「うん」
「というか、今日は何しにわざわざウチに来てくれたの?」
「今日、騎士団の訓練は休みだから、何処か遊びに行こうかなと思って」
「ありがとう。行く〜!」
正直疲れてるけど、遊ぶのは好きだしまあいっか。
「うわぁ! 凄い〜!」
やってきたのはアーチェリーの試合の観戦場。
風が強い今日、砂が吹き荒れる中、試合の参加者、5人が続々と出てきた。
「私初めてきた!」
「そう? 結構、アーチェリーの試合観戦は人気あるんだけど、来たことなかったんだね」
「あ、いや〜……。あ〜ね……」
選手たちの紹介やら前置きがされる。
その後、全員が一列に並び、弓を構え出した。
うわぁ〜。一人一人でやるのかと思ったら、皆で一斉にやるんだ。
「初め!」
という声と共に、選手たちが右手を離す。
『シュッ!』という鋭い音とともに、サウンドバックにチョークで赤い印が付けられているような物に突き刺さる。
四回ぐらい弓を射たら、判定で勝者が決められた。
「凄い! 面白かったね!」
「リーン、お楽しみはこれからだよ」
カムレアは微笑む。
「どゆこと?」
「これから、ぼくたちも弓を射ることができるんだ」
「え! やってみたい!」
正直、生前(?)から中高の部活も剣道部だったし、小さい頃から空手も習っていたから弓道にも興味があった。まさか、こんな時にやるチャンスが回ってくるなんて!
見ていた子供も大人も一斉に前に出る。どうやら早い者勝ちのようだ。私達も急いで2個、アーチェリーを確保する。
「やり方わかる? 右手で強く引くんだ。そう、こうやって」
カムレアは熱心に、私にやり方を教えてくれた。けど、右手を握られて、少し、恥ずかしい。いや、正直、恋愛クソ雑魚の私からしたら、死ぬ程恥ずかしくて、心臓がやばかった。
「どう、できそう?」
「へ? ア、ウン、ソ、ソウデスネ……」
もう、湯気が出そう……
「だ、大丈夫?」
「ハイ。ゼンゼン、ダイジョウブデスガ?」
「うん? ……まあ、とりあえず、一回やってみよう。ぼくのを見てて」
カムレアはそう言うと、アーチェリーを右手で強く引き離した。
『シュッ!』綺麗にサウンドバックのようなやつの真ん中に刺さっている。
い、イケメンやぁ……。
アーチェリーを引く姿もめっちゃかっこよかったです。ありがたや。
大分遊んだから、もう辺りは太陽が沈む頃だった。
川辺を歩きながら帰る。
「どうしたの? 大丈夫?」
カムレアは私の顔を覗き込む。
「……ハイ、ホントニ、ダイジョウブナンデ……」
「本当に今日、なんか変だよ? もしかして、僕と遊びたくなかった?」
「そんなことないよ!」
「そ、そう?」
「うん、楽しかったし、誘ってくれて嬉しかった!」
「じゃあ、なんであんなにカチカチだったの?」
「あ、いや、それは……」
いつもみたいに、イケメンだったからって言えばいいいんだけど、いいんだけど!
な、なんだろう、それを言うのがとてもつなく恥ずかしい……。どうしたんだろう。やっぱり私っておかしくなっちゃったのかな!?
私は頬に手を当てる。
あつい……。
「……そ、それは、い……」
「い?」
「いっ……」
「?」
「い……いっ、犬が見たかったから!」
「……は?」
「いやぁ〜、犬! そう、たまに見たくなっちゃうよねぇ〜!」
「あ、犬? 犬が見たかったんだ……。じゃあ、近くに野良を保護してる施設があるからそこ見て帰る?」
「あ、うん! そ、そうしてくれると大変ありがたいと言いますか! とても助かるでございまする! ……なんでもない」
もう、このまま死ねる……!
きっと、私の顔は酷いことになっているだろう。
(リーン、顔真っ赤で目はぐるぐるしてるし、湯気も出てるし、本当に大丈夫なんだよね? 不安……)
うわぁぁぁあ……つらい。
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