第4話

 鏡花たちは繁華街の大通りを歩いていた。両側にはブランド品を扱う店が軒を連ねている。

「どこへ行くの?」鏡花は訪ねた。

「そのうち分かるぞ」紅葉ははぐらかしながら歩いた。

 しばらくして、一軒の店の前で止まった。そこは呉服屋だった。

「ここじゃ」鏡花の手を引き、店内へと入っていった。

 外観は新しい造りとなっていたが、店内は年季を感じる造りになっていた。

「これは紅葉様。いらっしゃいませ」店主の女性が、紅葉に挨拶した。

「本日は何をお探しでしょう?」

「ここにいる鏡花に似合いそうなのを幾つか見繕ってくれんかの?」紅葉は慣れた様子で頼んだ。

「え!?」鏡花は驚いた。

「かしこまりました」驚いた鏡花をよそに、女性は店の奥へ行った。

「ここは私が贔屓にしておる店でな。そなたを連れて来たいと前から思っていたのじゃ」

 しばらくすると、先程の女性が何点かの着物を持って店の奥から出てきた。

あまりの速さに鏡花は少し驚いた。

「相変わらず早いのう」紅葉は驚く素振りを見せなかった。この店では普通なのだろう。

 女性は二人を畳敷きの小上がりへと案内した。

「この辺りがお似合いかと思いますよ」女性は、様々な模様があしらわれた、様々な色の着物を並べて見せた。

「どれも似合いそうじゃな」紅葉はどの着物にしようかと悩んでいた。

「こちらなどはいかがでしょう?」女性は紅色の着物を手に取った。

「今お召しのお着物と色は似てしまいますが、模様がとても綺麗ですよ」その着物には花丸文と呼ばれる、草花を円形に図案化した模様が描かれていた。

「確かに綺麗じゃのう。それに、少し大人びた感じもするのう」紅葉もその模様に見入っていた。

 ふと、紅葉は隣の着物に目を向けた。

「これなども良さげじゃの」そう言うと紅葉は、扇模様が施された薄紫色の着物を手に取った。

 紅葉と主人の話は続いていく。

 鏡花は二人の会話について行けず、呆然としていた。

「鏡花はどの着物がいい?」呆然としていた鏡花に、紅葉は問いかけた。

「え!?」鏡花は驚いた。

「そなたの着物を選んでおるのだ。私たちだけで決めるよりも、そなたの意見が大事じゃろう」

 そう言うと紅葉は、小上がりに鏡花を呼んだ。

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