第20話 叱咤と観戦

 着替えてペドロと一緒に教官の前に行く。


 ペドロはおおむね褒められていた。


 問題は私だった。


 散発的に飛ばしすぎだし剣もなってない、かろうじて守れているがそれだけで

 私の腕で切れるのはこどもくらいだそうだ。


 とてつもなく詰められ心をメッコメコにへこまされ

 しょんぼりしながら見学に回った。


 そもそも喧嘩もしたことないし自分の体じゃないのに

 いきなり剣を振って戦えなんてできるわけないじゃんよーと

 完全に折れ切ったまま見学するために座り込んだ。


「なんかいっぱい言われてたね」とイレーネが笑いながらやってきた。


「武器なんか持って戦うのなんて初めてなんだからしょうがないじゃんねー」と

 答えたものの年下のお嬢さんに愚痴るのは中々にかっこ悪いな、と反省した。


 しかしぼやきを聞きつけたロペスが

「カオル!剣の手ほどきなら任せてくれよ」と言って

 手を取ってきたのでピシャリとやっといた。


 しかし、教えてもらうのは悪くないかもしれないな、と

 心の中で検討中にしておいた。


 休憩がてらイレーネの体の使い方とか参考になるかなと模擬戦闘を眺める。

 いったん痛覚遮断の模擬戦闘を解禁したら全員解禁なら

 初めから解禁しとけばいいのにと思いながら

 イレーネを見つけると、ルディとの戦闘だった。


 ルディはあんまり話したことないが魔力の扱いとしては

 どうだったかな、と思い出してみるが

 まったく見ていなかったので思い出せない。


 イレーネとルディは地面を蹴ると数合打ち合い距離を取った。


 特に何かあるわけでもないのに離れた意味はあるのかな、と観察していると

 ヴィク教官から意味もなく距離を取るなと叱責されていた。


 やはり身体強化をすると女性であっても

 男の力にもある程度対抗できるようになるのだなぁ、と

 イレーネを見ながら感心した。


 イレーネは大きいほうではないため恐らく175㎝くらいのルディと比べると

 身長差は15㎝くらいありそうだ。


 お互い片手剣だが、イレーネはたまに両手で扱えるように左手は手甲のみ、

 ルディは片手は盾を構えたスタイルだった。


 手数のイレーネと防御重視のルディの戦いは意外と長く続き

 足やら手やらの末端に中々深い傷を負ったが

 私やペドロの時のような重傷を負うことは無くて安心した。


 他の人が死力を尽くして戦う様は

 意外と手に汗を握って応援してしまうのだな、と感動した。


 戦いの結末はお互いの魔力切れによるダブルKOだったが。


 二人は傷を治してもらい、反省会というなのダメ出しを受け戻ってきた。


 所々に血の塊を付けたふらふらのイレーネに思わず声をかける。


「すごかったよ!感動した!」イレーネは照れ笑いを浮かべて隣に座った。


「頑張ったけど残念だったよ、でもまあ、魔法なしで

 ルディと張り合えたんなら今の所合格かな?」


「魔法使えるようになってチーム組んでからが本番だね。」


 そのあとはラウルとフリオの戦闘を見ていたが、あまりにも積極性がないもので

 ヴィク教官にどやされていたが最後はなんとか形だけは戦った感じになった。


 この世界で私より戦えない人もいるもんだな、とある意味感心した。


 しかし、彼らは学生時代の自分と自分の友達に通じるところがあり

 シンパシーを感じる。


 私が積極性を獲得したらこちらから話しかけて友達になろう。


 そうこうしているうちにお昼を少し過ぎて解散となった。


 初めての実践的な模擬戦闘だったがお前たちよく頑張った的な訓示を聞き、

 ラウルが感極まったか声を上げて泣いていた。


 だらだらと着替えてイレーネと一緒にエリーと合流して

 昼食を取るために食堂に行く。


 イレーネとエリーは推しの話で盛り上がっているようでいいことだ、と放置した。

 むしろ放置された。

 私は3人集まるとこのポジションにいがちだな、と自虐的に人生を振り返る。


 午後は魔力を使い果たしてヘロヘロなのに魔法の基礎だった。

 できている私とペドロは自習で自由にしていいらしい。

 せっかくなので同じ作業を繰り返して

 もっと多く精密に魔力を扱えるように練習する。


 魔力を分裂し集中する。


 一つずつ変化させ消していく。


 炎、光、氷、闇、水、風、変化させるだけなら

 やはり思っただけでできるようになった。


 飛ばせば無詠唱ということになるのかな?


 闇なんて黒いもやっとしたものを飛ばしたところで何の効果もなさそうだが。


 ここで私とペドロの魔力の行使を見ていた班の他の人が

 不完全ながらもできるようになり、全員そろって気絶した。


 しばらくたって意識を取り戻したところで、宿題がだされた。


 明日の休日は班内でチームを組み学校裏にある管理されたダンジョンへ行き、

 最奥にある魔法石を取ってくることという話だった。


 休日を使ってそんなことをさせるのか、

 しかし魔法石以外は売っていいらしいのでおこずかいにしたい。


 イレーネと話し合い、ロペスとチームを組むことにした。


 ペドロとルディとラウルとフリオがチームを組んでいた。


 皆と話し合い、明日の朝、待ち合わせをダンジョン前にし、好き々に解散した。


 実家がここになく、お金もない私は武器がないので教官から許可をもらい、

 訓練用だが刃がついた鉈くらいの長さの剣と手甲を借りて自分の部屋へと帰った。

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