第4話
墓地の通路をのろのろと歩いた。風呂に長湯したように身体が火照り、足どりが重かった。おしゃべりな女だった。話を聞いてくれる客であればだれでも、あんなふうに長々と身の上話をするのだろうか。そして、時々「お客さんの赤ちゃんを産んでもいい?」と訊くのかもしれない。いつか本当に父親がだれかわからない子を産むのだろう。生まれた子が女の子だったら、大きくなってあの女と同じように、たぶん、あの街で売春をするだろう。今日の女の命もその母親と同じように儚いように思われた。二十年も経てば、女も骨になって合同納骨堂に納められ、女が生んで大きくなった娘が墓参りにきて手を合わせ、「ママ、安らかに眠れ。アタシもそのうちママのところへいくから」と祈るような気がした。
(つづく)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます