Interlude The eyes in the sunshine (1)
我々手芸部は、ひ~ちゃんこと
そこでふと
そうして思考を巡らせつつ、わたしは手元の
そうして
「!?」
正面六メートルほど先に積まれた荷物、その陰となる窓辺りから音が聞こえた気がした。
即座に四人の様子を
その彼女の向けた目線の先は、わたしが聞いた正面方向と一致しており、部屋の隅角部に位置する窓だ。ただしそれは、荷物が邪魔なため普段開けることがなく、さらに先日の台風で鍵が破損したままのはずである。……うーむ、やはり学校任せにせず、わたしが直しておくべきだったか。とかく組織と言うものは、三社見積もりだの承認決済だのと、費用が生ずる案件の動きが遅過ぎる。
ここまでの情報から、わたしはまず音の正体について思考を巡らせる。窓は山に面してはいるが、これまでに何かが飛来して衝突してきたことはなく、ましてそれが都合よくその鍵がない窓に当たるとは偶然にしてはでき過ぎている。すると人為的なものとなるが……窓の外は校舎外周となる小道があるものの、そこを通らなければ行けない場所は存在せず、加えて今の季節は山から襲来する虫で誰も好き好んで通らないとなれば、偶然通りかかった可能性はほぼない。したがって、誰かが確たる目的を持ってあの窓を開けたことになり、その目的として一番高いのは……わたし達を
では次に、その不届き者の正体と動機について確認。最近ストーカー被害が急増していると聞いており、外部犯の線もあるにはあるが、まずは今特有の状況に起因していると見るべきであろう。すなわち、転校生であるひ~ちゃんの存在に起因しており、その彼女が目当てとなれば内部犯、さらに言えばクラスメイトが第一本線、次点で
そこで先ほどのひ~ちゃんの話、さらに脳内プロファイリング帳とも照合すると、犯人は……宇宙君が濃厚筋――九割以上と言ったところか。だが、彼は用心深く頭もキレるので、このような下手を打つとは到底考え難く、そもそも開けた際に窓の立て付けの悪さは判るはずであり、閉める際に気を払わないのはあまりに不自然だ。ともなれば、別の者が閉めた……彼の唯一の友人で
さて、事前考察も済んだところで現場検証に向かいたいが……宇宙君達説はあくまで推測であり、危険な変質者や別の線も残っている。私は自作の小型スタンガンを隠し持っているため大抵の相手ならばどうとでもなるが、他の子が居て万一があっては怖い……そもそもそのような場面を見せたくはなく、この子達には心穏やかな時を過ごして欲しいものだ。なので、ここはわたし一人で確認しに行くべきだろう。そう、わたしの心の置き場所をくれたこの子達を、わたしが守らなければ。
「……
そうして数秒ほど手を止めて全速力で思考していたところ、その私の様子から何かを感じ取ったのか、沙也ちゃんが声をかけてくれた。彼女は寡黙ながらにわたし達をいつも気にかけており、今も小首を傾げた拍子に揺れた前髪の
「あはは~、ちょぉっと~お花摘んでくる~」
正確には、悪の芽を摘むのだけれど。
「……我慢はだめ……いってらっしゃい」
わたしが微笑み返すと、沙也ちゃんは手元──ノートパソコンに視線を戻す。彼女は手芸部の活動はそっちのけで趣味のゲーム作りをし始めており、そうとなればPC部にでも行って作業した方が効率は良い。つまりそれは、ただ皆と一緒に居たいからということを意味しており……わたしと同じ在り方という訳だ。
わたしは布地を机に置いて立ち上がり、体の動きに合わせて一瞬だけ目線を左隣のさっちゃんに向けるが……黙々と刺繍作業をしている。何かを察して一緒に来る可能性を懸念したけれど、物音は気のせいとでも解釈したのか、わたしの真意には気付いていないようだ。
そのままさらに左隣のひ~ちゃんに目線を流すと、彼女の髪と同じ
そこでわたしは、動揺を顔に出さないよう努めながら微笑み返すと、部室の出口に向かうのだった。
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