第26話 フィジカルの差と体調不良

 真正面から打ち合っても勝ち目はないし、

 重心を落としたままでも受けきれずに吹っ飛ばされる。


 動ける太っちょというのは近接戦闘においてこれほどとは。


 重心を上げとにかく動いて真正面から当たらない様に逃げ回る。


 炎の矢フェゴ・エクハを2本出し、1本は打ち出して、

 もう1本は出した場所に置いておく。


 その場に残されたに炎のフェゴ・エクハに警戒して私の警戒がそれた一瞬で

 同じことをし追撃をする。


 こちらに意識が向いた瞬間、死角に置いた炎のフェゴ・エクハが飛んでくる。


 昔のロボット対戦ゲームに似た戦い方は異世界でも通用する場合もあるらしい。


 そういえば外国人の対戦相手から「逃げ回ってばかりの卑怯者のくそ野郎」と

 メッセージが来たなと懐かしく思い出した。


 ラウルは炎の矢を剣で弾き、一直線に追ってくるが

 私のスピードには追い付けない。


 追い付かれてはかなわないので逃げながらより強く足に強化をかける。


 がんばればきっと音速を超えるに違いない。


 ラウルを炎の矢で包囲した所で立ち止まり勝利宣言をした。


「私の勝ちです!」勝どきをあげ剣を掲げた。


 ヴィク教官はしばらく考え込んでから


「ラウル、やれるか?」と聞くとラウルは首を振って寝転がった。


「私も、もう、限界です。」膝がくだけないように手で押さえて息を整える。


「まあ、いい、今回はなかなかよくやったな、カオル」


「ありがたく、存じ、ます」


 膝が勝手に笑うのを感じながら端によって座り込んだ。


「今日のところはこんなところだろう。

 しかしもうちょっと剣を振れるようにしないといかんな」

 と言って解散になった。


 座ったばかりだというのに。


 喉は焼かれたように熱く足に力が入らない、もう少し休んでから立ち上がろう。


「おいカオル!この後もここ使うんだからさっさと立ち上がって帰れ!」


 しょうがないのでイレーネに引っ張り起こしてもらって立ち上がった。


 更衣室に入る前に頭からアグーラを浴び、喉を潤す。


「たまりませんな!」とイレーネにいうとイレーネは苦笑いで返事をしてくれた。


 イレーネと一緒に着替える。


 イレーネの体も見慣れてしまったもので

 イレーネに締まったんじゃない?体、というとそう?やったね、と喜んでいた。


 大きい講堂でエリーを待ちながらイレーネともっと魔力増やさないと

 後半ジリ貧だよね、といかにして無駄に魔力を使って魔力を増やすかについて

 議論し、その後はエリーとイレーネがワモン様談義に花を咲かせた。


 しばらくして落ち着いた二人と一緒に部屋へと戻る。


 階段の段を上るたびに腿とふくらはぎに激痛が走る。


 これはきっと筋繊維が断裂してしまったに違いない。と、

 エリーに言ったらただの筋肉痛です。と切り捨てられイレーネには笑われた。


 なんとか3階にたどり着いて部屋に入る前にイレーネに聞いてみる。


「そういえば、魔法障壁マァヒ・ヴァルって

 魔法障壁マァヒ・ヴァル同士でぶつけたらどうなるのかな?」


「試してみようか」と二人で弱く魔法障壁マァヒ・ヴァルを使い打ち合わせてみる。


 ほんの少しだけの魔力しかこもってない魔法障壁マァヒ・ヴァルだが

 ギィンと結構な、他のフロア響き渡る程度に大きな音を立てて

 魔法障壁マァヒ・ヴァルが砕けた。


「安全に魔力枯渇狙えるかと思ったのに、

 普通のぶつけたらどうなるのか」とがっかりした。


「いい方法探さないとね」といい自分の部屋に帰った。


 水浴びはしてきたが流しただけなので一応シャワーを浴び

 夕食を用意してもらう。


「私の食事はエリーが用意してくれるけど、普通はどうしているのかな?」


 エリーに聞いてみると、普通は側仕えや使用人を連れてきたりすることもあるし、

 自分で全部やることもあり、自分でやる場合は1階の食堂に行けば

 朝から夜まで人がいるし人がいない場合は

 材料持ち込みで自分で調理できるとのことだった。


「なるほど、いつもありがとうございます。」というと一瞬驚いた顔をしてから

「朝と夜だけですし、おかげでお友達もできたので

 こちらこそありがとうございます。」と微笑んでくれた。


「では、また明日よろしくね」と夜の挨拶をしてエリーを見送った。


 今日は無理に身体強化をかけたせいか色々体がおかしい気がする。


 早めに寝て明日に備えようとベッドに入った。


 次の日の朝、やはり体調を崩した。


 吐き気と腹痛が止まらないし、魔力が勝手に溢れて暴れて止まらないのだ。


 溢れた魔力が動くたびに眩暈がして気持ちが悪くなる。


 腹痛と眩暈に震えがでてガチガチと奥歯がなる。


 エリーが来るまで痛みに耐えベッドの中で蹲るうずくまる


 しばらくして控えめなノックの音が響く。


 返事もできずに痛みに耐えると、返事がないことに何か感じたかエリーが

 ゆっくりとドアを開け入ってきた。


「ずびばぜん、腹痛と吐き気が止まらないし、魔力が制御できないしで

 何か大変な病気になってしまったんじゃないかと思うのですが」というと

 エリーはあらまあ、という表情をして


「カオル様は女の子の日が重いのですね、今お薬お持ちします。」と出て行った。


 私の知ってる話と違うし聞いてる話とも違う!


 腹痛と悪寒に耐えしばらくするとエリーが戻ってきて丸薬をいくつか差出し、

 私を起こした。


 大慌てで薬を飲みこみ横になる。


「今日はお休みしたほうがよさそうですね、連絡はこちらでしておきますから

 今度からは来そうな時は前の日に飲んだ方がいいですよ」とアドバイスして

 朝食を置いて出て行った。


 そして帰り際に薬を多めに用意してもらうようお願いした。


 数分で魔力が収まり、段々と痛みが和らいでいく。


 1時間もすると元通りに動けるような気がしたので

 おいていってもらった朝食をとった。

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