第3話 卵探し(1)
―そして時は現在―
俺は大自然の中、ただひたすらにタブレットの画面をスクロールしていた。
てか、俺何してるんだろう……
そう思ったので、1度、思考を整理してみることにした。
えーと……
俺は親父の店から出て、その後…確か俺は飛行機に乗った。
そこで記憶が途切れて次、記憶が復活した時にはもう、俺は無人島にいたのだ。
この間に俺の身には、どんなことが起きたのだろうか……
いくら考えても、分かるはずは無い。
この案件は、一旦保留ということにしておいて今は目の前の出来事に集中することにしよう。
俺は今、タブレットでレシピ一覧を見ている。
よく分からないが、とりあえず料理を100品作らないと帰れないみたいなのだ。
だから、俺はレシピを見ている。
サラッと目を通してみたが、レシピはとてもバライティーに富んでいた。
鯖の塩焼きだの
オムライスだの
麻婆豆腐だの
どれも無人島では作れそうにない主役系の料理ばかりだ。
強いて、作れそうなものといえば目玉焼きとかかな?
でも、こんな無人島に卵があるとは思えない。
色々なレシピを見て、考えた結果、俺は結局目玉焼きを作ることにした。
目玉焼きのレシピをタップする。
すると、画面は切り替わって説明欄のようなものが現れた。
『目玉焼き。了解しました。
ここ、ユニバーサルアイランドには世界中の全食材が生息しています。そのため、私たちの方では食材を用意しませんが、自主的に集めることが可能です。早速、こちらの地図を見て、卵を探して見てください。
食材がないことには料理は始まりませんからね』
画面にはカラフルな地図が示された。
本当にこの島だけで全食材を集めることができるのだろうか。
どうも信じ難い。
懐疑的な気分のまま、俺は地図に目を通した。
地図には、【哺乳類生息エリア】や【キノコ狩りエリア】など、本当に全食材あるんじゃないかと思わせる程のたくさんのエリアがあった。
これが本当だったら、凄いことだな……。
卵は、ニワトリから生まれるから【鳥類エリア】に行けばいいのだと思うのだが、まだ俺は信じ難い。
全食材がこの島だけに集まっているなんて……
まぁ、でもずっと疑っていても話は進まないので、俺はその【鳥類エリア】へと向かうことにした。
【鳥類エリア】を目指して歩いていると、俺は【野菜エリア】にさしかかった。
軽く辺りを見渡して見ると、本当に野菜が周辺に溢れていた。
トマトに、 キャベツに、トウモロコシに、じゃがいもに、アスパラガスに、人参に、大根に―。
俺は疑問に思ったことがある。
それはなぜ栽培の時期が違う野菜たちが一緒に生息しているのかということ。
ビニールハウス栽培でもないのになぜ、同じように育っているのだろうか。
というか、これは誰かが育てているものなのだろうか……
まぁ、今その真相を知る術なんてありはしないと思うけど。
俺は、先へと進んでいった。
もしかすると、この地図の内容は本当なのかもしれない。
なにしろ、先程の【野菜エリア】がそれを裏付けていた。
ついに世の中は、こんな事まで実現可能になったのか……
そう思い始めた頃くらいに俺は【哺乳類エリア】へと足を踏み入れてしまっていた。
そんな事も気づかずに俺は呑気に考え事をしながら歩いていた。
あーあ……今日の月9ドラマ、録画しとけば良かったなぁ……。
と、ここで唐突に何か猛獣のようなものが吠えた。
その吠える音は限りなく野太くて、大きな音だった。
俺は身体を震わせた。
なんだよ……今の……
すかさず地図を確認してみると、ここが【哺乳類エリア】であるということが分かった。
哺乳類エリアって……
確か、ライオンも哺乳類だったような気がするけれど……
ふと、目線を上げてみると現れたのは恐ろしい形相をしたライオン。
ライオンは俺の方をじっと見つめている。
あ……やば
動くことが出来ない。目の前の[百獣の王]の存在に固まることしか出来なかったのだ。
当然、ライオンは凄い勢いで俺の方へと向かってきた。
狩る気満々の眼差しで―。
「うわっーーー!」
俺は叫び声と共に思いっきり走り出した。
百獣の王とかけっこ勝負だ。
俺、シェフなんですけどぉぉぉぉぉぉっ!!
第2話 〜fin〜
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