第9話

「かんぱーい!」

 飾り付けられた探偵社の事務所では、鏡花のお祝いパーティーが開かれていた。

社員達の机の上には、パーティーのために用意された様々な料理が置かれている。

 予期せぬ出来事に、鏡花は驚きの表情を隠せなかった。

「驚いた?」二人分の飲み物を持った敦が問いかけた。

「うん、びっくりした」鏡花は飲み物を受け取った。

「あなたは、知ってたの?」

「いや。僕も知ったのは、太宰さんに連れられて探偵社に戻った時だったんだ」

「二人には秘密にしていたからな」国木田が二人に説明した。

「敦には鏡花と夕方までのんびり過ごしてもらい、その間に飾り付けをする予定だったのだが・・・・・・」国木田は隣にいた太宰を睨んだ。

「太宰の阿呆が敦を連れて来た時はどうなることかと思ったぞ。おまけに鏡花のことはポートマフィアの幹部に任せて来た、などと言いおって・・・・・・」

「まあまあ、国木田くん。計画は無事成功したのだから、いいじゃないか」

「貴様がそれを言うな、この唐変木が!!」国木田の説教が始まった。

「ちょっと国木田さん。今日くらいはやめましょうよ」敦が止めに入った。

「全くだねぇ、国木田」国木田の襟を与謝野晶子が背後から掴んだ

「今日はめでたい日なんだ。説教はまた別の日にしな」

「そうですよ。せっかくのパーティーなんですから、思いっきり楽しみましょっ。計画もうまく行ったんですからよかったじゃないですか」谷崎ナオミも間に入った。

「そう言うわけだから国木田。ちょっとあたしに付き合いな」そう言うと与謝野は国木田を引きずっていった。

「気を取り直して楽しみましょっ。ところで・・・・・・」

 ナオミは机の上に置かれた包みに視線を移した。

「ずっと気になってたんですけど、鏡花ちゃんが持ってたその包みって、一体何が入ってるんです?」

「実はそれ、僕も気になってたんだよね」

「どれどれ」太宰は包みを見た。

「なるほど。紅葉さんからのプレゼント、というところだね」

「うん。私の新しい着物だって。でも、どうしてあの人からってわかったの?」鏡花が訊ねた。

「包みに描いてある紋だよ。その紋は紅葉さん御用達のお店のだからね」太宰は答えた。

「鏡花の新しい着物だって?」与謝野がワイングラスを持ちながら来た。

「一体どんな着物か見てみたいねぇ」

「そうですね。ねぇ、鏡花ちゃん。その着物、見せてもらってもいい?」

「うん」鏡花は包みを開いた。

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