2.主人と世話人

 森先生に呼ばれて本部の中にある医務室へ向かった。

「手伝って欲しい事がある」

「なんです?」

「この子の手当てと、そうだねえ、お世話だ」

 診察台に寝かされていたのは、何時だか見た包帯の子。点滴を射されて、石膏帯で左腕を固定されていた。

「お話相手?」

「違うよ。まあ、お話相手も含まれるだろうけど。此の太宰くんの、云うなれば秘書かなあ」

 ずっと私たちに背を向けてる彼の顔を見ようと、前に回り込んだ。虚空を見詰めていた。私なんて存在しないような。

「太宰くん」

 無視。目の前で手をひらひらさせても駄目。頬をつついても駄目。暫く眼を見詰めていた。其れから頭を撫でてみた。

「なあに?」

「起きてた」

「誰も寝てなんていないよ」

「じゃあ何してたの?」

「新しい自殺方法を考えてた」

「森先生、この子、可愛い」

「へ?」

 森先生が間抜けな声を出した。私は診察台に座って膝枕。直ぐに頭を乗せてきた。

「猫みたい」

「太宰くん、私は先にあの子の様子を見てくるよ」

 森先生は首領の仕事に向かった。診察室に私たち二人。

「君が私の世話役と言うことは、私の好きなように使って良いってことか」

「多分そう」

「なら決めた。好きなように使う」

 私の顔を見てにやりと笑った。


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