4.顔合わせ

『荒覇吐事件』が解決し、組織に太宰くんが正式加入してから一ヶ月。そして其処から更に、何日か経過した。

「ねえ。暇なのだけど」

「待って。森先生の宿題やってる」

「君は僕の世話役だろ?だったら主人の要求に応えたまえよ」

「そういうのは中也くんじゃないの?」

 森先生が新しい子を引き抜いたと云ってた。中原中也くん。太宰くん曰く、下僕。

「犬と世話人は違うよ。主人と衣食住を共にし、仕えるのが世話人。犬は外で番をし、主人の命令にはイエスでしか応えない」

 少し誇らしそうに解説された。

「あ、そろそろ巻き直ししないと。太宰くん、そこ座って脚乗せて」

 半日毎に石膏帯とその下の緩衝材の巻き直しをする。発疹とかの皮膚障害を予防するために。この間は腕だったけど、今回は左下肢。長椅子にちょっと偉そうに座る。似合うのが何か悔しい。

「太宰くん何時も骨折してるね」

「森さんの人使いが荒いんだ」

「この後、森先生に呼ばれてなかった?」

「そ。なんでも新しい子を引き取ったらしいよ」

「ふうん」

 見に行くかい?と誘われて、付いてくと答えた。

「あ」

 すれ違い様に太宰くんと、もう一人の子が叫んだ。そして言い合いを始める。森先生と母様は顔をしかめながら何か話してる。

「太宰くん、そんなに叫べるなら私戻ってるよ?」

「叫べるのと怪我は関係ないだろ?腹や喉を怪我してる訳じゃあるまいし」

「じゃあ俺がここで切ってやろうか?」

「はーん?そうやって直ぐ手を出す。吠えることしか知らない犬は躾なきゃ」

 売り言葉に買い言葉。言い合いをする二人は楽しそうだった。太宰くんも心なしか、歳よりも少し幼い姿に見えた。

「ほら、太宰くんも中也くんも止めなさい。女の子の居る前でそんな事するもんじゃないよ?」

 森先生が間に入って二人を止めた。太宰くんはニヤニヤしながら、中也くんは牽制を振り切ろうと騒いでる。

「……本当に此れで善いのか?新首領殿」

「善いんだよ、紅葉さん。この子達だから善いんだ」

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