7-55 太陽  ※挿絵付

※問題イラスト再掲

https://kakuyomu.jp/users/mochimochinomochiR/news/16818023213107866845

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 一回目の解答『389』は残念ながら不正解となったため、ひとまず俺たちは情報整理と方針確認をすることにした。


「外れちゃいましたけど……これは、『砂漠』の読み方が『389』ではなかった、で良いのでしょうか? そもそも『砂漠』自体が間違っているのかもしれませんし……」

「左右の枠が同音異義語の関係なのは、なーこから『よろし』を貰って確定してるし、『デザート』と『砂漠』はその条件を完璧に満たしてる。そこは疑わない方向でいこうか」

「あっ、それもそうですね。それでは、『389』以外の読み方を探しましょう!」


 少々裏技を使わせてもらうと、読み方を確認している段階で夕が悩んでいたこともあって、その線が濃厚と踏んでいる。


「とは言ってもなぁ、そう簡単に見つかりそうにないぞ?」

「んー、もしかして、俺らがヒントを見逃してるとか?」

「……ありそう」

「ええ、絵からまだ読み取れることがあるかもしれません!」

「よし。んじゃここで一回初心に返って、広い視点でヒントを探してみよう」

「「「おー!」」」


 早速と俺たちは、全ての絵を一つ一つ注意深く見て、他にも隠れた共通項がないかなどを確認していった。だがしかし、同音異義語のような決定的な条件は見つからず、一同困り顔になっていく。


「んー、ひと組なら色々と共通項があったりするけど……」

「全部で成立させるのは難しいですねぇ……」


 そうして俺もアイディアが浮かばない中、問題用紙全体を眺めていたところ……ふと、『太陽』の枠だけ微妙に太く感じたことを思い出した。最初は気のせいだろうと放置していたのだが、いま一度注意深く見てみると……やっぱり太い気がする。


「なぁ、『太陽』の枠だけ絶妙に太いように見えるんだが?」

「それ! 僕もそんな気がしてたんだ」

「えと……わわわっ! よぉ〜く見てみると、ほ~~んのちょっぴりだけ太いですね!」

「……確認する」


 目堂がそう告げて用紙を手元に引き寄せると、顔を近付けてこう告げた。


「……0.2㎜太い……デジ換算で1/2pt」

「ちょっ、目堂さんはそこまで分かるの?」

「……普段描き分けてるし……注視すれば分かる」

「おおお~、やっぱ神絵師はすげぇんだなぁ!」

「……違うって言ってるのに……大袈裟」


 そう文句を呟きつつも、ヤスに褒められたのが嬉しいのか、照れ顔で口元をムズムズさせる他称神絵師さん。


「ええとこれは……貴重面ななーこちゃんのことですから、ブレではなくて、あえて太く書いてますよね?」

「……ん」

「よーしっ、これが謎解きの最後の鍵になってるのかもしれんな!」


 新たな切り口を見つけたので、早速と皆でその意味について考えてみる。

 うーん、『太陽』だけが太い理由、か。太陽と言えば、ひなたの比喩……なーこがひなたを好きだから、はいくらなんでも違うよなぁ。


「……そういや鉄人、さっき言ってた『空気』は?」

「あー、ここまでくると、もう関係ないと思うぞー?」

「そっかー」


 ん、『空気』か……太陽といい、どっかで聞いたような――ってあああ! な〜るほど、復習問題かっ!


「分かったぞ! さっきみたいに、あぶり出ししたらいいんだ!」

「「「おおー!」」」


 すると周りから歓声が上がったのだが、意外にも夕まで驚いた顔をしており……どうやらこれは、夕もまだ解けていない謎だったようだ。よっし、こいつは嬉しくなるってもんだな!


「合ってるかは分からんが、まずは試してみっか」

「だなっ! あ、でも大地、どこをあぶるんだ?」

「ん、そうだな……」


 先ほどの問題の設問文とは違って、枠や絵の配置がズレていることもなく、余白も含めて綺麗に整列されている。そこで今一度『太陽』の周りを見ると、ちょうど下には『眼鏡』……なるほど。


「右の枠を縦で見ると、『太陽』の下に『眼鏡』、さらに『空欄』って続いてるだろ。太陽光を眼鏡で収束させて、空欄に当てろって意味じゃないか? それにこの仕掛けが最後の鍵になってるんだろうから、そういう意味でもここが一番怪しい」

「ほんとだ。言われてみれば、これ見よがしに並んでる……くぅ、なんで気付かんかったかなぁ、オレ!」

「よっしゃ、早速あぶってみよ──ってなわけで目堂さん、ちょっと借りていい?」

「……ん」


 眼鏡を受け取ったヤスとテントの外に出て、空欄部分に上手く太陽光を集めていくと……


「「ヨシキタァ!」」


 予想通り隠された絵が浮き上がってきた。


「やったな、大地!」

「おうよ!」


 ヤスとハイタッチを交わすと、テント内に戻って皆と絵を確認してみる。


(挿絵:https://kakuyomu.jp/users/mochimochinomochiR/news/16818023214019444487


 その空欄内には、同サイズの円二つが縦方向に三割ほど重なって配置されており、それらの重なり部分のみが塗り潰されていた。


「……大地、これ何?」

「普通にベン図では? 縦向きなのはナゾだが」

「えっ、ベンツじゃなくてアウディじゃね?」

「車の話じゃねぇよ! ……まぁ、似てっけどな」


 あのエンブレムは円四つのベン図に見えなくもないが、さすがに関係ないだろう。


「車じゃなかったら、何だよ?」

「数学で使う図形だ。円の重なってる部分が塗られてるから、二つの集合ABの共通部分AかつBを指してる」

「集合……かつ……僕にも分かるよう頼む!」

「ったくオメェはよ……」


 数学に興味ゼロのヤスにベン図の説明をするには……これか?


「例えばな、左の円に黒髪ロングの娘、右の円に寡黙系メガネっ娘がいっぱい住んでるとするだろ? そんでお前がこの共通部分に行ったら?」

「黒髪ロングの寡黙系メガネっ娘とイチャイチャできる!」

「そういうことだ」

「いいのか、そんな欲張り!?」

「それがベン図の力だ」

「ベン図様すげぇ!」

「「「ぷふっ」」」


 ヤス用の雑な説明を聞いて周りが吹き出す中、目堂だけはソワソワと落ち着かないご様子で……もちろんそれを狙ってこの例を出している。それでなーこっぽい事をしてしまったなぁと思って隣を見れば、にこやかにサムズアップを返してきた。どうやら本家様にもご満足いただけるお節介を焼けたようだ。

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