キラキラ

「太宰くん、そこの飾り布取って!」

「はい」

もうすぐ降誕祭だから、拠点を飾り付け。森先生が、沢山やって善いよ、って。

脚立を広津さんが運んでくれて、太宰くんが飾りの入った箱。赤、青、緑、金、銀。沢山の色。玄関間には大きな樅木。

「お花飾ったら可愛いかな」手に猩々木を咲かせる。降誕祭に一番似合うお花。

「上の方だけにしないと、触れた人が怪我するよ」

「そっかあ」

じゃあ上の方だけ。下の方は飾り布と、球飾り。お星様は一番上が似合う。

「卯羅、楽しい?」

「太宰くん楽しくないの?降誕祭だよ?」

「知らない。知っているけど、こんなにしたこと無いもの」

脚立の三段目から飛び降りて、太宰くんに飛び付く。「暑い」

「冬だから暖かいんだよ?」怒られそうだから離れよう。

樅木の足元に贈呈品を置くんだよね。

「何故そんなに楽しそうなの?誰だかも解らない人の誕生日だろ?」

「違うよ?降誕祭は、一緒に居られて嬉しいね、のお祝いだよ?」

家族と過ごすのが降誕祭。だから毎年森先生は豪華な宴を催してくれる。太宰くんは今年が初めて。「美味しいご馳走と、西洋菓子と、素敵な贈呈品!きらきらしてて、暖かいの。それが降誕祭」

ふうん。

太宰くんはどうでも良さそうにそれだけのお返事。「卯羅に一つ訊きたいことがあったんだ。君は幸せ?」

「なんでぇ?」急にどうしたんだろう。私は首を捻って考える。「うーん……」母様と居ると、幸せ?ぽかぽかするのは幸せ?幸せって何だろう?

「太宰くんは何が幸せだと思う?」

「解らない。僕にはその言葉が無味に思える」

二人で、解んないね、って樅木を見上げる。

「きらきらだね」

「君がそうしたんだろ?」

「綺麗なの見るとね、何かね、泣いちゃうの。心がじんわりして、泣いちゃうの」

豆電球が色とりどりにチカチカ。見てると、頭の奥の方が熱くなって、涙が出てくる。

「太宰くん、太宰くんもずっと居てね?絶対居てね」

「僕に死ぬなって云うの?」

素っ気なく云われたのが悲しいのか、きらきらが綺麗で泣いているのか、もう解らない。広津さんが慌てふためいているのが見えるけど、どうにも出来ない。

「……解ったよ。居てあげる。ただし、僕が飽きるまでね」

「ん……居て……っ、だざ、く、いないと、駄目なの……」

私の異能が綺麗だって云ってくれたから。手当して、ありがとうって云ってくれたから。「私、太宰くんと居るのも、幸せだよ」

「そっか。それは善かった」

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