6-04 拒絶 ※挿絵付
新たな決意を胸にし、ヤスと道場へ向かって歩いていると、五十メートルほど前を歩く一人の小学女子の姿が目に入った。しかもその子が夕と同じ私学制服を着ていたので、もしやと思って遠目ながら観察してみると……腰下までの
「どった、大地?」
「……いや、なんでも」
この距離の後ろ姿でも余裕で判別できてしまったなんて、ヤスに知られるとまた
そうしてしばらく歩いていると、俺らと夕では歩く速度が全然違うので、自然と距離が近付いてきた。
「……あんれぇ? 前に歩いてるの……もしかして夕ちゃん……じゃね?」
「オー、ソウミタイダナー」
「ん……? さては大地、気付いてたな?」
「ソンナマサカ」
「ははっ、さすがだな。で、噂をすれば愛しのお姫様のご登場ってわけな?
「んなこと言われても知らんわ!」
ヤスがニヤニヤしつつ
「ったくオメーは、いつも好き勝手いいやがって。あと、夕がお姫様て……見た目はともかく、そんな柄かよ」
「へぇ、見た目の方はサラッと認めるんだな? ほー」
「……うっせぇよ」
仮にお姫様だとすれば、普段は家臣を散々振り回す傍若無人なお転婆姫だが、いざという時には情に厚く頼れる姫と言ったところ……いやいや、そんな設定どうでもいいし。おいそこの脳内プリンセス、十二
「ま、せっかくだし挨拶くらいしてこうぜ」
「……そう、だな」
昨日の件で夕の想いを本当の意味で理解してしまったので、正直なところ、まだ顔を合わすのも少々照れ臭かったりする。だが後々ヤス経由でこのことが伝われば、「んもぉ~、なんで声かけてくれなかったのっ!」と拗ねられるに違いないので、このまま放置はマズイだろう。
「おーい夕、こんなとこで奇遇だな?」
小走りで近付きつつ呼びかけると、夕はこちらの声に気付いて振り返る。だが、目の前で俺を見上げる夕は、小首を傾げて
「ん、どした? こんなとこで偶然出くわしたから驚いたか? それともお前、意外と朝弱いタイプで、まだ頭が半分寝てるとか? ははは」
夕のことなので、すぐにでも覚醒して大喜びで飛び込んでくるかもしれない……よし、可愛いお転婆娘をバッチリ受け止められるよう身構えといてやるか。そう
「あんただれ?」
夕は
(挿絵:https://kakuyomu.jp/users/mochimochinomochiR/news/16818093084049508239)
「…………え?」
今言われたことの意味が、全く解らない。
えっと、夕が、俺に、言ったんだよな?
「ど、どうしたんだよ夕……な、何か怒ってるのか? 悪い冗談はやめろよ、はは……」
自分でそう口にしておきながらも、絶対に冗談などではないと解っている。夕は仮にどれだけ怒っていても、例え冗談であっても、こんなことを絶対に口にするはずがないし、そもそも冗談を言うような和やかな雰囲気ですらない。それでも、せめて冗談であってくれと願って、口から出たのだろう。
だが現実は非情であり……
「いきなり話しかけてきて何なのよ? あー、もしかしてナンパ……とか? ってあんた高校生よね……ロリコンなの? うえぇ……気持ち悪い……」
夕は全身から嫌悪感を
「そもそもなんで名前知ってるわけ? もしかして、ロリコンの上にストーカーってやつ? さいっあくね! キモ過ぎなんですけど!」
「えっ……あ……」
いつもの優しかった夕が次々と投げかけてくる
「す、すまん大地。僕にもさっぱり……」
「……夕、その、どうしちまったんだ? 何か怒らせてしまったのなら、この通り謝るから――」
「く、来るなぁっ! こっ、これ以上近づいたら……お、大声出す、わよ!」
「っ!?」
弁解しつつ近付こうとした瞬間、夕はより一層険しい顔で後ずさると、防犯ブザーを握りながらそう警告してきた。しかも、その声と手は震えており……まさか、
「そん……な…………うっっ」
その耐え難い現実に、完全に頭が真っ白になってしまい、もはや立っていることすら覚束なくなってきた。
「――っ大地しっかりしろ! ここは引くぞ!!!」
「あっ、あ、あぁ……っ!」
ヤスの
その間も夕は、警戒と怯えが混ざった目で、こちらを
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