6-02 制裁
推理の末に導き出された夕の隠密襲来に頭を悩ませつつも、
坂の
さて、偶然にも指名手配少年Yを早期発見したわけだが、昨日の件についてどう調理してくれようか。夕からは「許してあげてね」と言われてはいるものの……他にも余罪がたっぷりとあることだし、さすがに無罪放免とはいくまいて。
ヤスの処遇を考えながら近付いて行くと、向こうも俺に気付いたようで、すぐに慌て顔に変わる。
「ゲッ……これはこれは、大地じゃぁないかぁ!?」
「んー? ゲッとは、嘘つきの挨拶だったか――なっ!!!」
「うぐっ」
当初予定通り、近付きざまに
「これで勘弁してやるよ」
「っごほぁ。うーーーきっつ。朝飯飛び出るかと思ったわ。まぁそれでも、だいぶ手加減されてる感はあるけど……ガチパンチだったら、今頃僕は地面に突っ伏してるだろうからね!?」
「そういうことだ。夕に感謝しとけよ?」
「ほんとそれな。これで済んだなら安いもんだよ……夕ちゃん、あんな素っ気なく言ってても、ちゃんとフォローしてくれたんだね……あぁ、マジで天使かな」
どうやらヤスは、こうなることは覚悟していたのか、むしろ減刑されていたことに
「ほほう、随分と余裕そうだな。よし、じゃあこれで勝手に秘密バラした精算は終わりな? 次は嘘ついて俺に部長業務を押し付けて、挙げ句に夕と楽しく遊んでた方の精算だな?」
「えっ、ちょっと待って? 合算されてなかったパターン?
ただの別払いだと思うが……こいつ絶対リボ払いの意味分かってないな。
「ん? リボ払いの利子まで欲しいのか? まったく欲しがりだなぁ」
拳を振り上げ、利子付きの次弾の用意をする。
「いやいや僕そんなこと言ってないから!? あと、別に遊んでたわけじゃないよ? 夕ちゃんに頼まれて仕方なくだからさ? そう、仕方なくなんだ!」
「……本当か?」
「…………すんません、夕ちゃんに誘われてぶっちゃけウキウキしてました!」
「ん、まぁ正直なのは評価するが、それはそれよ」
腰を落として、
「だぁぁぁ、待って待って! 夕ちゃんが聞きたいことを喫茶店で話してあげてただけで、遊んでたわけじゃないよ! そっそう! それで夕ちゃんと上手くいった感じなんだろ?」
「む……そう言われると、まぁ、な」
昨日ああして夕と心を通わせることができた背景に、ヤスからの暴露話の恩恵があったとも言えるのか……うーむ、しょうがねぇな。恩で罪を相殺としよう。仏じゃないから一度までだぞ?
ワンタイム
「それに帰り際に防犯ブザー鳴らされちゃってさぁ、そんな楽しむとかじゃなかったっての」
「は? 何でそんな事態になるんだ。どんな嫌がらせしたんだお前……」
「いや、ちょっと冗談で頭撫でたら鳴らさ――ぐぼがぁぁ」
やっぱり発動。割と全力で。
「ナ、ナジェ……」
ヤスは苦しそうにそう
「ん……ナゼか無性に腹が立った」
自分でも不思議なことに、昨日の帰り際に夕を撫でた時の様子がチラついて、なんかもんの凄いイラッとした。
「そ、そんな…………頭撫でた、くらいで、そんな、ヤキモチ、焼かんで、も……ってか、自覚、なしか、よ……ぐふっ」
「え?」
ヤスは地面でしんどそうにしながら、意外なことを言ってきた。
ヤキモチ? 俺が、夕に?
…………えっ、これってそうなの?
そう……だったのか。
全く気付いてなかったが、俺はヤキモチを焼くくらいには、夕のことを……む、む、むむぅ。
そう気付いた瞬間、なんとも言えない気恥ずかしさが
「あと……すでに手遅れな弁解だけどさ……ブザー鳴らすくらいには怒ってたから……大地が
「ん……そうか。まぁ、そうだよな。ならいいわ」
そんな事だろうとは思ったが、そうと聞いてすごく安心している自分が居るのが……くっ。
「……だからさ! 手遅れなんだよね!? 発射前に事情聞こうね!?」
復活したヤスが、両手を前に出して
「む、そうだな。すまん」
これは確かに過剰反応し過ぎだったと反省しつつ、青に変わった信号を横目に横断歩道を渡るのだった。
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