第11話 初仕事と怪しい動物
石畳が敷かれて整備された道をイレーネと歩く。
両脇に立ち並ぶ石造りのアパートメントはどうやって建築しているか
想像がつかないが大体が5階建てや6階建てになっているように見えた。
道路の端には人ひとりがすっぽり入りそうな大きさの排水溝が掘られ悪臭のする液体が流れている。
2人で悪臭に眉をひそめていると
「神殿の方は臭いも漏れないように整備されてるけど、
下町の方はこれでもだいぶ整備されたみたいよ、
昔は窓から捨てて放置してたみたい」
と、イレーネが教えてくれた。
何十年か前に現れた英雄王が一切合切を整備し直したらしい。
それも召喚人なのかな、結構な頻度で結構な人数呼んでるのではなかろうか。
歩いてみると碁盤の目のような区画整理のされ方をしているようだった。
神殿を中心に貴族区画があり、
その外側には裕福な商人や儲かっている職人、騎士が住む区画
ここまでは下水道が整備されており、
その外側の貧民用の区画がただのドブ川を下水にしているようだった。
なるべく臭いをかがないように急ぎ足で向かう。
ハンターギルドは貧民用の区画でも街の入り口の近くにあり、
神殿からは結構な距離を移動しなくてはならないらしい。
口数少なくというかなるべく息を止めてハンターギルドにたどり着いた。
獲物を持ってすぐに精算できるようになっているからなのか、ハンターギルドからは街の入り口が見える距離にあった。
街の入り口には木製の櫓が立ち、外側を石造りの塀が取り囲んでいた。
「ずいぶん高い塀で囲まれてるんだねぇ?」とイレーネに聞いてみると肉食の動物やら魔獣が来たりするから当たり前じゃない、と言われた。
思ったより危険な世界に来てしまったのだな、と今更になって思った。
開け放たれたハンターギルドのドアをくぐると受付と待合室があった。
入り口に立っていた職員がお上りさんの様にきょろきょろしている私達に気づき
要件を聞いてくれた。
ハンター登録したい、といい、受付に案内してもらった。
まるで市役所の総合案内のようで安心した。
受付のおばちゃん職員に引き継がれ、笑顔のおばちゃんに説明を受ける。
・手数料のみで誰でも登録ができる。
・登録した証としてペンダントがもらえる。
・ランクは1から始まり一定の貢献度があればランクが上がる。
・一定ランク毎に色が異なるペンダントに交換される。
・パーティを組んで狩りに出かけることもできるが、
ランクは目安なので高ランクだから強いわけではないので注意すること。
・ハント中の他のハンターの獲物に手を出すと
トラブルの元になるので注意すること。
・依頼は同時に何人でも受けられるが達成は早い者勝ちなので注意すること。
・達成したらここではなくあっちの受付にいくこと。と指をさして示した。
エリーにもらってきた登録料を払い、名前入りペンダントをもらった。
ペンダントというよりドッグタグだった。
ちゃんと2枚組になっていて
「ハンターの死体を見つけたら1枚持ってきてくださいね」と言われた。
「さっそく簡単な依頼でも受けてみようか。」とドッグタグをつけながらイレーネに提案した。
「いいね、外の案内もしてあげるよ」とイレーネはニっと笑った。
「出たことあるの?」と聞くと笑いながら無いよと言っていた。
掲示板の前に立ち質の悪い紙に炭で書かれた依頼内容をみる。
「これって何で書いてるの?」とイレーネに聞いてみると
「鉛筆みたことないの?」と受付の中を指さした。
受付の中では職員が細めの竹の様なものに
黒い棒が刺さっているもので書類仕事をしていた。
初期の鉛筆か、これは珍しいものをみた。
「あれが鉛筆なんだー、へぇ、初めて見たよ」
と素直に答えた。
「鉛筆がないなんて変なところから来たんだね」とイレーネが珍しいものを見るようにして言った。
「竹のペンに墨をつけて書くんだよ」と適当に答えておいた。
「最初はこんなものかなぁ」とイレーネが1枚の紙を指さした。
薬草10枚 1セット 銅貨 5枚
読めるのは日本語が書いてあるのか
何か不思議な力がかかっているのかわからないが
武器も持たない私には草取ってくるのが精いっぱいだろう。
「確かに。」と言ってイレーネとハンターギルドを後にする。
街の入り口に行きじろじろと見てくる門番の兵隊の前を通り、街の外にでる。
人が歩くから草が生えていないというだけの街道を道なりに行き、
人気が減った所で道から外れて森に入ると薬草の採取にいいらしい。
「ロペスにちょっと聞いてみたら前髪かき上げながら初心者ならここだって教えてくれたよ」
と、ロペスの物まねをしながら言った。
「そうなんだ、じゃあ、薬草はどういうのかわかる?」
と聞いてみた。
「見たことない?そこの小さい花つけてる草」
「ないなぁ、私の所はもっと草だったよ、花が咲かないようなやつ」
と、適当に答えた。
「そっかー、ずいぶん遠くから来たんだね」と感心していた。
だらだらと(主にイレーネが)しゃべりながら2時間ほどで
200本ほどの薬草を採取し暗くなる前に帰ることにした。
薬草を入れた袋を担いで帰途につく。
思ったより遠くまで来てしまったらしく森の端が思ったより遠くにあった。
「思ったより遠くまできちゃったね」と言いながらイレーネの方を見ると
イレーネは返事もせずにどこかを見つめていた。
不審に思いながらイレーネの視線を追ってみると
猿のような動物が1頭こちらを見つめていた。
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