第8話 新しい下着と制御できない魔法

 腕と足は痛いし体はヘトヘトだった。


 汗が冷えて体に張り付いて気持ち悪い。


 百人力とイメージしたら力が強くなるなら元気出ろって思えば元気でるかな

 ちょっとした思い付きだったがやってみたらことの他うまくいって

 萎びた心が少し潤いを取り戻したようだった。


 帰りは別に戻ってこなくてもよかったみたいで

 待ち合わせをしてこの後遊びに行ったりする人だけが戻ってきている。


 だからイレーネ他C班はだれも戻ってきていなかった。


 きっとみんな帰って疲れをいやしているのだろう。


 エリーが迎えに来てくれたので一緒に部屋へ向かう。


 エリーが甲斐甲斐しくしてくれるので偉くなった気がしてくる。


 まっすぐ帰るのにも夕飯にも早いがどこかに行くには中途半端、

 シャワーを浴びたら時間もちょうどよくなるかなと思いながら歩いていたら

 部屋についた。


 エリーに脱ぐのを手伝ってもらい、シャワー室にいく。


 ビスチェを脱ぐと呼吸が楽になった。


 やっぱり締め付けは相当負担になってたんだな、と思いシャワー室で

 ビスチェを着なくてはいけないのかと足踏みやジャンプして試してみる。


 結果は胸の上がちぎれそうなくらい痛かった。


 軽くジャンプしただけなのにちぎれるかと思った。


 なるほど、ブラジャーはこのためにあるのか、と自らの身体で理解したので解決方法についてエリーに相談してみよう。


 びしょびしょのままシャワー室から出てエリーに下着について相談した。


「エリー、相談したいんだけどビスチェで戦闘訓練すると息が苦しくて

 大変なんだけどもっと動きやすくて胸をがっちりと止めてくれる

 下着はないかな?」


 エリーは私の前に立って両手を広げたのでハグでもするのかと思ったら


 風の魔法でびしょびしょを乾燥してくれた。


「カオル様は召喚者なので知らないこともあると思いますが、

 ビスチェやコルセットで魅力的なボディラインを見せるのが嗜みというもので、

 おっしゃるものはあることはあるのですが淑女としてそういうものはどうかと、

 あと服も着ずにうろうろするのもどうかと」


「普段着がないのですよ。」


「そういえばそうですね」といい、しばしお待ちください。


 と言って部屋から出ていった。

 椅子に座っていい子で待つ、まだここに来て2日目なのだ。


 班のみんなのおかげで少しこの体に慣れることができた。


 使っていけば慣れることはできるだろう、

 慣れた結果、元の体に戻った時に自分の体に違和感がでる可能性がある。


 慣れないのも慣れるのも困る。


 どうしたものか、と悩んでいるとエリーが帰ってきた。


「お待たせしました、こちらをお召ください。あとこちらが寝巻です。」


「これは?どうしたの?」


「ワモン様に言って使っていない一式を持ってきました。」


「ありがとう、下着の件はどうなった?」


「さらしを持ってこようかと思ったのですが、呼吸が苦しいとの話でしたので

 昔の召喚者が作ったものがありましたので持ってきました。」


「そんなものもあるのか、しかしサイズは大丈夫なのかな」


 ためしに着てみる、これはスポブラか。


 これはこれで不本意に女装させられる気持ちになるな。


 つけてみると少し緩い気がした。


「ゆるそうですね、魔力を込めると体に合わせるようになっているようですよ。」


 ほう、と答えカップの所に両手をあて今日習った通りに魔力をだしてみた。


 じわじわと締め上げられ少しきつめになったところで止まった。


 軽くジャンプしてみると一切揺れず動きやすかった。


 体をひねって動かしてみた。


「いいね、これ」


 持ってきてくれた普段着を着た。


 やっぱりスカートか、とぶちぶち言いながら着る。


「そろそろ晩御飯にしたいのだけど。」


「そうですね、お持ちします。」


 そう言って部屋を出ていきしばらくしてカートを押してきた。


 食事をテーブルにならべ何か魔法をかけていた。


「それはなんの魔法?」


「昔の召喚者が作ったという黒魔法のレンチンという魔法です。」

 レンチン・・・


「簡単ですよ、魔力の扱いができるようになったら教えて差し上げますよ。」


「できるできる、教えてください!」


「ではいう通りにしてくださいね、まず温めたい範囲に薄く魔力を広げてください。

 そしてレンチン、と唱えるのです。」


「レンチン」


 テーブルの上がぼうっと光り、今日の晩御飯がカラカラの干物になってしまった。


 呆然とカラカラに干上がったスープを眺めた。


「魔力の制御できてなかったのですね・・・。代わりの物をお持ちします。」


 再び食事を用意してくれた。


 きっとあきれ返ったに違いない。


 エリーは食事を置いてではまた明日、と言って出ていった。


 照明が暗いからかここの食事はおいしくなさそうに見える。


 もそもそと食べ、やることもないので寝ることにした。


 寝巻に着替えベッドに入る。


 いつになったら帰れるのか

 そもそも帰れるのか

 体はどうなってしまうのか

 このまま帰るとまた高校生、しかも女子高生になってしまうのか。


 考えれば考えるほど眠れなくなりそうだったが無茶苦茶に動かされたせいか

 泥の中に沈むように意識は深く落ちていった。

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