7-52 面蛸 ※挿絵付
ミッションクリアかと思われた謎解きイベントだが、テントで見つけた宝箱には鍵がかかっており、俺たちは鍵番号を入手すべく最後の謎解きに挑戦することとなった。
「それじゃ、誠に遺憾ながらヤス爆散開錠作戦は延期として、真面目に謎を解こうか」
「ぼかぁ大地が遺憾なことに遺憾だよ……しかも中止じゃなく延期なのね……」
「そりゃまぁ、やむを得ない時は、な?」
「……頼りにしてる」
「おうよ任せな──っとはならないかなぁっ!?」
「……ふふ」
茶番を終えて各自が定位置の席に着いたところで、まずはと丸められた問題用紙をガラスの筒から抜き出し、テーブルの上に広げてみる。そうしてB5サイズ程となった用紙には、これまでのような謎解き文は書かれておらず、代わりに複数の絵が並べて描かれていた。
(挿絵:https://kakuyomu.jp/users/mochimochinomochiR/news/16818023213107866845)
「ほぉ、最後はイラスト問題ときたか」
「おおー、ワクワクするなっ、にぃちゃんっ!」
「だなっ」
隣で目を輝かせて片腕を突き上げる夕は、相変わらず可愛らしくも頼もしくもある。
「うふふ、どれもなーこちゃんらしい、とぉってもキュートな絵ですね♪」
「それに素晴らしくお上手で……んんん、さすがは一色さんッス!」
「……夏恋は多才」
「えっへん」
「……料理以外は」
「さ~や~ちゃ~ん? もぉ〜、そんなこと言ってないでぇ~、早く解きなさ~いっ!」
「……うい」
なーこに急かされて問題用紙を確認すると……まず正方形の枠が横に二個
「それでこれは……上の三組の絵の関係性から推測して、四組目の『ケーキ』と対になる物を考えるってことかな?」
「……連想クイズ?」
「ええ、きっとそうですね!」
「やったぜ、それなら僕にもできそうだ! ここまでのクッソ難しい問題文のやつより簡単なはずっ!」
「いやぁ、どうだろうなぁ……」
簡単どころか、むしろ今までで一番難しい可能性が高い。だって、最後に待ち構えているラスボスが一番強いものだろう?
「それじゃまずは……取り違えがないように皆で情報確認しようか。一組目は『
皆が褒めていた通り、なーこの画力はかなり高めなので、読み取るのに苦労しないのが幸いだ。もし夕がこれの出題者だったら、
「んー、確かに『子供』なんだけどさ、野球キャップに半袖短パンときたら、僕は『少年』でいいんじゃないかなーと?」
「……そう、だな。うん」
今日は男装幼女と一緒に居るせいか、「服装で男子と決めつけるのは早計では?」とつい思ってしまった。そのお隣の朝夕くんちゃんも、一瞬だけ肩をピクッとさせて動揺している。
「オレはそうだなぁ、『青空』の絵は『原っぱ』でもいいかなと?」
「あー、上下で半々くらいだし、確かにどっちとも取れるよな」
「それと小さいですけど、『雲』や『花』の可能性もありますね」
「うむ。全部頭の片隅に置いておこう」
発想力も試される問題のようなので、こうして色々な視点で見ておくことが重要だ。
「『空気』ってのはどう?」
「んん? 朝はどの絵のことを言って…………ああっ、最後の空欄か! 見えざる物の再来って訳だな?」
「そそ」
いやぁ、さすがは夕、本当に鋭い着眼点だ。
「でも解き方自体が変わるし、後回しかなー?」
「えーと……鉄人、どゆこと?」
「ああ、朝は『ケーキの対になる物が答え』でなくなることを言ってるんだ。例えばだな……四組からそれぞれ情報が得られる、さっきのチューリップみたいな解き方になるか。んで両方の解法で同時に考えるには情報量が多すぎるし、まずは空欄として答えを探ってみて、行き詰まったらこっちも試してみよう――ってとこだろ?」
「うんっ!」
「ほへぇ~、以心伝心じゃん?」
「へへん。ボクらすっげー仲良しだもんな、にぃちゃん♪」
夕がとても嬉しそうに答えるのを見て、俺も嬉しくなるというものだ。
それにしても、次から次へと色々な意見が出てくるもので……夕風に言えば、六人寄ればW文殊の知恵、ってところか。
「よーし、他には無いか?」
「……『太陽』は『梅干し』」
「なるほど梅干し……え、梅干し? お、おお……? 言われてみれば確かに、小梅に見えてきた、かも?」
「……冗談」
「絶妙に本当くさい冗談はやめようか!」
「……ふふ」
少々怪しい意見も出てくるが、これもチームプレイの
「まぁ、流石にこれは『太陽』ってことで……ん?」
この『太陽』の枠だけが、僅かに太い……ような気がする。
「どった、大地?」
「……なんでもねぇ」
俺の目の錯覚かもしれないし、それに手書きなら多少のブレくらいは出るだろう……そう思って、ひとまず置いておくことにした。それよりも今は、もっともっとアヤシイ物を確認しなければならない。
「あとはなぁ……このサインと謎の絵、だよなぁ」
「……それ」
全ての枠の右下には
「七つのイラストだけで正直手一杯だし、ただのオマケと思いたいが……そうはいかんか」
「まぁ、どう考えても合わせて解くんだろうな」
「……この問題……情報量多すぎ」
まさに目堂がぼやく通りで、情報を一通り確認するだけでも一苦労だ。
「んでさ大地、この妙にカワイイ謎のナマモノは何なんよ? アメーバとか?」
「いや、アメーバにはこんなカタツムリみたいな触角は無かったような。じゃぁ何だと言われたら、俺も分からんのだが…………ああそうだ、お花博士なら知ってるんじゃ?」
ひなたは将来医学の道に進むとなれば、草花だけでなく生物全般に詳しいのかもしれない。
「あっ、はい! こちらは深海のラブリーアイドル、メンダコさんですね。体長は二十㎝程度の手乗りサイズ、その触角に見えているのは実はヒレで、ぱたぱたさせて泳ぐのがとぉってもキュートなのです! 寿命が短く飼育も難しいので、運が良ければになりますが、水族館でも見られますよ」
「おお、さすがはお花博士――いや、生き物博士だな!」
「えへへっ、昇格しちゃいましたぁ♪」
ひなたはピースサインをチョキチョキさせて喜ぶと、さらに有益な追加情報を提供してくれる。
「それでこのメンダコさんの絵は、なーこちゃんがたまに描かれるのですが、これはデフォルメ自画像……なのですよね?」
「だよぉ~!」
「あー」
言われてみれば確かに、ショートヘアーから癖毛が二房クリンと飛び出しているなーこの特徴を、このUFO型の体と
「それで……現実のメンダコも、こんな多種多様な色をしてる訳だな?」
「いえ、基本的に赤色ですよ」
「え……じゃぁ何でこんな色に……? タコは足が八本で、それが八色あり、枠も八個、完成時には絵も八個……これらを結ぶものを、探していく……のか? まじで?」
「やべぇ、情報量が多すぎてオレの頭じゃパンクしそうだ……」
「ハハッ、僕はとっくにパンクしてるぞ!」
押し寄せる謎のオンパレードに、皆の情報整理が全く追い付いていない状態だ。これは早くも難航する予感しかしないぞ。
「えーと、私の勘なんですけどぉ」
そんな中で、ひなたがそう前置きすると、
「カラフルでカワイイからだと思います!」
あまりに予想外の理由を告げた。
「え、カワイイ、から?」
「はいっ! 万国共通の、Kawaii、です♪」
「……ありえる」
「ええっ!? いやいやいや……」
そんなバカなとは思いつつも、なーこを良く知る親友の目堂まで同意しているので、念のため本人に確認してみることにする。
「そ、そうなのか?」
「だよぉ~!」
「まじかぁ……」
まさかの、本当に、ただカワイイからという理由だった!
「だって自画像なんですから、可愛くオシャレしたいですよね?」
「「「ね~♪」」」
「……なる、ほど?」
仲良くハモる女性陣を見て、これも乙女心というヤツなのだろうと、ひとまず納得しておく。
んー、ちょっと待てよ……そうなってくると、この絵の謎解きとしての役割は一体……?
「なぁ、もしかしてだけどさ、このメンダコの絵……謎解きとは全く関係ない、とか?」
「だよぉ~!」
「なん、だとぉ!?」
なんて恐ろしい罠だ……危うくこのダミー情報の謎が解けずに頭を抱え続ける羽目になるところで、この序盤に確認できたのはまさに
そう考えた俺は、今一度気を引き締め直して、目の前のラスボスに
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大昔に掲載したメンダコとなーこちゃんの絵です。
https://kakuyomu.jp/users/mochimochinomochiR/news/16816700427021084725
(2/9)いただいたコメントより着想を得て、真ん中あたりを後日加筆いたしました。如水様、素晴らしいアイディアをありがとうございます。
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