第40話 迷宮内で野営

 5Fに到着した。


 犬人コボルト鬼蜘蛛ジャイアントスパイダー基本的には4Fと変わらない。


 あとは洞窟蛇ダンジョンスネーク


 大型の蛇で牙に空いた穴からスプレー状に毒を飛ばし、

 目つぶしをした後に噛みついて毒を注入して殺すか、絡みついて絞め殺すという生態をしている。


洞窟蛇ダンジョンスネークは練習がてら試しに狩ってみたりできそうにないね」というと


「防御魔法じゃ毒は防げないし、我々だと解毒もできないからな気を付けて進もう。」


 とロペスがイ・ヘロを5mほど先に出現させて言った。



 しばらく歩くと怪しい光球が近づくことで異変に気づいた洞窟蛇ダンジョンスネーク

 鎌首をもたげて怪しい光に対して毒霧を噴き出した。


 イ・ヘロは暖かいのだろうか。


 洞窟蛇ダンジョンスネークの生態が気になったがとてもじゃないが近づけないので遠くから

 氷の矢ヒェロ・エクハで攻撃し、氷の矢で壁へはりつけにして処分する。


 毒の牙が素材として回収できるが他のものと一緒に袋へ入れると毒のせいで

 他の素材が腐食してしまうので注意が必要だ。


 用途としては狩猟の際の武器に塗る毒として使い、魔物にも使えるのでいざという時の備えになっている。


 猛獣を狩るには魔物化した動物の血でもいいのだが、肉が汚染されてしまって食べられなくなるのでこの蛇の毒を使う。


 稀にだが狩猟対象が魔物化した動物の血と順応して魔物化してしまい、より凶悪になってしまうことがあるため、

 魔物化した動物の血は最後の手段だ。



 6Fに向かうために、見かける魔物に問答無用で氷の矢ヒェロ・エクハを飛ばしながら移動する。


 もちろん素材の回収は怠らない。


 回収する素材が小さくて軽いおかげで移動の邪魔にならないのがうれしい。


 洞窟の小鬼ゴブリンの武器とか今になって思うとバカなんじゃないかと思う。


 重い、安い、かさばる。



 あっというまに6Fへの階段にたどり着き、

 階段で休憩をする。


 なわばりがあるのか迷宮内の魔物は階段には近寄らないのだとガイドブックに書いてあった。


 6Fのガイドブックにはじめて書いてある辺りあまり知られる情報ではないようだ。


 階段の壁に寄り掛かりカバンから今朝買ったカバンに入れていたせいでつぶれたパンを取り出して食事にする。


 1つは食べたが3つは処分に困って適当にカバンに詰めてきたのだった。



「カバンを抱えて寝られれば特に警戒して寝る必要はなさそうだけど、どうしようか。」とロペスに聞くと


「ここから先に行ける戦闘力があれば魔力がなくてもどうにかできる可能性があるから見張りは必要だ。」


 と主張した。


 不測の事態に見張りは必要か、ということで順番に起きて休憩をとることにした。


「寝ることができるのであれば魔力増やさないか」とイレーネを誘い魔法障壁マァヒ・ヴァルをぶつけ始めた。


 向上心の高い若者はまぶしいのうと感想を漏らし、先に休ませてもらおうかと思ったが、


 ばりんばりんうるさすぎて寝られたものじゃないので、干し肉を噛んで気を紛らわせる。


 ロペスがダウンし、イレーネに余裕がありそうだったので1回だけ私と魔法障壁マァヒ・ヴァル割りをして


 イレーネが休憩に入った。



 イリュージョンボディを全員にかけ暗闇の中でじっとしていると上の方から声が聞こえた。


「やっぱり洞窟蛇ダンジョンスネークのフロアが一番面倒だな、何度来ても面倒だ」


 松明の明かりが見え、見つからないように息を殺した。


 さっき面倒と言ったのは先頭に立つ大楯を持った190㎝はあろうかという大男だった。


「毒にかかっても私がいるではありませんか、安心してブロックしていいんですよ」


 と後ろからついていくローブを着た長髪の男が言った。


「そうなる前に仕留めたいんだが松明の明かりだと接敵してからの準備になるから難しいんだよな」


 と弓矢を担いだ軽装の男が言った。


「階段だからってごちゃごちゃうるさいぞ!」と殿しんがりのライトアーマーの剣士が諫めていた。


 タンクに僧侶にシーフにアタッカーか、バランスいいなぁ、と思っているとシーフの男が周りを警戒する。


「なんか変じゃないか?」というが違和感を覚えているのはシーフだけらしく


「別に何もないが? そんなことよりさっさと降りろ」と言われ、そのまま階段を下りていった。




 そして辺りは暗闇に戻った。


 物音ひとつせずに耳鳴りがするような沈黙。


 大きく息を吐くと緊張を解いてアグーラで出した水を飲む。


 ちょっと水飲みすぎたかもしれない。


 緊張が解けたせいか、トイレに行きたくなってきた。


 こっそりと5Fに戻り効果があるかわからないが幻体ファンズ・エスを重ね掛けして用を足し、


 アグーラで洗った後に熱風アレ・カエンテで乾燥する。


 再び階段を下りるとイレーネが起きていた。


「どうしたの?」と聞かれ


「警戒とお花詰みに」と小声で答えた。


「さっきハンターのパーティが降りていったんだよ」と教えると寝入っていて気づいていなかったようだ。


「じゃあ、次は私が寝ることにするよ」といってカバンを抱えて俯いて寝ようとしたが


 胸が邪魔になって寝づらいので壁に寄り掛かって寝ることにした。


 本当に忌々しい。




 イ・ヘロを使い、時間はわからないが朝食をとることにする。


 体力使って魔力も使って疲れているのに睡眠時間はいつもの半分というのは辛い。


 そして座って寝たのでお尻も痛い。




 昨日買った残りのパンをとりだした。


「カオルは用意がいいな、短期なら堅パンでなく普通のパンでもいいかもしれないな」


 といって堅パンを食べた。


「食べる機会を逃しただけだよ」といってパンをむしって食べる。


 イレーネは起動するまで時間がかかるらしくまだうとうとしていた。


 時間の余裕もまだあるし、帰りは1日かけてまっすぐ帰る予定にしておけば問題はないだろう。




 ■5日中2日目


 辛そうに瞬きを繰り返すイレーネの顔に水流をつけたアグーラをそっとつけて顔を洗わせる。


 その後少し目が覚めたか、のそのそと堅パンを食べだした。


 しばらくしてイレーネが動けるようになったので6Fに向かって移動を開始する。


「ごめんね、朝弱くて」といってしょんぼりしていた。


「体質ならしょうがないさ」ロペスがフォローした。


 気を取り直して立ち上がり、折り曲げて寝たせいでバキバキになった腰を伸ばす。


 固まった筋肉が伸ばされて痛気持ちいいが毎日だとつらいなぁと思いながら階段を下った。




 6F


 ガイドブックによると


 洞窟蛇ダンジョンスネーク、地味にスライムが復活し、人食い植物マンイーターがいる。


 人食い植物マンイーターはガイドブックによると、


 幹が太い低木の姿をしており、上部より無数の触手が枝の振りをして伸びており、


 獲物が近づくと一瞬のうちに触手が獲物を捕らえて枝の間にある口で咀嚼するというものと書いてあった。


 洞窟蛇ダンジョンスネークが枝の間で共生しており、とらえる前に洞窟蛇ダンジョンスネークが毒を吹きかけて動けなくした後に


 人食い植物マンイーターがゆっくりと食事を楽しむという関係で、人食い植物マンイーターが食事後に吐き出す


 魔力のこもった排泄物を目的にしているのだという。


 攻略法は火を使うのが一番なのだが、洞窟内での大量の火は呼吸できなくなってしまうので、


 根気よく1本ずつ切り落としていくしかないようだ。


 洞窟蛇ダンジョンスネークが一緒にいると難易度が上がり、矢で洞窟蛇ダンジョンスネークを仕留めた後に


 切り落としていくしかないが奥深くに潜っている場合は矢が通らない。




 降りてしばらく歩いてみて思ったが、真っ暗闇の中に木が生えているのは違和感がありすぎて呆れたシュールだった


 先行して置いておいたイ・ヘロに対して人食い植物マンイーターの触手が絡みつこうと空を切り、


 洞窟蛇ダンジョンスネークが毒を吐いた。


 魔力に反応しているようだ、と感じた。


「イレーネとロペスは炎の矢フェゴ・エクハを、私はカエンテで空気を攪拌します。」


 洞窟蛇ダンジョンスネークは魔力で作られた炎の矢に反応し、射出された炎の矢に噛みついて、


 人食い植物マンイーターは触手でとらえようと燃え上がらせた。


 魔力があるというだけで相当なアドバンテージなんだなぁと感心した。


 人食い植物マンイーターの素材は本体の木なのだが、重いわりに売値がよくないので今回は放置する。


 燃え尽きて動かなくなった人食い植物マンイーターアグーラをかけて消火する。


 それからも何回か遭遇したが洞窟蛇ダンジョンスネークが共生しているのはいなかったため、


 ロペスがやる気をだして魔法を使わずに倒したいと言い出し、肉体強化を解除してハードスキンのみでやった結果、


 思った通りに捕らわれてしまったのでイレーネと一緒に慌てて風の刃ヴェン・エスーダで救出し、今後やる気を出すのを禁止した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る