第4話 騎士団!

* * * * * * * * * * * * * * *


「お願いします! 私に、剣術を教えて下さい!」

私は直角にお辞儀する。初めてかもしれない。こんな直角にお辞儀をしたのは……。なにせ、身バレがかかっているのだ。


「う〜ん、でもなぁ……」

騎士団長らしき髭を生やしためっちゃ強そうな人は、顎の髭を撫でながら言う。


「……ダメならば、土下座をするのみ……」

私は覚悟し、膝を砂利と土の地面につける。


「お、おい、やめろよ嬢ちゃん。一応アンタ、貴族だろ……?」

見ていた騎士の一人が言う。

どうやら着ている服から貴族だと分かったようだ。

「はい。貴族ですが、そんなことは今どうでも良いのです!」

「よくねぇよ!」

騎士の一人がツッコミをいれる。

すると、騎士団長(?)が突然、笑い出した。


「?」

私と騎士たちはなぜ、騎士団長(?)が笑っているのか分からずキョトンとする。


「お前、面白いなぁ。貴族なのに俺たちなんかに土下座しようとするやつなんて、初めて見たぜ!」


「は、はぁ……」

少し自分のやっていたことが恥ずかしくなったからか顔が赤くなるのをかんじた。


「よし、いいだろう。お前も今日から練習に加わるといい! お前、名前は?」

「は、はい! ありがとうございます! 私はキャスリーン・ガルシアでございます!」

「リーンだな、うん、いい名前だ!」

「はい〜!」


なんか、受け入れられた感じがして、すごい感動した。私も明日から騎士団の仲間入りらしい。

でもさ、……仲間入りしちゃ、まずくね? まだ子供だし、女だし、私、本格的に戦う気ないんだけど……。

と、少し、そう思ってしまった。




次の日 城下町 修練場


「おはようございまぁ〜す!」

私は勢いよく修練場の門を開く。


もうそこには、騎士団長(?)と数名が練習の準備をしていた。その中にはカムレアもいる。


「お〜、来たかリーン」

騎士団長(?)は剣を磨きながら笑顔で言う。

「はい!」

「そうだ、リーンお前、自分用の剣は持っているのか?」

「えっと、持ってないですね……」

流石に、持っていましたが折りました! なんて言えない……。


「はい、じゃあぼくのを使っていいよ」

カムレアは自分の剣を磨きながらもう一つの剣を差し出した。その剣は細い剣身に銀色の綺麗な装飾が持ち手が付いている。

「え、これ、いいの?」

なんか凄い高そうだけど……。

「うん、最近新しいの買ったから、捨てようと思ってたの。ちょうどいいからあげるよ」

カムレアは笑顔で言う。

「たしかに女の子はこういう軽い細剣の方が持ちやすいしな、うむ。リーン、これを使うといいぞ!」

騎士団長(?)は言う。


「ありがとうございます!」


細剣って言っても剣は剣だし重そうだな……。

そう思いながら私は剣を受け取る。

!? 軽い!

そっか! もともとリーンは剣術をやってきてたから、剣は手に慣れているのだろうか。リーンはいっぱい鍛えていたんだね。


「そういえば、自己紹介がまだだったな。俺はラールド。この騎士団の団長だ」

「はい、ラールド団長! よろしくお願いします!」

「そういえば、リーンは剣術未経験なの?」

「う、うん」


一応、中高は剣道部で都大会でベスト8には入っていたけど流石に、実戦だから剣道なんて関係ないよね。


「お前たち、 練習を始めるぞ! さ、今日から仲間になる少女を紹介する。キャスリーン・ガルシアだ!」

「よ、よろしくお願いします」


私は14人の騎士たちとカムレアの前に出てお辞儀をする。

「よろしくー!」

「可愛いよ〜!」


騎士たちは喝采を浴びせる。たしかにリーンは可愛いよね。


「あの! あんまりリーンを困らせないでください!」


カムレアは立ち上がって言う。


「なんだ、カムレア? お前、こういう子がタイプなのか!?」

「聞いたか!? あの奥手なカムレアが名前で呼んでるぜ!?」

「ヒュー!」

「な、なな、何を言っているのですか!」

カムレアの顔を見るチラ見すると真っ赤になっている。

「あ、いや、リーン、これは、違うのです……」


 うーん、これは……イケメンの照れ顔ほど神なものはない。天に召されてしまいそうだ……。


「リーン?」

「あ、いえ、なんでもないよ、イケメンすぎて死にそうだなと思っただけ」

私は真顔で言う。


「!?」

騎士たち全員が凍りつく。カムレアは『ボッ!』という音とともに、もっと赤面した。

「あ、あとは、若い衆に任せようかね……」

騎士たちはどこかに行ってしまった。


若い衆って言い回し、なんかヤ○ザみたいでカッコいい! って!! 騎士さんたち待って! まだ剣術教えてもらってないんだけど〜!


「あ、あの、い、イケメンって……ぼ、ぼくのことなの!?」

「うん、当たり前じゃん。それ以外に誰がいるの?」

私は即答する。


「は、はい〜……」

「ちょっと、大丈夫?! 耳まで真っ赤じゃない!」

「……へ?」

「熱じゃないかな……医務室で氷と布を持ってくるね、少し待ってて!」

「あ、いや、ち、違くて……!」

「え、違うの? じゃあなんでこんなに顔が熱くなってるの?」

「……なんでもなかったです」

「そう? じゃあ取ってくるね」


リーンが建物に入って行った時に、一斉に騎士の仲間たちが出てきた。

「おい! お前、リーンちゃんのこと好きなのか!?」

「これ、いけるぞ!」

「頑張れ!」

と口々に言う。


「え、えっと、あ、あの……」

ぼくは言う。自分でもまだ顔の温度が高いのがわかる。




「えっと、医務室医務室っと、ここだよね」

私は昨日、カムレアに教えてもらった医務室の扉を開く。

すると、椅子に黒く長い綺麗な髪を持つ、綺麗な女の人が中世風のドレスを着て座っていた。

うわ〜、綺麗な服だけど動きにくそ〜……。


「あら、こんにちは。貴女は……?」

「あっ、勝手に入ってごめんなさい!」

「うふふ、いいのよ」

「あ、ありがとうございます。私はキャスリーン・ガルシアです」

「ガルシア……ああ!あの、皇子様の!」


皇子様の?


「あ、あの、おうじさまって……」

「そうなの! リーンちゃんね、よろしく」

女の人は微笑む。

「あら、ごめんなさい。今何かおっしゃったかしら?」

「いや、なんでも、ない、です」

「そう?ならいいけれど……

わたくしの名前はイザベラ・ミルトレイ。よろしくね」

ミルトレイって……。


「! ミルトレイって、カムレアのお姉様ですか!?」

「ふふふ、カムレアはわたくしの息子よ」

「お、お母様でしたか……。すみません、とてもお若いので……」

「そうかしら? ありがとう」

「はい!」

「あら、そういえばなぜ医務室に来たのかしら?」

「あ! そうなんです! カムレアが熱を出しちゃって、氷と布を持ってこようと!」


(カムレアが風邪? 今朝は元気だったのに……)

「分かったわ。ありがとう、準備できたら行くから、先に戻って待っていてくれるかしら」

「あ、はい! すみません! ありがとうございます!」


私は部屋から出ようと扉を開けた。

すると、ちょうどカムレアが扉の前にいた。


「うわ!」

「ぎゃぁぁあ!」


「ちょっと、二人とも大丈夫?」

奥からイザベラさんの声がする。

「はっ、はい。ごめんね、カムレア」

「うん、ぼくこそごめん」


「どうしたの? カムレア」

イザベラさんは聞く。

「母さん、ぼく、熱は……えと、引いたから! 氷とかはもう必要ないよ!」

「そ、そう。分かったわ?」

「行こ、リーン」

「う、うん。あ、イザベラさん、ありがとうございました! また今度伺います!」

「ええ、こちらこそ〜」


カムレアは医務室の扉を閉じる。

「いやぁ〜、イザベラさん、めっちゃ綺麗だね〜」

「そうかな? 親だから特になんとも思ってなかった」


まあ、息子もこれほどイケメンなら母親もああなるよね。


「優しそうな、いいお母さんだね!」

「……そう?」

「? うん」

「……そっか」

「あ! もうみんな練習始めてるじゃん!」

廊下の窓から外の景色を見ると、皆は素振りをしていた。

「うわ、棍棒持ってる……。重そ〜!」

「そうだね……でも頑張ろう!」

「うん!」

私たちは、廊下を走った。

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