第10話
包みの中には、着物の他に小さな木箱が入っていた。
「これ・・・・・・」鏡花は木箱を手に取った。
「その箱は?」敦は訊ねた。
「分からない。開けてみる」鏡花は箱を開けた。
中には『鏡花へ』と書かれた紙と、白椿の髪飾りが入っていた。
「わぁ、綺麗な髪飾り。これもその人からの贈り物なんですか?」ナオミは聞いた。
「分からない。私もこの箱は知らなーー」
鏡花は、紅葉が店主と棚の前で話し込んでいたのを思い出した。あの時見ていたのはこれだったのだと気づいた。
「鏡花ちゃんへって手紙に書いてあるんだからきっとそうですよ。ねぇ鏡花ちゃん、その髪飾り、つけてもらってもいい?」
「うん」ナオミの提案で、鏡花は髪飾りを付けた。
「わぁ、綺麗。よく似合ってますよ。ねぇ、与謝野先生?」
「おお! よく似合ってるじゃないか。それに白椿とはぴったりじゃないか」
「それって、どういうことですか?」敦は訊ねた。
「白椿の花言葉は完璧なる美しさ・至上の愛らしさ。至上の愛らしさなんて、鏡花ちゃんにぴったりだと思わないかい?」太宰が答えた。
「なるほど。たしかにそうですね」
「すごく綺麗だよ、鏡花ちゃん」鏡花の方を向き、答えた。
「・・・・・・ありがとう・・・・・・」鏡花は顔を赤らめ、照れるように下を向いた。
谷崎ナオミが何か思い付いたと言わんばかりにポン、と手を叩いた。
「ねえ鏡花ちゃん。せっかくですし、新しい着物、着てもらってもいいかな?」
「おお! いいねぇ。妾も新しい着物姿を見たいと思ってたんだ」与謝野はナオミの提案に乗っかった。
「ちょ、ちょっと二人とも。何も今じゃなくても・・・・・・」
「何言ってるんだい、敦。パーティーの主役は鏡花なんだ。主役にはもっとかわいくなってほしいじゃないか」
「与謝野さんの言う通りですよ! それとも、敦さんは見たくないんですか?」
敦は二人の勢いに押されていた。
「見たい、の・・・・・・?」鏡花が問いかけた。
「で、出来ればその・・・・・・、見たい、な・・・・・・」恥ずかしそうに敦は答えた。
「・・・・・・分かった」鏡花は照れながら答えた。
「そうと決まれば! こっちに来て」ナオミは鏡花を会議室へと連れて行った。
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