鑑定~全員が思い通りになると思うなよ~
鑑定は別の部屋にて鑑定石なるものを使って行うとのことで移動することになった。
移動の合間にいい加減名前くらいわかっていないと会話もしづらいので自己紹介をした。
チャラ男こと
スーツの女性は
四人の並び順で自己紹介を始めていったのだが順番的に次は学生君なのだけれど学生君はもじもじするだけで一向に名乗ろうとしない。訝しんだ他二人の視線が学生君に固定され学生君はさらに切り出しにくい雰囲気になってしまった。このままいっても埒が明きそうにないので助け舟を出すことにした。
「僕は
自身の自己紹介を混ぜつつ、学生君へと話の切り口を渡す。ここまで話を振ればさすがに話せるだろうと。
「おぉ~、杉田殿もそういうのもいける口で?それはよかった、拙者…ぅん、我も少なからずそちらの方向には造詣が深いものがありましてな」
うざい。今自己紹介の時間だから俺にだけ絡んでくるな。他の二人にも話が通るようにしろよ。
「あ~うん。そうなんだ、なんたって縦にも横にも広い趣味だからね趣味の嗜好が合うあわないがあると思うけども、まぁとりあえず君の名前は?」
「失敬あいやこれは失敬。我としたことが同好の士の発見に心浮かれていたようだ。うぅうん…われの名は綱吉、
余計なオバーリアクションに視線を俺から一切ずらさずビシっとポーズを決めて名乗りを上げる綱吉。
レオもいまいち距離感を掴みかねているようだし、北条さんに至っては鼻を鳴らしている。あまり積極的にかかわりたくはなさそうだ。
気持ちは分かるんだけどね、俺もかかわらなくて済むならその方がいい。いくら趣味が似通っているとしても性格や行動に難があるならお近づきになりたくないものだろう。ただ最初に助け舟をだしたのが効いたのかさっきから俺の方ばかり気にしているようだし、こいつが言っていたようにこれからこの四人でパーティを組んで旅をするっていうのなら俺がこの先もかかわっていくのは避けられそうにない。
※※※
「何故だ……ぬぅわぜだぁあああああああああ!!!」
ただでさえうるさかった綱吉がさらにうるさくがなりたてている。
理由は分かり切っているんだけどね。
鑑定結果がでた。
それが気にくわない。
QED.
いや、証明はしていないか。
「なぜ、なぜ我がこんなどこにでもありふれていそうなスキルなのでありますかあああああ!!」
大道寺綱吉
職業 戦士
スキル 守る
以上。
きっと彼自身は固有スキルだの、ニッチかつピーキーなスキルを物語の主人公さながらに格好良く使いたかったのだろう。
しかし現実はこうだ。職業戦士、スキル守る。これ以上堅実なスキルもないだろう。いらないといわれるほどのカススキルでもなく、逆に絶対に必要かといわれると微妙な顔をされる。いやゲームによってはこういうスキルが必須の物もあるんだけどね特に難易度高いものに顕著だ、タゲ集中により防御がおろそかになりがちなアタッカーを守るというはとても重要なのである。
「そう腐らずにさ。元気出しなよ大道寺君。誰かを守るってすごいスキルだと思うよ」
「レオ殿は、そんあスキルをもっているからそんなことをいえるのである。勝者の余裕でつ。なんかもうリアルネームからして主人公っぽいし」
財前怜王
職業 勇者
スキル 聖剣使い
王道である。まさに主人公。普通の物語で聖剣なんてレアもの使えるのなんてそれこそ主人公やそのライバル、でなければラスボス。最低でもボスクラスのやつらばかりだ。今回の状況で言えばまず間違いなくこの四人パーティでの主人公、リーダー格はレオといえるだろう。
俺も大道寺君の守るが必要になるだろうしさ、なんてレオは励まそうとしているが
「それはないでござる。火力特化パのタゲ要員として僕みたいなのは採用される可能性はなくもないでござるが、レオ殿のような強万能スキルのパーティであれば結局拙者のようなスキルは不要、それならばバフ要員やデバフ要員のほうがまだ重宝されるでござる。」
もはや口調でキャラ付のできない男、大道寺綱吉。
とゆうか、説明が専門用語過ぎてレオ君意味理解してないからね。彼、結局空気を読んで空気を読まない発言をできる人だったからね。分からなくても友好をとっておいた方が良いと判断してる今は困った顔しながら対応してるけど、ほんとにいい人だからあんま悩ませないであげて。てか、それが実行できるってまじで主人公っぽいな、なかなかできることじゃないよな。
北条菖蒲
職業 魔術使い
スキル 魔術合成
「結局のところ、大道寺君のはすぐに使えるものなんでしょ?よかったじゃない。私なんて何、魔術合成ってそもそも私魔術なんて使えないんですけど。」
就職してからさらに勉強?てか仕事の勉強ならまだともかく魔術って厨二か、誰に言うわけでもなくそう漏らす彼女は魔法使いだ。
一応ここの人に説明をしてもらった。するとこの世界では魔術というのは割と普及しているものらしい。割と、そもそも使える人が限られているらしく、どうあがいても生まれた時から使えない人は使えない。その魔術を使えるという者ももういつだかわからなくなった太古に誰かが作った魔術を使える人のことを指すそうで。いつしか魔術師というは人族の間ではその古い魔術書の魔術を操れるものを指す言葉になり新しい魔術の作成をと考える物自体居なくなっていったのだと。
また、この魔術というのとスキルというものは全くの別物だそうだ。
魔術は魔力を持っている者ならば誰でも使えるようになる。それに対してスキルは生まれつき持つ先天的なものや経験により後から獲得する後天的なものその二つに分けられるが結局のところ特定のスキルを得られるかは本人の資質によるところが大きい。例えば同じ経験をしても同じスキルを得られるかは分からないという。
この世界で人族の貴族は魔力をもっているのが当たり前で階級が下級から上級に分けられているのも魔力の強さに依存してしている。平民は魔力を持っていないそうだ。つまり、貴族は魔術を行使できることがごくごく当たり前の嗜みであり、平民はどれだけ巧みにスキルを操ろうと貴族に成り上がることはないそうだ。
「そう!そうだよな!北条さんはまず魔術を覚えるところだもんな。大道寺くんはすげーよ、だって即戦力だぜ?おれなんて聖剣使いなんて言ってもそもそもその聖剣がねーんだもんよ。」
なんかレオがだんだんけなげに見えてきた。見た目に反していいやつすぎだろ。ごめん、第一印象チャラ男とか言っててごめん。
そんでもって聖剣ありません。
聖剣。それは精霊が加護を与えた武具だの、神が鍛造した剣だの、神をその身に降ろした鍛冶師が作成した劔だの、いろーんな伝承が各地に残っている伝説の武器。
聖剣。その力はとても強大です。あるところでは空間を切り裂き、あるところでは所有者は天を駆けまわり、あるところでは所有者や仲間の傷を癒します。
聖剣。それは伝承、おとぎ話です。
「それにほら、憩もすぐに使えるんだろ?やっぱこの世界についてはじめから知ってるってのが関係してんのかな。すげーよまじでまじで。」
「で…で、ござるよな!!拙者…あいや我と憩殿はソウルメイト。お互いの能力も噛み合ってござるし我ら二人のタッグは誰にも破れないでござる。」
勝手にソウルメイトにされとる。
いやまぁあのまま腐られてるよりはましか。
杉田憩
職業 回復術師
スキル 回復・治療魔術
先の説明にも例外というものはあるんだと。スキルとしての魔術の発現。これはスキルなのに魔力を必要とするスキルとしての例外。当然魔力を持っていなければ何の意味も持たないただの糞である。まれに平民にもこのような魔力を要求するスキルを持って生まれるものがいるのだそうだけれど当然なんの意味もない。もちろん、貴族でも持って生まれることがある。こちらの場合はこのスキルが使えないなんてことはないが成長に伴って一般教養として魔術を教えられ使えるようになるのにわざわざスキルで発現する意味がない。生まれつき使えるのでそのスキル系統の魔術の熟練度は高くなる傾向にはあるそうではあるのだがやっぱり微妙な顔をされる糞であることは変わらないらしい。
そして今回は運が良いことに転移者四人ともが魔力持ちだったらしく、一応全員が魔術を使えるようにはなるらしい。
「最初っから糞々連呼された僕の身にもなれ…。最初っから使えるってのは現状においてアドバンテージだけどな。」
とりあえずは出落ちでいらない子認定されなくてよかったのかな。長い目で見たらいらない子になりそうだけどね。だって絶対これって北条さんの下位互換じゃん。北条さんが回復魔術覚え始めたら絶対いらなくなるやつやんこれ。
あれ待てよ。RPGのお約束にならって考えれば最初の戦いが比較的楽なときに頑張っておいてあとあと周りから戦力外通知を宣告されれば俺は後ろ指刺されることもなく穏便に危険な旅から抜けられるんじゃ…
よし、張り切って頑張ろう。
「我が守り、憩殿が傷を負った我を癒す。完璧だ。」
いやにデブの信頼度が高くなっているのが気になるが。
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