第9話 非力な体と模擬戦

 昨日はよほど疲れたのか早く寝た割に早起きせずに普通に目が覚めた。


 全身の筋肉痛がつらい。


 もうずっと運動なんてしてなかったから学生時代以来の痛みだった。


 軋む痛みを我慢して寝巻から制服に着替える。


 エリーを待って講堂に行き、ルイス教官の講義を受けるため講義室へ移動する。


 今日も魔力を離して維持する訓練をする。


 もりもりと長く伸ばすことはできるが、ちぎれるとその場で維持できず霧散する。


 これは難しい。


 みんなでうんうん言いながら時間を浪費し、あっというまに昼になった。


 イレーネと一緒にエリーと合流し、一緒にお昼ご飯を食べる。


 予想した通りエリーとイレーネは盛り上がり私は置いてけぼりになった。


 エリーとイレーネは食事の約束と、手紙を交換する約束をして昼休みが終わった。


 午後は昨日と違って講義ではなく練兵場での訓練だった。


 軋む体でマラソンをし、肉体強化をかけてもらい素振りをする。


 自分でもかけてみたが、思ったより強力にかかったらしく


 ロングソードを片手で振り回してイレーネが驚いていた。


「どうだい?その状態でおれと手合わせしてみない?優しくするよ」

 とロペスがちょっかいをかけてきた。


 ヴィク教官は却下するかと思ったら、いいだろうやってみろ、と武器を選ばせた。


 ロペスは長剣、私は、と。武器を見て回る。


 どれもこれも使ったことないからどれも一緒かなぁ、と思いながら

 軽いものは木の盾と鉈の様な長さのショートソード、

 刃渡り1mちょっとの剣、

 刃渡り2mもありそうな剣

 槍に棍に弓に斧、さて、どれにしようか。


 ここは武器の王である槍にしましょう。


 右手で石突をもち、左手で半ばより手前を槍が水平になるように持ち半身に構えた。

 重さは感じない、リーチの差があるからいけるか。


 ヴィク教官が「はじめ!」と合図した。


 ロペスが剣を構え隙を伺うように私の周りをじりじりと移動する。


 剣の間合いに入ってしまったら対応できず負けてしまう。


 穂先を左右に揺らし威嚇する。


「間合いが違うからやりづらいね」と、いいながら楽しそうに笑っている。


 剣で穂先を叩き穂先をずらし、剣の腹で柄を滑らせ突っ込んできた。


 槍をひっこめる場所も暇もないので反対向きに回り、石突で胸を突いた。


 皮の鎧を突き当たり阻まれたが一瞬怯んで苦しそうな声を出した。


 そしてその隙に槍を引いて後ろに引いた穂先を上からたたきつけた。


 ロペスは剣の腹で受けそのまま走ってきた。


「嘘だろ!」と思わず叫んでしまいそのままの勢いで蹴り飛ばされ

 剣をのどに突き付けられた。


「負けました」と槍を手放した。


「最後の叩きつけるのはよかったね、かっこよくて。

 でもあそこは払って頭を叩いた方が効果的だったかもね。」


 といって手を引いて起こしてくれた。


「戦うの初めてだからどうしていいかわからなかったよ」


「あれで?槍のことはわからないが才能があるんじゃないかな?」

 といってロペスがほめてくれた。

 見よう見まねカンフーはうまくいった様だ。


「体は動かせるのに力がないとはなんともちぐはぐなことだな、今日も素振りをしたまえ!」と言ってヴィク教官が笑った。


 軋む体で素振りをしヘトヘトになって今日は終わった。


 木剣を片付けて講堂の方へ歩いていくとイレーネに声をかけられた。


「明日休みだけど用事ある?」


「休みってあるの?」


「そりゃあ、あるわよ」と言って笑った。


「用事がなければ街にでましょ」と言われたが断る理由がないし

 特に思いつかなかった。


「いいよ、初めて外出るから色々見せてね」と言って今日の所は解散した。



 エリーと合流し、部屋に戻る。

「召喚者の下着のおかげですごく助かりました。」


「それはよかったです。」


「洗濯する分も考えていくつかあればいいんだけど」


「手配しておきましょう」


「ありがとう、助かります。」


 夕飯の準備をしてもらい、明日について相談する。


「明日は休みらしいのですが」

「そうですね」


「明日はイレーネと街に出ようと誘われているので

 何か気を付けることはありますか?」


「イレーネ様がいれば大丈夫だと思いますが夕方にはお戻りください」


「わかりました。」


 食事をとりストレッチをしてシャワーを浴びてベッドにはいる。


 まだ1週間とたってないのだ、疲れすぎてこの体がこの先もつのか心配だ。


 今日も横になっただけで意識が泥の中に沈んでいった。

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