第11話

 鏡花が着替えている間、敦たちは談笑しながら鏡花が来るのを待っていた。

「楽しみだね、敦君」谷崎潤一郎が敦に声をかけた。

「鏡花ちゃんのことだから、すごく似合ってると思うよ」

「谷崎さん。そうですね、楽しみです」

「紅葉さんが選んだのなら、間違いなく似合ってるだろうね」二人の元に太宰がやってきた。

「言っただろう。紅葉さんに任せて大丈夫だって」

「太宰さんの言う通りでしたね。もしかして、こうなることを予測してたんですか?」敦は太宰に訊ねた。

「さて、どうかな」太宰ははぐらかした。

「しかし、椿の髪飾りを贈るとは、紅葉さんも気の利いたことをしてくれるね」

「あの花言葉ですね。今聞いても鏡花ちゃんにピッタリですね」

「まぁ、それ以外にもあるんだけどね」

「え? それってなんですか?」敦は問いかけた。

「椿の花はねーー」

 太宰が言いかけたそのとき。

「皆さーん。お待たせしました!」会議室からナオミが、鏡花の手を引きながら出てきた。

「おー!」

「かーわいいー!」

「こっち向いてー!」

鏡花の新しい着物姿に探偵社員達は大いに盛り上がり、賑やかな夜を過ごした。

 皆から少し離れた窓辺に、太宰は腰掛けながら外を見ていた。

「椿の花とはね・・・・・・。ありがとう、姐さん」

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