7-34 忖度
※問題文再掲
『Aは甘く、Bはやや甘く、Cはかつて甘く、Dは在らず。Cに十二、Bに十五、Aに二十一、Dに二十三、Aに八、Cに二十四、Bに十四、Dに六、Aに七、
―――――――――――――――――――――――――――――――――
「てわけで、甘いのを探してみたらどうよ? なっ?」
「ふむ……」
ヤスの謎発言に周りが困惑する中、その意味を考えてみる。甘いのを探す……食べ物と方角……ああ、そういうことか。
「つまりお前は……味は方角に直結しているのではなく、方角を示す食べ物を特定するための補助的なもので、方角に関する甘い食べ物を連想すれば良い、そう言いたいんだな?」
「そう、それ! 翻訳あざっす!」
無事にヤス語を解読できたようで、サムズアップが返ってきた。
「翻訳が要らんように
「ははは、スーパーヤスさんに任しときな!」
「言ってろ」
ヤスの調子の良いところは相変わらずだが……やはり発想力は侮れないものがある。これで基礎学力もあれば、相当の切れ者になるはずなんだが。
「……名コンビ」「だなー」「ですね!」
俺らのやり取りを見ていた周りが、何やら温かい目をしてウンウン
「あっ、はいはいっ! 各方角の地域で有名な甘い食べ物を探す……なんてどうでしょうか?」
そこでひなたが元気良く手を上げて、そう提案してきた。
「各方角の地域か……それだと、どこを基準にした方角って話にならないか? 仮に日本全体を
すぐに俺もこの案に思い至ったが、そういう理由で外したところだった。
「はうぅ、そうですよね……私なんかがでしゃばって、しゅみません……」
「いやいやいや、どんな
俺の指摘にしょんぼりしてしまったので、慌ててフォローする。対うさちゃんでは、対ヤスより優しくしないといけないのを忘れていた。……だからなーこよ、お願いだから
「――うぉっほん。しょうがないのぉ~、ちょこっとだけ~ヒントを出してしんぜよぉ~?」
そこで難問に行き詰まる俺たちを見かねたのか、謎の老師が助け舟を出してくれるようだ。
「……マメ君は気付きやすいかも~じゃぞぉ~?」
「え、そうなんですか!?」
なーこに指名されて、嬉しそうにするマメ。
それでマメにとって有利な問題となると…………うーん、どゆこった?
「――あっ…………こすもさん、ちょっと紙を見せて」
そこへ夕が小さく声を漏らすと、次いで俺が手に持つ問題文の書かれた紙を指差してきた。
「ん? ほいどうぞ」
「ありがと…………………………ああ、そういうこと」
夕は渡された紙を読んで少し考えると、ボソリと
「何か分かったのか?」
「…………なんでも、ないぞ」
夕は明後日の方へ向いて言葉を濁すと、紙を返してきた。……ああそうか、夕はもう答えに
えーと、マメがヒント……マメと言えばなーこが好き――は流石に関係ないだろうし……食べ物となると、野菜? 東西南北で野菜………………おお、おおお! そういう
「分かった。Aは――」
いや待てよ……マメに有利な事実と、それをわざわざヒントとして言ったことからして、これは野菜のお礼を兼ねたマメ接待用の設問なのでは? だとすると俺がでしゃばるのはあまり良くないかも――そう思って言葉を飲み込んだ。そこでさり気なくなーこに視線を送れば、それに気付いてヨロシイとばかりに頷いてきたので……やはりそういう意図のようだ。いやぁ~、気遣い上手の名幹事だねぇ。そうなると、夕が途中で濁したのも、俺と同じくマメへ遠慮したのもありそうだな。
「……で、Aは?」
口を開けたまま静止していたので、ヤスが続きを促してきた。
「…………なんでも、ないぞ」
「おいおい大地、また鉄人とお揃いか? お前らほんっと仲いいな!」
「「え!?」」
言われてみれば、同じ考えに同じ言葉と、またもやお
「ははは、そう見えるかぁ?」「そ、そおかな? えへへ」
「んー? なんだよ、二人ともやたら嬉しそうじゃん」
夕と似てるとか仲が良いとか言われると、凄く嬉しくなってしまう。出会った頃に同じような状況で夕が喜んでいたが、今ならその気持ちが分かるというものだ。
「……三角関係?」
「「なんでや!」」
「……
目堂の爆弾発言に対してヤスとツッコミを入れると、満足げな頷きが返ってきた。どうやらまた俺らの漫才(?)に混ざりたかったようで……ほんと変な子だよなぁ。
「うーむ、甘い食べ物……方角……東西南北……んっ? たしか店の商品札で見たような…………? ――ああっ、あれかっ!!!」
こちらが無駄にワチャワチャしている間にも、マメは精一杯頭を絞っていたらしく、ついに答えに思い至ったようだ。
「一色さん、解けましたっ!」
「おお~? マメ君~答えをど~ぞ~?」
出題者のなーこと、すでに正答へ辿り着いている俺と夕は、マメへと期待の目を向けた。
「はい! Aは――」
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