第2話

「夕方、まで・・・・・・?」

「そうだ。二人とも入社から色々と慌ただしかっただろ。本当なら今日一日休暇としてやりたかったが、そうもいかなくてな。まぁ、特別休暇とまではいかないが、敦と二人で夕方までのんびりしてこい」

 国木田独歩からの提案を聞いた鏡花は、武装探偵社の同僚である中島敦と一緒にヨコハマの繁華街に来ていた。

「良かったね鏡花ちゃん。夕方までお休みになって」

「うん。よかった」鏡花は嬉しそうだった。

「でも良かったのかな? 僕達だけお休みもらって?」敦は休みになった事に喜んでいたが、申し訳なさを感じていた。

「のんびりしてこい、って言われたんだから、気にしなくていいんじゃない?」鏡花は答えた。

「・・・・・・それもそうだね」特に気にしないでおこう。敦はそう決めた。

「夕方までどうしようか? 何かやりたい事とか、行きたい場所とかある?」せっかくの休みを楽しもうと思った。

「別に。あなたと一緒なら、どこでもいい」鏡花は表情を変えず答えた。

 鏡花の返事に、敦は一瞬ドキッとした。

 そういえば、鏡花ちゃんと横浜の街を回るのってあの時以来だよなぁ。敦は緊張してきた。

 ふと、鏡花が下から覗き込んでいるのに気付いた。

「どうしたの?」鏡花はたずねた。

「な、な、何でもないよ」敦は慌てて答えた。

「そ、そうしたら、一通り歩いてみよう。それでもし途中どこか気になるお店とか見つけたら行ってみようよ」冷静を装ったが、敦は緊張していた。

 二人は人混みで賑わう繁華街を歩き出した。

 十字路へ差し掛かった時、角から和服姿の女性が出てきた。

「おや、鏡花ではないか」

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