7-54 連想
※問題イラスト再掲
https://kakuyomu.jp/users/mochimochinomochiR/news/16818023213107866845
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「英語の同音異義語だ」
ヤスとのやり取りの中でイラストの共通項に気付いた俺は、こちらへ注目してくる皆へ端的にそう告げた。
「えーと、ドウオンイギ――何だっけそれ?」
「部長、同じ読みで意味が違う言葉――
「へぇ、英語にもそういうのあるんだなぁ~」
「あのぉ大地君、私には各組が同音の関係には全然見えないのですけどぉ……?」
「オレもだ。『
「……説明希望」
どうやらこれだけでは、夕以外はまだピンと来ていないようだ。
「ああ。俺たちは『
「……たしかに……キツイお題」
他称神絵師も渋い顔をするほどなので、文字も無いシンプルな絵だけで素人が伝えるには、やはり原料の『麦』を描く以外に手がなさそうだ。
「そうすると、どっちも読みがフラワーの同音異義語という共通項ができるんだ。んでその流れで二組目も見ると、『
「そういう事だったか!」「……納得」「わぁ、さすが大地君、
すると周りから大きな拍手が上がったが、素直に喜び辛いところはある。夕のヒントとマメヤスのラッキーミスあってこその
「そうなると……三組目は右の『眼鏡』が確定してるし、英語にしてみると『
「それな、俺も怪しいとは思ったんだが、かと言って他に適切な単語が無いんだ。んでこれは、日本語の発音で同じ、カタカナ表記で同じならアリ――言ってみれば、広義で同音の異義語って解釈でどうかと? ルールさえ明確なら、謎解きとして別に問題はなさそうに思う」
「ふーむ、それならアリっぽいな」
マメ以外も納得顔で
「ふっふっふ~。よろしですし~♪」
「よしっ!」
さらに親切なジャッジが正解だと告げてくれたので、これで安心して前に進める。
「……最後まで難問」
「ええ、本当にむつかしいです。同音異義語が共通項と先に分かっていると、絵もそのように見えてきますけど、絵単体からはなかなか思いつきませんよねぇ……」
そう、それがこの謎解きの肝なのだろう。『息子』や『花』や『小麦粉』と明確に文字で書かれていれば、すぐに誰かしらが共通項を思いつくところだが、こうして絵という抽象的な表現をされて解釈の幅が広がると一筋縄ではいかなくなるのだ。さすがはなーこ、上手く難易度を上げてくるなぁ。
「んじゃ、もうゴールも目の前、ケーキと同じ読み方をする単語を探すだけだな! ケーキ……ケーキ………………ダメだぁ、僕の英語力じゃ思いつかん!」
ヤスが頭を抱えてガックリしているが、周りも渋い顔をするのみで……少なくとも俺たちが知る程度の単語にはなさそうだ。
「そうなると、この絵の読み方が『ケーキ』じゃないってことか」
「――あっ! それでは上に乗っている『
「……ん、確かに……もし取られたら」
「戦争だぞっ!」
「だ~ね~?」
女性陣四人が頷き合っている。なるほど、たかが苺と思ったら大変なことになるらしい。もし夕と苺ショートを分ける機会があったら、間違ってもこちらに苺を持ってこないように注意しよう。
「……それで、
再び
「……なぁ大地、ジュースとか飲む時の『ストロー』はどうだ?」
「んー……いや、同一の単語だし、同音異義語じゃないな」
「え、苺とストローなんて、僕には全然違う物に見えるんだけど?」
「そもそも
「へぇー、なんか面白いな! こういう話だったら、英語の授業も真面目に聞けるのにさ~」
「いやいや、ついこの前の授業でグリーン先生が言ってた話だっての。どうせテメェは寝てて聞いてなかったんだろ!」
「たはは」
残念ながら今回のスーパーヤスは不発、発想系とは違って知識系の問題は期待薄のようだ。
「苺じゃないとしたら……『生クリーム』とか『スポンジ』、ないとは思うけど『皿』なんて?」
「うーん……どの単語も該当無しな気がする」
「ふぉっふぉっふぉ〜、ここまでに出た中には〜、ないのぉ〜?」
試しに絵にある物を
「あっ! 麦が実は小麦粉だったみたいに、描いてある物そのままを指してないヤツとか?」
「おお、それだ!」
「……ありえる」
マメの閃きに、皆が顔を明るくして頷く。
「ははん、つまり連想ゲームのパターンか? 僕に任しときなっ!」
発想系の話となってヤスが調子に乗っているが、ここまでの戦績を考えると、割と期待できる。
「ええと、苺のショートケーキと言ったら…………『お祝い』、『誕生日』、『ご
「ヤス、それだっ!」
「セレブかっ!」
「ちげーよ!
「へえぇ、砂漠もデザートなんだな。じゃぁこれ、アタリっぽい?」
「おう!」
この絵の表題として『デザート』と書かれていても何の違和感もないので、これが正解で間違いないだろう。それに、『草』と『眼鏡』という正確には同音異義語ではないペアをわざわざ選んだのも、この『デザート』と『砂漠』を成立させるルール作りのためだったと考えれば、ちょうど
「それで『砂漠』が答えで、入力するのは三桁の数字となると……単純に考えて『389』かな?」
周りに意見を聞いてみると頷きが返ってきたので、『389』以外の読み方はなさそうだ。
「ん……」
「どうかしたか、朝?」
「いやっ、なんでもないぞっ!」
この夕の妙な反応からすると、『389』以外の選択肢も見えているのかもしれないが……残念ながら俺達では見つけられそうにない。ただ、三回もチャンスがあるので、もしダメだった場合はまた考えれば良いだろう。
「よし、じゃあこれで入れてみるぞ」
数字の下のボタンを押して『389』と入力し、パネル下の『解』ボタンを押すと……
ブブー!
パネルから低音のブザーが鳴った。念のため箱の
「くぅ、ハズレかぁ……」
「あ~ダメだぁぁ、こんなの僕には解ける気がしないよっ!」
「……ラスボス強過ぎ」
ここまでも難問
「はいっ、もっかい考えてみよぉ~! だいじょぶだいじょぶぅ~、みんなは~ここまで来られたんだから~、ね? 力を合わせればぁ~必ず解けるよぉっ! ふぁいと~、おー!」
「うおおーー、頑張るッス!!!」
名幹事なーこが元気良く励ましの声をかけてくれて、意気消沈していたメンバーの顔が明るくなった。特に約一名が異様に元気になった模様。
「(……だよな)」
そうして活気付いた中で、隣の夕が難しい顔をしてボソッと呟いており……やはり『389』ではないと気付いていながらも、小学生知識では説明できないから黙っていたのだろう。夕の解読速度が早すぎてなかなか追いつけないが、俺もカッコイイところを見せられるよう頑張らないとだな!
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