第3話

 角から現れたのは紅葉だった。

どうしてマフィアの幹部がこんなところにーー敦は身構えた。

「そんなに警戒せずとも良いぞわっぱ。ここで騒ぎを起こすつもりは無いのでな」紅葉は笑みを浮かべていた。

「もっとも、今ここで私とやり合い、斬り殺されたいというのであれば話は別じゃがな」紅葉は僅かながら殺気を見せた。その背後には、彼女の異能『金色夜叉』がうっすらとその姿を見せていた。

 敦と鏡花は自らの異能をいつでも発動できるように身構えた。

ーーその時

「はーい。二人ともそこまで」敦と紅葉の間を割って入るように、太宰治が現れた。

「だ、太宰さん!?」太宰の突然の登場に敦は驚いた。

「太宰さん、どうしてここに・・・・・・」

「まあまあ、細かいことは気にしない。それよりも、ポートマフィアと争うことは禁止されているはずだよ」太宰は敦を嗜めた。

「そういう訳だから、その異能はしまってもらえるかな? あねさん」太宰は紅葉に頼んだ。

「仕方ないのぉ」そう言いながら、紅葉は『金色夜叉』を消した。

 ありがとう。太宰は紅葉に礼を言った。

「それにしても、こんな所で会うなんて珍しいね」太宰が紅葉に問いかけた。

「ちとここに用があってのぅ。そしたら鏡花の姿が見えたので、少し話をしていたところじゃ」紅葉の表情からは殺気が消えていた。

「ここであったのも何かの縁じゃ。鏡花。今日一日、私と過ごさぬか?」

 紅葉の突然の発言に、敦と鏡花は驚いた。

「夕方には解放してくれるかい? 姐さん」二人の驚きをよそに、太宰は問いかけた。

「解放とは人聞きが悪いのぉ。じゃが構わぬぞ」紅葉は答えた。

「ちょ、ちょっと、太宰さん!?」敦は更に慌てた。

「大丈夫。彼女が鏡花ちゃんの事をどれ程大切に思っているか、君も知っているだろう」

敦の言葉を遮るように太宰は言った。

「そういう訳だから敦くん。私と一緒に来たまえ」そう言うと太宰は、敦の手を引いて歩き出した。

「ちょ、ちょっと、どこへ行くんですか。太宰さん」敦はどこかへと連れて行かれた。

 鏡花は一人、紅葉の前に残された。

「さて。私らも行くとするかの」紅葉は鏡花の手を引いて歩き出した。

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