第5話 魔力操作と推し仲間

 イメージしてしまうとそのイメージに縛られて使い勝手が悪くなるらしい。


 これは難しくなったぞ、と思いながら

 特定のイメージをしないようにひねり出そうとする。


 してはだめと思えば思うほど液状化し指先から垂れ流される。


 しかし手にボールを作るように固め、手の中でとどめるようにする。


 違うんだ、こうじゃないんだ。


 一度手を打って手の中の魔力を散らして仕切り直す

 次はガス状にできないか試みる。


 どうやら魔力で作ったガスは空気より軽いらしい。


 ゆらゆらと立ち上り霧散していく。


 このガスは吸っても大丈夫なのか、と少し気になったがイレーネの

「さっきよりだいぶましになったね」の一言で気を取り直して続ける。


 集中しすぎて疲れてしまったので周りを見てみると銀髪の・・・

 たしかルディの手でゆらゆらと手を包む魔力の流れが見えた。


 イレーネは量が足りないのか維持ができていないようで出たり消えたりしている。


 ペドロは片手でやっていた、

 片手でしかできないのか片手でやるのが次の訓練なのか。


 明るい青い髪をしたふとっちょも片手でやっていた、

 やはり両手の次は片手でやるのか。


 ゆらゆらとした魔力が壊れたコンロのように

 ボッボッと火が付いたり消えたりしていた。


 ロペスもルディと同じくらいか。


 濃い緑色の髪のひょろっとした気弱そうな彼は全く出ていない様だった。


 前のめりになり体にガチガチに力をいれて集中している、

 集中しているというよりは踏ん張っているように見える。


 一番遅れているせいか焦っているのだろうか。


 他の人のを見たせいか、オーラっぽくしたらいいのかな、と真似ることにした。


 カンニングした結果おそらくできている気がする。


 イレーネにどうかな、と聞いてみると

「もうできたの!? 早いよ!」と驚いていた。


「みんなのを参考にしたんだ、次はどうしたらいいのかな?」


「次はペドロかラウルに聞くといいよ」とペドロとふとっちょを指さして

「ペドロ、ラウル! カオルもう次いくんだって、教えてあげてよ」といった。


 ペドロとラウルは流石に早いなといいながら私が座る場所を開けてくれた。


 ちょっとごめんよっとみんなの真ん中を通りペドロとラウルの間に座った。


 ラウルはふうふう言いながら説明を始めた。


「次はね、体から離す訓練だよ、離した所で火をつけるんだ、

 しばらくはそんな感じだね。」


 そういって自分の訓練に戻った。


 よく見ると手の平から出た魔力は山型に盛り上がるが

 離れて浮いたりしていないようだった。


 真似てみると確かに難しい。


 体から離れていくイメージがわからないのだ。


 そうしているうちにカランとベルが鳴った。


 果たしてルイス教官は目覚めて次の予定を教えてくれるのだろうか。


 ハラハラしながら見ていると

 だるそうに体を持ちあげぐったりと背もたれに寄り掛かった。


「あーだるいわー、次もここで魔法理論の基礎でーす、お昼食べたら集合ー」


 そういって突っ伏した。


 午後もここなら一人で歩ける。


 さっきの講堂に戻ってエリーと合流して昼飯にするんだ。


 イレーネにお昼の予定を聞かれ、

 ワモンに世話をするように言われてるエリーと食べる、と伝えた。


「力のない貴族とはいえいたら気を使わせちゃうね、

 今度一緒に食べましょ」と予約された。


 エリーにも伝えておくよ、といい解散した。


 講堂に戻るとすでにエリーは来ていて講堂の入り口前で待っていた。


「待たせたかな」


「先ほど来たばかりです。」といい、一緒に食堂へ移動した。


 今日はポトフとパン、サラダだった。


 足りるかなと思ったが意外とおなかが膨れた。


 食事が終わって午後の開始の鐘が鳴るまではまだ時間があるので

 エリーに話しかけた。


「一緒に講義受けてるイレーネって子が私とエリーと一緒にご飯したいんだって、

 かまわないかな?」


「あたしはかまいませんが、イレーネ様はお貴族様でしょうか」


「そうだけど結構気安い感じだったよ、

 元々市場とかでて色々遊んでたみたい、自分では力ない貴族って言ってたけど」


「ご一緒することで失礼に当たらなければ断れる立場でもありませんので・・・」


「ごめんね、ワモン様について情報収集したいみたいだったから・・・」


「ワモン様の?」


「そう、ワモン様が好きらしいから

 きっとワモン様について語り合える相手が欲しいみたい」


「そのお気持ちはよくわかります。」


 意外とエリーもワモンのファンだった。


 確かにワモンは顔は整ってるし落ち着いた雰囲気のいい大人だった


「そうなんだ、ワモン様ってどんな人なの?」


「神殿の長にして聖王国ファラスの神聖魔法や

 主神の奇跡を行使するアンデッドや闇に潜むものに対しての最大戦力で、」

 お茶をくいっと飲み喉を潤すと


「パレデス家の当主でありながら奢るところはなくすべての人にやさしく

 ワモン様自身を神の化身なのではないかと噂されることもあります。

 それもそのはず神自身で造形したかのような麗しいお姿で人々を癒して救い、

 神聖騎士として出陣する際は主神の仮の姿といわれる

 戦天使もかくやという神々しさなのです。」


 こっちも止まらない人だった。


 イレーネといい相性なのではないだろうか。


 このままエピソードトークが始まってしまったら

 席を立つタイミングを逃してしまう。


「じゃあ、イレーネと食事するのはいつがいいかしら」と話を逸らすと

「そうですね、できることなら晩御飯をご一緒して一晩中でも

 ワモン様について語り合いたいと思うのですが、

 お仕事もありますのでお昼であればいつでもよろしいかと。」


 とんでもない情熱がはみ出たがそんなのに付き合うのはごめんだった。


「イレーネにもそう伝えておくから、じゃあまた夕方にね」といい、

 足早に講義室3へ向かった。

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