7-53 燦々

※問題イラスト再掲

https://kakuyomu.jp/users/mochimochinomochiR/news/16818023213107866845

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 謎の八色メンダコに惑わされつつも、それがダミー情報であると見破った俺たちは、気を取り直して謎解きの続きに取り掛かる。


「さて、これでやっと情報整理も終わったな。それで七つの絵には色々な読み方があるから、それらを頭に入れつつ共通項を皆で探していこうか」

「「「おー!」」」


 そうして皆でテーブル中央に置かれた問題用紙を囲みながら、各々が思いついたことを言っていたところ……ヤスが一つ妙案を出してきた。


「『太陽』ときたら、さっきの問題みたいに小澄さんが関係あったりして。んで他の人も――ってほら、ちょうど僕ら七人居て、絵も七枚だしさ?」

「おお、たしかに! だとすると、対の絵の『少年』は朝になりそうだな。共通項は、名前が太陽つながりだ」

「……『向日葵ひまわり』は夏恋なこ

「あー、夏に恋する花、とな?」

「……ん」

「よーしよし、んで『メガネ』は目堂さんだな。その片割れの『青空』とか『原っぱ』は……大地か? でも共通項は……なんだろ?」

「んー、俺もパッとは思いつかんな。それで残りの『麦』『ケーキ』がマメヤスになるが……うむぅ、結びつけるのはかなり厳しいかも?」

「ちぇぇ、ダメかー!」

「ま、良い線いってたけどな、ヤスっ!」

「おっ、おうよー」


 惜しくも途中で詰まったものの、良い案ではあったので、ガッカリするヤスの背をパシッと軽くはたいて労っておいた。


「──はいっ、一つよろしいでしょうか!」

「──はいっ、どうぞひなさん!」

「ふふっ♪」

「へへ」


 そこでひなたが手をピシッと真上に上げると、ノリ良く夕先生が指名する。


「それでですね……なんだか、一つの絵画のように見えませんか?」

「……絵画?」

「はい。燦々さんさんと輝く『太陽』の日差しの元で、『向日葵ひまわり畑』の中を元気に走る『少年』が浮かんできました!」


 ひなたが七つの絵を指でぐるっと囲んで、元気よくそう言った。


「なるほど、二個セットではなく、全部一緒に見るパターンか」

「……斬新ざんしんな発想」

「おお〜、他に『青空』もバッチシだね」

「ああ。ただ……『眼鏡』と『ケーキ』は、ちょっと雰囲気に合わないか?」

「あとそもそも絵画として見た時に、そこからどう関係性を導くかだよなぁ。例えば一枚絵に足りない物が答えってパターンもあるが……その特定は厳しそう?」

「むむむぅ、違いましたかぁ。やっぱり基本はペアで考えるんでしょうねぇ……」

「あ、でも何かに繋がるかもしれないし、そんな残念がらなくてもいいぞ?」

「ふふっ、はぁい♪」


 ひなたをフォローすると、まさに太陽のような笑顔が返ってきて、少し照れてしまう。……いやいや、俺は夕一筋だぞ、と思いつつ隣の夕を見れば、 


「……燦々?」


 ひなたのセリフを反芻はんすうしつつ、あごに手をかけて首を傾げていた。……もしかして、本当に正解へ繋がる情報だったのか?


「あっ! えい──んぐむにゃもにゃ」


 そして夕は何かをひらめいたようで、何か言いかけたものの、慌てて口を閉じてそっぽを向いた。……これはまた、答えが分かったけど自重したやつだな? くぅぅ、また夕に先を越されたかぁ……純粋に尊敬の念もあり、悔しさもありだな。

 それならば、少しズルい気もするが、これもヒントにさせてもらおうか。まず、夕が答えられないということは、普通の小学生には解けない問題のはずだ。あと、「燦々」に反応していたな……さんさん……サンサン……うーん、何に繋がる言葉なんだ? 


「燦々……燦々……」


 そうつぶやきながら、一つずつ丁寧に絵を眺めていくと……『向日葵ひまわり』……『麦』……『少年』……『太陽』……んん? サンと言えば、『太陽サン』や『向日葵サンフラワー』があるな? あああっ、もしかして英語にしろってことか!? それなら確かに、小学生は知らなそうな単語も混じってるな。よし、早速提案してみよう。


「……なぁ、試しに英語にして共通項探してみないか? ひらがな、カタカナ、ローマ字なんかに直すのは、謎解きで良くあるパターンだし?」

「ウンウン、色々試してみるのは、イイカモ?」


 正解にたどり着いたと思われる夕が、それとなくを装って賛同してくれたので、どうやらこの方針で合っているようだ。


「ちきしょぉっ、英単語テストが始まりやがった! 僕の苦手とするやつ!」

「逆にヤスが得意なテストってなんだ?」

「ないね!」

「知ってた」


 とは言えヤスも一応は銀高生、このラインナップなら訳せるはずだ。もし分からないとしても、少々難しい『ウィート』くらいだろう。


「ヤス、とりあえず順番に訳してみろよ」

「お、おうよぉ。最初の『向日葵』は……わからん、パス。次の『麦』は……んー、ビール? あ、ハイ、違いますよね。おっ、次はいけるぞ、『少年ボーイ』、『太陽サン』、『青空ブルースカイ』。んでメガネ……はカタカナで書くし英語だよな?」

「おうふ……」


 これは赤点も納得だ。


「部長……たぶんそれ、朝日少年にも負けてんぞ?」

「いやいやぁ、さすがにそれはないっしょ。ハハハ」


 愚かな……ヤスは問題外だし、そもそもなーこ以外全員が惨敗だっての。


「ボク、エイゴ、ゼンゼンワカンナイ」

「ほらな?」


 うん、英語で論文書いてる子が何言ってるんだろうね。


「で、僕をバカにできるマメは、当然『麦』も訳せるんだよな?」

「えーと、フラワー?」

「……惜しい……ウィート」

「おっとと、そうだった。仕入れのとき良く見るし、うっかりそっちが先に出ちまったわ」

「……牛をビーフ……豚をポーク……あるあるのミス」

「くぅ~、それなっ」


 たしかに、一番有名な商品には大きくフラワーと書いてあるので、マメの環境からすれば分からなくもない。あと鶏だけチキンなのは、食肉用が前提だからだろうか。

 そこで恥ずかしそうに頬をくマメを見て、ヤスがニヤニヤしながら茶化し始めた。


「おいおいマメさんよ、『麦』は花じゃないだろ。僕も訳せなかったけど、さすがにフラワーじゃないことは分かるぜぇ?」

「……え、部長、何言ってんだ?」


 ヤスは一体……ああ、そういう勘違いをしてるのな。


「おいヤス、マメが言ったのは花の方のflowerフラワーじゃなくて、小麦粉の方のflourフラワーだ! 見てるこっちが恥ずかしいから、ドヤ顔であおるんじゃねぇ!」

「え、なにその紛らわしいの!? ……粉だけに?」

「おお上手うま――くねぇ、漢字が違う!」

「おっとぉ、漢字も紛らわしいってなっ?」

「うっせえわ! まったくオメェは……そんなんじゃ次の試験も英国赤点──ん、待てよ?」


 そこであることに気が付いたので、すぐに問題用紙を手元に寄せ、絵を順番に確認していくと…………お、お、おおお、これだっ! ついに見つけたぞ!


「……どした? なんか嬉しそうだけど、赤点地獄の僕を見て楽しむのはどうかと思うよ?」

「いや、んなこたぁどうでも良くてな」

「どうでも良くありませんがぁ!?」

「はいはい。でだ、共通項が分かったぞ」

「え、まじか!?」「にぃちゃん、すげー!」「うむ、さすがは宇宙こすもだ!」


 そうして皆が期待の目を向けてくる中、俺は答える。


「その共通項とは――」

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