十七話:いつか想いが届きますように
昔昔、あるところに沢山の子供達に虐げられる少女がいました。
その少女はとても美しい顔を持つあまりに同性の子供達から妬まれ憎まれていました。
結果、心は病み--自殺を考える様になりました。
然し、そんなある日--病んだ少女の元に1人の少年が現れました。
その少年の名前は--『■■』。初めて、少女に優しく接してくれた存在でした。
やがて、少年と接していく内に少女の中に恋心が芽生えました。
だけど--神様は少女に希望を与えませんでした。
現実というのは大人子供関係なしに平等に牙を剥いてくる。絶望という致死毒を心身に注ぎ込んでくる。
そして少女にとっての
こうして少女は再び、殻に閉じこもった。
それから月日が経ち、少女の前にまた違う少年が現れました。
その少年こそが『神谷幹人』。
少女『桃市夏葉』の運命の王子様だった。
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「・・・んぅ」
薬品の匂いがして目を覚ます。どうやら夏葉は意識を失ってたみたい。
「・・・!み、幹人は!?」
上体を勢いよく起こして大きな声を出す。確か夏葉の記憶では最後に幹人が抱きとめてくれていたはず。お礼を言わなきゃとベッドから降りようとして、
「すぅ・・・すぅ」
寝ている幹人を見つけた。子供のように穏やかに気持ちよさそうに眠っている。
「・・・かわいい」
思わず言葉が漏れる。それくらいに今の幹人は可愛かった。いつもはかっこいい王子様なのに、今は胸が締め付けられるほどに尊くて可愛い天使にしか見えない。きっと今ならキスをしても起きないかな。でも、どうせなら自分からじゃなく幹人から愛情沢山のキスが欲しい。だから今は--
「大好きだよ、幹人」
告白とおでこへのキスで我慢する。それを最後に夏葉は幹人を起こさないように保健室を後にしようとして、そのタイミングで--
「あれ? もうヘーキなのか?夏葉」
眠りから覚めたらしい幹人の声が聞こえた。きっとあの発言は聞かれてないはず。
「う、うん!このとおーり元気元気!!」
幹人を安心させるように、夏葉は元気アピールをしてみせる。
「ん。なら良かった。今後は倒れないように気をつけろよ」
爽やかな王子様スマイルで幹人は夏葉に優しく注意する。
「さて、そろそろ教室戻るか」
「う、うん!」
幹人は席を立つと、夏葉と共に保健室を出る。そのタイミングで一限目の終了を報せるチャイムが鳴り響いた。確か一限目は数学だった気がする。夏葉的には理解不能な暗号だらけの科目なので受けなくて良かったと思う。それにあんな科目より幹人といられる時間の方が何よりも大切だもん。
「あ〜、一限終わっちまったかぁ。蓮太郎にノート写させてくれるよう連絡しとこ」
不意に聞こえた名前。アイツは夏葉の知らない間に連絡先を幹人と交換していたんだ…。へぇー、そうなんだ。でも、夏葉と約束したもんね。もう二度と幹人に近づかな---
「よし!ノートまじサンキュー!っと」
は?どういうこと?意味が分からない。アイツは--夏葉を騙した。欺いた。もう許さない。
烏杜蓮太郎・・・アイツだけは・・・絶対に。
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