7-31 順序
美味しい料理を囲んでの
それで早速と俺は大量の食器や調理器具を持つと、BBQテーブルから少し離れた洗い場へと運び、シンク内に積み上げていく。
「……ヨイセっと」
一往復半してあらかた運び終えたところで、背後からパタパタと足音が聞こえてきた。こちらへ駆けてくる人物を見ると……Yシャツ、サスペンダーハーフパンツ、キャスケット帽、肩掛けポンチョ、サングラスを身に着けた世にもアヤシイ美少年の
「ハイッ、これで全部だぞ」
「りょ」
夕が運んできた残りの洗い物を受け取ってシンクに積むと、見事な食器タワーが出来上がった。
「うーん、七人分の食器にフライパンやらなんやらで、すげぇ量……まるで昼時の学食の
「ふふっ、食洗機があれば……なんて無いものねだりしてても仕方ないし、ちゃちゃっと終わらせるぞー!」
夕は俺の隣に踏み台を置いて上に立つと、そう言って
「謎解きイベントが待ってるもんな?」
「うんっ、それ! めっちゃ楽しみっ!」
ワクワクオーラを噴出してはしゃぐ夕は、まるで幼い少年のようで……要は見た目通り。
「……ああ、俺もだ」
「だよなっ!」
もちろん俺が参加者として解くことも楽しみではあるが、実はもう一つある。これはなーこが作った難問を夕が解く――つまり我らが誇る究極のリケジョ二人の熱い対戦カードであり、見る側としても楽しめるに違いないのだ。ただ一点、夕は小学生のフリをしないといけないので、全力で戦えないのが少々残念だが、こればかりは致し方ない。
それで夕のためにも雑事をさっさと終わらせるべく、俺は早速とシンクの食器を手に取り洗い始めた。
「ハイッ」
「ホイッ」
「ハイッ」
「ホイッ」
特に示し合わせた訳でもないが、俺がスポンジで洗って隣に差し出すと、受け取った夕が布巾で手早く
「ふふっ。楽しいな、こすもさん」
「ん、そうだな」
普段なら煩雑なだけの洗い物作業も、好きな人と一緒にすれば楽しい……夕もそう思っているのだろう。もちろん、どちらも口には出せないのだが。
そうしてテキパキと作業を続け、シンク内のタワーが低くなってきた頃、正面の壁の向こう側から大きな声が聞こえてきた。
「うおおおスゲー、コゲがめっちゃ簡単に落ちる!」
「ほんとだ……昔BBQした時は、この作業がマジでダルかったんだけどなぁ」
「それよ。いやー、さすがは鉄人、後片付けも一流ってか?」
「ああ、料理関連であの少年に勝てる気が全くしない」
いつの間にか反対側の洗い場にマメヤスが来ており、担当となったクソ重い鉄板と金網を洗っているようだ。
「……だってさ、鉄人殿?」
「ふふん、さっき鉄板のコゲと油の落とし方を伝えてきたんだ。ポイントはお湯と重曹」
ピッと人差し指を立てて、少し得意げに語る夕……ああ、そんなところも可愛いなぁ。
「あと網の方も、焼く前にお酢を塗っておいたし取れやすいはず」
「へぇ~」
おばあちゃん――いや、幼女の知恵袋?
「朝は料理のことなら何でも知ってそうだな」
「そ、そんなことないぞ……作るのだって、まだまだだし」
「いやいや何言ってんだ。すっげー美味かったぜ、いつもど――っごほん!!!」
「……いつも?」
「あー、その、いつも、家とかで作ってるのか?」
あっぶねぇぇ、うっかり「いつも通り」と言いそうになってしまった。ボロを出さないよう注意しないと……ってか、夕はいつまで男の子のフリする気なんだ?
「……えーと、うん! 男なのに意外って思うかもしれないけど……ボク料理大好きなんだ!」
「ヘエ、ソウナンダー」
もちろん、よーく知ってるともさ。
「あれだな、好きこそものの上手なれってやつか」
「んー、ちょっと違って、逆かも? 最初は別に好きでもないし、全然下手っぴだったんだけど…………じ、実はボク、大好きな人がいて……その人が美味しそうに食べてくれる顔が見たくて、毎日すっげー練習したんだ。それで少しずつ上手くなって、料理自体も好きになった感じ、かな? だから『好きこそ』は料理がじゃなく――んうぁ、言ってて恥ずかしくなってきたぞぉっ!?」
なるほど、順序が逆と……そういや以前に、未来の俺を喜ばせるために練習したと言ってたっけ。あと、現在の一流
「ふ、ふーん? そんな尽くしてもらって、その
「そう思うか!?」
「お、おう」
これは割と本音だったりする。未来の自分に嫉妬……というのも妙な話だが、少しだけモヤっとはしてしまうのだ。
「へへへ、やったぞぉっ!!!」
夕は持った布巾をブンブン振り回しつつ、満面の笑みでそう叫ぶ。
まったくお前は、こんな
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