2021/08/16 最近公開した短編の話

 ノベルアップ+だけで公開していた短編をカクヨムにも持ってきました。

 どれも、元はノベプラでやっていた自主企画や公式イベント用に書いたものです。せっかくなので、こちらでもと思って持ってきました。


◇◇◇


演劇系VTuber梅乃雨(うめの・あめ)の話

https://kakuyomu.jp/works/16816700426200963128


 こちらは、『ちとコン!』という個人主催の企画に参加するために書いたお話です。

 カクヨムではないのですが、リンクを。


部門別小説コンテスト「ちとコン!」

https://novelup.plus/story/626169059


 三題噺をお題発表から24時間で書く、というなかなか勢いのある部門でした。出されたお題は「VTuber」「梅雨」「煙草」で、自分では選ばないだろうお題が並んだ感じでしたが、なんとかかんとか形になったなと思います。

 そもそもVTuberに疎いし、煙草は吸わないし、本当に慣れない食材をさばいた気分です。慣れない食材をさばいても、結局のところいつもの自分の料理しか作れないなあ、とか思ったりしました。


 様々な方に読んでいただけて、たくさん嬉しいお言葉もいただけました。『ちとコン!』がきっかけで生まれた繋がりもあったりして、本当に楽しかったです。


 残念ながら賞には絡むことはできませんでしたが、三題噺部門の審査委員長である夜見ベルノさんの感想ツイートで、「最終候補に残った1作」というお言葉もあったので、なんだか勝手に報われた気持ちになってました。


https://twitter.com/velno_yomi/status/1416433401179951107


 わたし自身、学生の時に創作活動をしていたけど一度やめてるんですよね。また小説書こうと思いついて書き始めるまで、ちょっと長い時間が空いてます。そんなことを考えながら書いてました。

 そういう意味では、KAC2021の時に書いた短編と、近いところがあるかもしれません。


本を作るのが好きだったわたしの物語

https://kakuyomu.jp/works/16816452219197530670


◇◇◇


秘密基地の隊長になった夜

https://kakuyomu.jp/works/16816700426256292613


 ノベルアップ+でやっていた『夏の5題小説マラソン』という、お題に沿った小説を期間内に投稿するというイベント用に書いた短編です。

 このときのお題は「秘密基地」でした。


 ノベプラのこのイベントでは、お題発表が早かったんですよね。イベントスタートよりも前に、五つのお題が全部発表されていて、準備期間がとれたのは嬉しいけど、短い時間の中で書き上げる必要があったKAC2021やちとコン!三題噺と、はたしてどっちの方がやりやすいのだろうか、と考えたりしました。

 期間が短ければ、勢いで「えいやっ」と公開できてしまいますが、なまじ期間があると……こう「もっと書けるのでは」みたいな気持ちになったりしますよね。


 さて、この『秘密基地の隊長になった夜』は、KAC2021でもかなりお世話になった知人との会話で生まれました。いつもの感じです。

 知人に泣きついてあれこれ話している間に「秘密基地が増殖して日本を埋め尽くそうとする」「横浜駅SFじゃん」「それと戦うんだよ」みたいな会話があり、そうか、秘密基地と戦う秘密基地というのは秘密基地っぽくて良いな、と思い付いたものでした。

 もうちょっといろいろな設定を考えてはいたのですが、文字数の関係でばっさりと削った結果が、あんな感じです。

 子供の頃って、なんでもできちゃいそうな無敵感と、自分は何もできないっていう無力感が当たり前のように同居してるなあ、みたいに思ったりします。


 今日もどこかで、あの秘密基地はこっそりと暴走した秘密基地を止めようとしているのです。


◇◇◇


あの夏、サイトウは花火になった。

https://kakuyomu.jp/works/16816700426297732711


 こちらのお題は「打ち上げ花火」でした。知人に泣きついたときの反応は「下から見るか?」でした。そうなっちゃうよねえ……。

 それでも、知人とぐだぐだお喋りしてるうちに「ゾンビものみたいなパニックホラーで、死んだときにゾンビになる代わりに打ち上げ花火になる」という案が出てきました。それを聞いて、ふと「人が死んで打ち上げ花火になるってエモくない?」と思ったのがきっかけです。

 そこから「人が死んで打ち上げ花火になる」世界を考えているうちに、死に惹かれるような思春期の不安定さと打ち上げ花火を綺麗だと思う感覚が結びついて、書けそうな気がしたという感じです。

 多分ですが『リバーズ・エッジ』辺りに影響を受けてそうな気がします。


 水死体の写真が回ってくるシーンは、その世界では確かにグロいものだけど、わたしたちの世界ではただの破れた打ち上げ花火でしかない、という部分のズレを使って、かなり踏み込んで書けたなあという気がしています。

 現実ではあり得ない設定なのですが、それでも現実と重ね合わせて、そのズレによって浮き出てくる感情の部分を拾って読んでいただけて、嬉しかったです。


◇◇◇


浜辺で拾った

https://kakuyomu.jp/works/16816700426395714625


 お題が「浜辺の漂流物」で、多分お題五つの中で一番の難産だったんじゃないかなと思います。本当になかなか思い付かなかったんですが、これも書けたのは例の知人のおかげです。わたしはきっと、この知人に何か報いるべきですね。

 知人が浜辺に流れ着くゴミでアート作品を作っている人がいる、という話をしてくれて「流れ着いたもので体を作ってあげるってロマンティックだよね」と言いました。

 わたしはそれを聞いた瞬間、怪談ぽいなと思ってしまいました。だって、流れ着いたもので体を作って、体ができたらどうなっちゃうの? それやばいやつじゃない? って思ってしまったんですよね。

 知人が見せてくれたアート作品は、クジラなどだったので、どうやらそういったものを想像していたようなのですが(そして、確かに元がゴミとは思えない綺麗な姿でした)、わたしにはもう無理矢理ゴミを繋ぎ合わせて歪んだ人の姿になったものが歩いてくる姿しか想像できなくなっていて、「これはホラーだ!」ってなったのでした。

 人外にも人外のことわりがあって、どこかユーモラスなところがあって、話が通じるようで、でもやっぱり人外、という辺りを目指して書きました。民話とか昔話に出てくる怪異ってそういうところあるな、と。『百鬼夜行抄』みたいなイメージです。

 あと、祖母が外から何か拾ってくるのを嫌がる人で、わたしが外で何か拾ってくると「よくないものも一緒に拾ってくることになる」って怒られたことなんかも思い出しました。

 書いて読み返しているうちに自分では怖いのかなんなのかわからなくなっていたんですが、たくさん「怖い」と言っていただけたので、自分で思ってるよりは怖いみたいです。ちゃんと怖くなっていてほっとしました。


◇◇◇


おうち用本格アイスコーヒーセット

https://kakuyomu.jp/works/16816700426401675250


 アイスコーヒーも最初は思い付かなかったんですが、これはジャンルから考えました。「恋愛」で書こう、と。

 メモには「アイスコーヒーを抽出する様を書く、暗喩でいちゃいちゃ」と残っていますが、以前KAC2021で書いた「おうち時間」の短編を思い出して、あんな感じで、と考えていた気がします。


おうち時間キット

https://kakuyomu.jp/works/16816452219003806449


 今回のアイスコーヒーでは、おうち時間キットほど暗喩にはなりませんでした。暗喩というよりかは「その直前まで」という感じになったけど、まあこれはこれでありかなあとも思いました。

 そして、その分だと思うんですが、わりかし直接的に甘くなりましたね。無糖なのに甘いっていっぱい言っていただけて嬉しかったです。ちゃんと甘くなってた!


 この辺り、アイスコーヒーを淹れる様子がメインになっちゃった分、暗喩にする余裕がなくなった感じです。アイスコーヒーを淹れる様子をちょっとした冒険のようにダイナミックに書けたのは楽しかったですけど。

 ノリが『ボドゲ部(仮)カッコカリ』そのまんまだなあとは自分でも思いました。これがあの二人(大学生くらいになってる?)だとすると、彼女の方は症状が悪化してそうな気がして心配になりますね。まあ、幸せそうだし良いのか。

 いや、そういった意図はなくて、マラソンも折り返して、だいぶ手癖で書いてる感が出ちゃったせいです。


◇◇◇


夏休みの宇宙人と観察対象のわたし

https://kakuyomu.jp/works/16816700426451376124


 マラソンもいよいよ最後。お題は「宿題」です。

 設定から文章から何から何まで手癖、というか既視感が半端ない。この、語り手の女の子のぼんやりと流されてほだされちゃう感じとか、男の子の地味なんだけど喋り始めたら饒舌で自分のフィールドに引き摺り込む感じとか、なんかこう、この人たち他の作品でもいなかったですか。


 最初は、ボドゲ部(仮)カッコカリの二人に宿題が登場するボドゲでも遊んでもらおうかな、などと考えていたんですが、五千文字に収まらなさそうな気がして考え直しました。

 ジャンルは「青春」で書こうって決めてました。打ち上げ花火の「思春期」より少し年齢は上で、高校生。まだ「恋愛」になる手前くらいの感じ、と自分の脳内を辿っていって出てきたのが「宇宙人」でした。


 宇宙人を登場させるの二度目だなあ、なんて思ったりもしたんですが、それは多分『あたしのエイリアン』という少女小説シリーズの影響がとても大きい気がします。それと今回に関しては、『20世紀ノスタルジア』という映画。

 この映画、実は見たことないのです。設定を見て、あまりに好みの設定だったのですが、見るタイミングを失ったまま、いまだに見ていません。逆に途中からは、見てしまって思ってたのと違ったらどうしようと思って、見れなくなってしまいました。

 見てない映画に影響を受けるとは……(今度思い切って、なんらかの方法で見ようと思います)。


 今回の宇宙人に関しては、本物なのかどうかは曖昧に書いてます。この先、どのルートもあるように。宇宙人からしたら、実際がどうであろうと、この先死ぬまで一緒にいるなら、どれも変わらないよね、という感じかなと思います。

 自分が書くと、すぐこういうことしちゃう。決定的なところは書かずにおきがち。書かなくても伝わるかなって思うと書くのやめちゃう。


 実際、本物だったとして、それによってどたばたが巻き起こっても楽しいだろうし、本気で自分を宇宙人だと思い込んでいる場合も十年後くらいに彼女に「高校の時はああ言ってたよね」なんてからかわれても趣ある感じするし、二人の間では「宇宙人」てことにして二人だけで通じる会話を楽しんだりするのも良いなあ、なんて思います。もっと細かく、いろいろな可能性の分岐があると思ってます。

 会話って成立してるようで通じてなくて、でも何か伝わるところはあって、そういうのは他人も宇宙人も変わらないんじゃないかな、という気がしてます。


◇◇◇


 短編をいっぱい書いて、いっぱい読んで、七月はほんとお祭りのようでした。後半、かなり息切れしてましたけど。

 お疲れ様でした、楽しかったです。

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