記念日

猫ノ介

第1話

 秋晴れに包まれた昼下がりのヨコハマ。

観光地として人気が高く普段から賑わっているこの街だが、この日は多くの人で朝から賑わっていた。

 その賑わいの中を、遊女を思わせる出立ちの女性と和服の少女が歩いていた。女性の名は尾崎紅葉。ポートマフィア五大幹部の一人で、仕込み杖を持った夜叉を使役する異能『金色夜叉』を持つ異能力者だ。

「何をそんなに怖い顔をしておるのだ? 鏡花」紅葉は隣を歩く少女に問いかけた。

「別に・・・・・・」鏡花と呼ばれた少女は答えた。

 少女の名は泉鏡花。紅葉と同じく仕込み杖を持つ異形を操る異能力『夜叉白雪』を持つ異能力者だ。以前はポートマフィアの構成員だったが、現在は武装探偵社の調査員である。

 鏡花は隣に立つ紅葉を警戒していた。

「そんなに警戒せずともよいぞ。わっちはそなたを傷つけるつもりなど無い」紅葉は笑みを浮かべながら言った。

 鏡花の表情に変化はない。

なぜこうなったのかーー 話は少し前にさかのぼる。

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