第5話 第一皇子!

2日後 ガルシア家


 ……よし、

 剣の腕は、確実に上手くなってると思う。それに、もとから剣道をやっていたし、リーンも体作りはしてあったから上達も早い。うん。流石に達人とかまでは行かないけど、素人に教える程度なら1ヶ月後までに間に合いそう……! 



 一週間後 修練場


「おはようございます!」

 私は早く来て剣の素振りをしていた。


「おー、お前早いじゃないか」

 今、入ってきたラールド騎士団長が言う。

「はい! 最近、剣術が楽しくて!」

「そうか、それならよかった。ああ。そうだ、後で皆が集まった時にも話すが、まあ、先に言っておこう。なんと、第一皇子様……。つまり、皇太子様がうちに視察に来るそうだ」

「第一皇子様が!?」


 そうだ。乙女ゲームでは第二皇子のアーノルド・アークリーと第三皇子、エフレイン・アークリーが、攻略対象であり、それにカムレア・ミルトレイが加わって、三攻略対象と呼ばれていた。


 確かに今考えてみれば、第一皇子が出てこない……! 

 じゃあ、もしかして、朋美が言っていた最後のルートの隠しキャラというのは、第一皇子なのではないだろうか……! あり得なくはない。けど、確信を持っていえるわけでもない。

 とりあえず仮定とするけど、まあ、最後のルートの攻略対象ってことは、今までと同じぐらいか、それ以上のイケメンだろうから、顔を見ればわかる気がする……。


「そういえば、視察に来られるのはいつなんですか?」

「それが、まだ分かってないんだよな……」

 ラールド騎士団長は困ったように言う。

「じゃあ、とりあえずいつ来てもおかしくないと……?」

「そうだな、それと、本当なら女に剣術を習わせるのはいけないことなんだ」

「え……? そうなんですか?」


「ああ、女は家事を静かにやっていろと言う奴らが多いからな。俺はその考えにはあまり好かないから、お前を受け入れたが、あまり、そういうのを知られるのは良くない。皇子が来ると分かったら、その時は、隠れるか、サポートをしている女性のように振る舞ってくれ」

「なるほど、イザベラさんみたいなかんじですか」

「そうだな」

「はい。分かりました。わざわざありがとうございます」


 そうなんだ。やっぱり女の人はあまり、優遇はされていないんだな。________________________________________________________________


 数日後 修練場


「おはようございます!」

 私は修練場の門を開ける。いつも通りに早く来たはずだが、今日は私以外の全員がもう集まっていた。


「な、何事ですか?」

「ああ、リーン! おはよう。大変なんだよ! 今日、もう、30分後に来るんだって……」

 カムレアは言う。

「だっ、誰が……?」

 聞かなくてもわかっていたが、驚いたからか聞いたしまった。

「第一皇子様が」

「うわぁぁぁあ! やばいじゃないですか!?」

「そうなんだよ!」

「なんでこんなに唐突にくるんだよ!?」

 騎士たちはぶつぶつと文句を言っている。

「文句なんて言う暇があったら手を動かせ! もう時間がないぞ!」

 ラールド騎士団長は、皇子様を迎え入れる準備をしている。

「はい!」

「あ、私も手伝います!」



 30分後


「はぁ、はぁ、はぁ、……なっ、なんとか間に合ったね」

 疲れすぎて息が上がっている。苦しい。

「そ、そうだね……」

 カムレアは芝生に横になる。

「でもこれで肺活量を鍛えられた!」

 私はガッツポーズをする。

「ぷ、プラス思考だね……」


「あはは、でもさ、私たちは皇子様に会えないんだね。私は絶対に無理だけど、カムレアもだめなんだ」

「そうだね、ぼくはまだ見習いの身だからかな?」

「そうなんだ……。でも、皇子様って、めっちゃ会ってみたい!!」

「うん、その気持ちはすごいわかる」

「だよね!? まあ、しょうがないか……。私たちはこんなに奥の使ってなかった中庭に追いやられたんだから、静かに練習でもしよっか」

「そうだね」

 私たちは剣を取り準備をした。


「ん? なんか庭の方、騒がしくない?」

 私は剣を振りながら言う。

「もう皇子様が来たんじゃない?」

「あー、そっか、くそぅ、会いたかったなぁ」

「そうだね……。って、なんか、足音しない?」

「うん。あれ? ……なんかこっちに向かってきてない!?」

「まずいじゃん! リーン、隠れられるところある?」

「こんなクソ広い中庭の中で!? ない!」

「どうしよう!」

「ま、まあ、団長かもしれないし……」

「そ、そうだね。それに賭けよう」

 すると、建物の中から中庭に人物が出てきた。


 シルエット的に考えて、私たちと同じぐらいの歳の子供のようだ。

「! やばい!あれ絶対皇子だよ! リーン、後ろに!」

 私は言われた通りに少し、後ろに下がる。


「おや、こんなところに、誰がいるかと思ったら……リーン様ではないですか」


「ん……? 」

 この聞いたことある声は……。

 すると、その中庭には、金髪碧眼の美青年で私の婚約者である、ルーク様がいた。

「ルーク様!? なにをされているのですか!?」

「あれ、君は聞かされていなかったのですか? 今日は僕、ルーク・アークリーが視察に来ると」

 クリストバルは微笑む。相変わらずのイケメンである。ありがとうございます。


 なっ、アークリー? アークリーって、あの、王族の苗字の……?

 攻略対象の第二皇子のアーノルド・アークリーや第三皇子、エフレイン・アークリーと、兄弟ってこと……?それでいて、今日来るのは第一皇子。つまりルーク様は、この国の皇太子!? 嘘……だろ? まさかの私の婚約者が、将来の王様ってこと!?

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