7-26 撮影
メンバー全員が
ややあってパエリヤ以外の準備が整ったので、皆が自前の飲料を持って席に座った。クレープの時と同じ順で、俺の右隣から時計回りに夕(立って調理中)、俺、ヤス、マメ、その対面になーこ、ひなた、
「――よーし、完成だっ」
「おお~!」「鉄人の技だなっ!」「キレイだねぇ~!」「まぁ素敵!」
そこで夕がパエリヤを中央付近に置けば、周りから大歓声が上がる。先ほどまではただの紅一色のお米だったが、エビなどの魚介類や串切りレモンにアクセントの三つ葉など、色とりどりの具材が芸術的に盛り付けられており、完璧なパエリヤの顔に仕上げられていた。……うーん、なぜこれだけの盛り付けセンスがあって、画力が絶望的なのか謎だ……微妙に違う才能なのかなぁ。
「ほんとはご飯取り分けてから、各自で具材乗せた方が楽なんだけど……見栄え重視というか、パエリヤっぽさも大事だしな?」
「さっすがあっさ君~、分かってるぅ!」
俺がノリで作った時のパエリヤは、ザ男料理といった雑な見栄えだったし、こうして完璧なお手本を見せてもらえて良かった。
「よぉ~し、食べる前にぃ~、皆で記念写真~撮ろぉ~!」
「おっ、いいじゃん!」
「撮りましょう!」
「そいじゃぁ~、みんな串持ってぇ~」
なーこは程よく焼けた串を、ホイホイと順に手渡していき、
「あっち~見てねぇ~?」
テーブルから三mほど離して設置された、三脚付きの立派な一眼レフカメラを指差す。……え、いつの間に用意してたんだ?
「おお~? あっさ君~、そこ切れちゃうからぁ~、もっと寄ってねぇ~?」
「……ん?」
位置的に普通に入るんじゃ……と思ったところで、
「おー、分かったぞ。――えいっ♪」
「ちょっ……」
隣の夕が身体を寄せて、ぎゅうっと腕を絡めてきた! あーもう、突然来られるとドキドキするからヤメテ! ――いや、突然じゃなくてもだけど!
まったく、なーこは全力で楽しんでやがるな……と思っていたら、
「じゃ~、3・2・1・だいちぃ! で撮るね~?」
「……は?」
今度もまた良く分からないことを言ってきた。
「「「おっけーい!」」」
「まじかぁ……」
い行で終わるからって、人の名前を勝手に使うんじゃねぇよ。あと皆ノリ良すぎだろ……これがBBQパワーか。
なーこは満足げに
「よ~し、用意はいいかなぁ~? 3! 2! 1!」
「「「「「「「だいちぃ!」」」」」」」
パシャッ!
串を掲げたりピースしたりと、各々のポーズで撮影された。
「――ぷふっ。一斉にだいちて……おもろ」
「
「あだっ」
無礼者をシバいて、周りからクスクスと笑いが
パシャッ!
再びシャッター音が鳴った。
「えっ?」
「
驚いてなーこを見れば、イタズラが成功した子供のような顔をして、パチリとウインクを返してくる。……なるほど、皆の自然な笑顔を誘うためにも、こんな妙な掛け声にした訳か。まるでプロのスタジオカメラマンが使うような撮影テクニックで、人心の把握と誘導が上手いなーこだからできる妙技だな。
「うふふっ。なーこちゃんってば、お上手ですね♪」
「えへへ~」
しかも、先ほどのチンピラ撃退用に撮った時の恐ろしいセリフを、今度は皆を楽しませるという真逆の意味で言っており、ひなたが言うように二重の意味で上手いものだ。まったく、お前さんは大した名幹事だぜ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます