第3話

 墓地の中に合同納骨堂がある。女の母親の骨はそこに納められているという。女は毎週そこへ墓参りにいく。プラスチックの定規にマジックペンで「ゆかりの墓」と書き、地面から堂の基壇に立てかけ、跪き、手を合わせ、小さい声で「ママ、安らかに眠れ。」と祈る。それから心の中で「ママ、待っていてね。アタシももうすぐママのところへいくから。」とつぶやく。二、三日したら定規の墓標は清掃員に片づけられ、女は翌週にまた、新しい定規をもって墓地にいく。

(つづく)

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