第五話 再開
修太と別れて、五年がたったある日、突然、電話が鳴った。私はその電話番号を見ると、知らない番号だった。私は、知らない番号には基本出ないタイプなのだが、なぜか、この番号だけは、出なくてはいけないと思った。そして、恐る恐るその番号に出て、
「もしもし」といった。すると、
「あ、もしもし、久しぶり、覚えてるかな」と、返ってきた。私は、妙にその声に安心を覚えた。しかし、一向に誰からの電話なのかと思い、
「どちら様ですか?」と、聞いた。相手は、突然笑いながら、
「ははは、何かの冗談かよ、俺だよ俺」と、私はまだ若いし、子供だっていない、なのにオレオレ詐欺かと、相手を電話越しながら、軽視した。しばらく沈黙が続き、
「おいおい、まじかよ、忘れたのか、修太だよ」と、言ってきた。なんと、電話の相手は修太だったのだ。声色が驚くほど変わっており、気づかなかった。この五年間で何があったんだってレベルだ。そして、私はそれと同時に期待もあった。成功するまで、連絡は取らないということを覚えていた私は、いい報告に違いない、ということに。そこで、私は、あえて、知らないふりをして、
「いきなりどうしたんだよ。私が恋しくなったのか?」と、笑いながら、修太に言った。
「いやいや、別にお目のことなんか恋しくならねぇから安心しろ。久しぶりに話したくてな」と、言った。話したくなるってことは恋しくなってるんじゃないのか?とも思ったが、ここでそんな突っ込みをしたら、話の本筋がずれてしまうと思い、私は、
「ふーん、それで、話の内容はなんだ。建前はいいから要件を言って、そこから話題膨らませようよ」と、話の核心を言うように仕向けた。
「あぁ、そうだな。いきなり言うのもどうかと思ったけど、お前相手にそういうのはいらないよな」と、修太は言った後、一拍置いて、
「俺起業したんだけどよ。その事業がうまくは行ってはいるんだけどよ、どうにも俺だけの力じゃ、そこから上り詰めることは厳しいと思うんだよ」と、起業して、上手く行っている。という、内容を聞けただけで私は満足していたが、
「んでだ、そこからどう上にまで行くかを吟味した結果、お前の力が必要だと読んだ」と、意味の分からないことを言ってきた。
「私が、修太の力になる?逆の立場だったら、修太にとっては役不足かもしれないが、今の立場でそれを言うなら、役立たずになるよ。例えるなら、医学部が文学部に助けを乞うみたいな感じだろ」と、言った。というより、今、修太はどんな事業をしているのかわからないが、多分、私にとって、難しいことをしているに違いない。そこに私が入ったら、多分上手く行くのもいかないだろう。それよりも、虎視眈々と、チャンスが来たら、殴りこむみたいな感じやったほうが上手く行くだろう。そんなことを考えていたら、
「いや、お前の力も必要なのもそうだが、お前、あの時の約束忘れたのか?」と、言ってきた。約束?内容は覚えていないため、私は黙るしかなかった。
「お前きっと大学生活楽しんだんだろうな。まぁいいや。俺はお前に言ったんだぞ。俺が、起業に成功したら、お前をまず第一に社員に入れる。そして、俺と一緒にトップをとるってな」と、昔を彷彿とさせる口調で修太は言ってきた。私はその言葉聞き、あの時のことを思い出した。そして、私と修太は、近いうちに再開することを約束した。
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