第6話
二人は再び繁華街を歩き出した。時刻は午後二時をまわった頃だった。
「今度は何処へ連れて行くの?」隣を歩く紅葉に問いかけた。
「私行きつけの甘味処じゃ。ここから少しばかり歩くが、着いた頃にはちょうど良い時間になっているじゃろうな」紅葉は鏡花を連れて歩みを進めた。
しばらく歩くと、大きな日本庭園が見えてきた。
「ここじゃ」紅葉に連れられて来たのは、庭園の中にある甘味処だった。
時刻は午後三時を少し過ぎた頃だった。まさに、紅葉が言ったちょうど良い時間となっていた。
「ここから庭を眺めながら、菓子を食べるのが好きでのう。ここで休憩としよう」二人は庭が見える席に座り、鏡花はもなかとほうじ茶を、紅葉は汁粉と玉露のお茶をそれぞれ注文した。
しばらく庭を眺めていると、注文した和菓子が運ばれて来た。
「冷めぬうちにいただくかのう」二人は和菓子を食べた。
「美味しい!」もなかを一口食べた鏡花は、美味しさのあまり頬を緩ませた。
「ここの菓子は絶品じゃからのう」紅葉は庭の方を向いた。
「ここの景色を見ながら食べるのが私のお気に入りじゃ。春の桜、夏の紫陽花、秋のもみじ、冬の水仙。どの花も綺麗じゃ」二人は庭園のもみじを見ながらのんびりと過ごした。
どのくらい時間が経っただろう。空がだんだんと夕暮れに染まり始めていた。
「もうこんな時間か。ここへ来ると、時間が経つのを忘れるな。休憩も済んだことだし、そろそろ行くかの」紅葉は立ち上がった。
まだどこかへ行くのか。鏡花は問いかけた。
「心配せずとも良い。次が最後じゃ」二人は庭園を後にした。
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