5-25 決意  (第1・2幕のエピローグ)

「ん、ここ、は……?」


 おぼろげな意識の中で辺りを見渡せば、水平線まで続く水面に青空が映っており、まるで昔TVで見たウユニ塩湖に立っているかのようだ。ただもちろん、そんな幻想的な場所に来た覚えなどない。


「やるじゃねぇか大地ぃ!」

「ぐほぉぁ」


 どういうことかと首を傾げていたところ、突然背中を叩かれ、前に大きくつんのめる。


「んな、この声は…………やっぱ親父か」

「ああ、お前の親父様だぜ?」


(挿絵:https://kakuyomu.jp/users/mochimochinomochiR/news/16818093078078662632


 振り返ってみれば、そこには昔と変わらぬ姿があり、ガッハッハと大口を開けて笑っている。

 ああ、夢だったか……夕が来るのではと心配していたが、まさか親父とはな。しかも二日連続でだ。


「いきなり出てきて何の用だよ」

「ん? そりゃおめぇ、頑張った我が息子を褒めにきたんだが?」

「いや、俺は何も……」


 暗闇で膝を抱えて動けなかったところを夕に救われただけで、褒められるようなことなど何もできていない。


「んー、成果を残すことに対してじゃねぇんだがなぁ」


 親父は少しあきれ顔で、ほおをぽりぽり掻いている。


「まぁ何にしろだ……夕星ゆうづちゃんを、大切にしてやれよ」

「っ! んなこと、あんたに言われるまでもねぇよ。俺はそんな恩知らずじゃないし、たっ、大切にするに決まってる」


 途中で少し照れくさくなり、横を向いてしまう。


「はは、そうだな。前借りは返さないと……螺旋らせんつながないといけねぇからな」

「ん?」

「だからこの先、お前達には数々の苦難が待ち受けているだろう」

「なんだ、一端いっぱしの予言者にでもなったつもりか?」


 親父は昔からたまにそういうところがあったが、死んでも変わらない――って夢なんだからそりゃそうだけどさ。


「だけどな――」


 そこで親父は真面目な顔になると、俺の両肩をパシンと叩き……


「大地、負けるなよ!」


 あの最期の言葉を、再びくれるのだった。

 こうして夢でも言われるということは、この言葉にどこか救われていたのかもしれない。

 本当に今さらになっちまったけど……ありがとうな、親父。


「ったく、心配性だな」


 そう、ひざを抱えて待つだけの子供は、もう卒業しなければ。


「もちろん負けねぇよ!」

「ガッハッハ、こいつは頼もしいな!」


 俺の答えに、親父は満足げに笑ってくれた。


「んじゃ、次は孫でも拝みにくるぜ!」

「ちょ、はぁ!? どんだけ気の早い――ってか夕とはそんなんじゃ――ええいクソ、もう消えてるし!」


 からかってくる親父に毒づくが、もう用は済んだとばかりに居なくなっていた。


「言いたいことだけ言って逃げやがって、まったくよ……ふふっ」


 親父はああ言っていたが、予言でも何でもなく、そもそも人生なんて苦難の連続なのだろう。それも未来人とかいうトンデモが出てきたとあっては、言わずもがなだ。

 でも、頑張るさ。こうして夢にまで心配して出て来ることが無いように。


 だからあんたは、草葉の陰でノンビリ見てやがれってな!




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大きな区切りとなる第2幕までお読みいただきまして、誠にありがとうございます。


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