第4話

 墓地の通路をのろのろと歩いた。風呂に長湯したように身体が火照り、足どりが重かった。おしゃべりな女だった。話を聞いてくれる客であればだれでも、あんなふうに長々と身の上話をするのだろうか。そして、時々「お客さんの赤ちゃんを産んでもいい?」と訊くのかもしれない。いつか本当に父親がだれかわからない子を産むのだろう。生まれた子が女の子だったら、大きくなってあの女と同じように、たぶん、あの街で売春をするだろう。今日の女の命もその母親と同じように儚いように思われた。二十年も経てば、女も骨になって合同納骨堂に納められ、女が生んで大きくなった娘が墓参りにきて手を合わせ、「ママ、安らかに眠れ。アタシもそのうちママのところへいくから」と祈るような気がした。

(つづく)

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