第2幕

幕間01 ナミダツブ

第2幕の表紙です。

https://kakuyomu.jp/users/mochimochinomochiR/news/16818093076239386135

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【作者よりご注意!】

 これは大地視点以外のストーリーとなります。まずは大地視点のみで物語を進めたい方は、「5-01 https://kakuyomu.jp/works/16816452220140659092/episodes/16816452220162632372」からお読みください。

 しゃらくせぇ、御託はいいからさっさと読ませろぃ! という方は、どうか落ち着いてこの先へお進みください。






























 私は幸運にも、お邪魔な靖之やすゆきさんとコンビニ前で別れた後、大地と二人きりで帰宅することになった。思えば今日は、あの人関連で面倒ながらも色々と協力してきたけど、こんなご褒美があるなら頑張った甲斐があったというものね。

 そうして隣を歩く大地は、いつも通りつれないけれど、つれないなりに私の相手をしてくれるとても優しい人。それにツンツンしている大地は新鮮で、こうして色々な大地が見られるのはとても嬉しい。

 それでこれは…………実質帰宅デートと言ってもいいよねっ!? まさにアオハルイベント到来、もうテンション上がっちゃうじゃないのっ! 靖之さん、すっごーくゆっくりしてていいんですからね? 

 そうして喜びのあまり歌いながら歩いていたところ……ん、んん? チンピラだわ。うん、歴史の教科書に「チンピラ(Chin-pira)」として掲載されそうなくらいの、由緒正しいチンピラがいる。とりあえず遭遇記念に拝んでおくとして……ええと、女子生徒が絡まれてるのね、お可哀想に。

 その女子生徒を見ると、背中まで伸びる綺麗きれい栗色くりいろの髪と、誰をも優しく包み込むような柔和な顔つきをしていて、まるでひなさんを想像させる――ってひなさんその人じゃない! なんでこんな所で絡まれてるのよ!? …………え、待って、ひなさんからぶつかったの? いやいやいや、割と天然で粗忽そこつな人だけど、さすがにこれはナイわぁ。こんなザ・チンピラが居たら、普通は上手く避けるでしょうに……何か考え事でもしてたのかしら?

 ――ってえぇぇ、これはマズイのでは!? ここでひなさんが大地に助けられて、なんやかやで良い仲になってしまうパターン……悪漢からの救助なんてベタベタのベタだけど、それ故に実に強力だわっ! もしやワザと? またワザとなのかぁ!? ……んや、いくらひなさんでも、そこまではしないか――って呑気のんきに考えてる場合じゃない、大地の事だしすぐにでも助けに行っちゃう!

 私が慌てている間に、ひなさんに気付いた大地が立ち止まって考えており……これはまず穏便に話し合いを試みて、向こうが暴力に訴えてきたら、バシッとやっつけちゃうつもりかな? うんうん、大地強いもんね――じゃない、それだと二人の仲が進展するからダメだってば! 早く、早く何とかしないと――ってえぇえぇえ!?


「ちょっとパパ!」


 なんで歩き去ってるのよ! 

 そんなの……全然大地らしくない。

 ああ、私の声も無視して行かないでよ。

 くぅ、もう足が速いんだからぁ、待ってよぉ。

 邪魔っ、お兄さんどいて。


「パパってば! まっってっっ!」


 つ……かめたっ。


「どうしてっ――」


 ――あれっ、私なんで大地を助けに行かせようとしてるの? ここで行かせなきゃ大地への印象は最悪で、私にとってすごく都合いいじゃないの。現にさっきまで、大地が行くのを止めようとしてたんだから。

 ……うん、ひなさんには悪いけど、警察か勇敢な若者が来るのを待ってもらいましょ。こっちは恥も外聞もかなぐり捨ててるわけだし、中途半端な情で曲げたりなんか……絶対しないんだから…………それが、一番なのよ。


 ……。

 …………。

 ………………っ!?


 何考えてるのよ私は!

 私が好きになった大地はどんな人!?

 こんな腑抜ふぬけじゃないでしょ!

 それに、大地が悪く思われるなんてそれだけでイヤ、特にひなさんには。

 完全に目的と矛盾してるけど、そんなの関係ないわ!

 それが私のあこがれた大地の生き方なんだから!

 あぁーもう、三秒前の私を張っ倒したい――あ、まずそれだわ。


「だぁぁぁ!!!」


 これでよし! 打算的で弱い心の私は張り倒してやったわ!


「どうして、助けに行かないの!」


 よし言えた。もはや後悔はない。危うく一生後悔するところだったわ。

 あとは、何故だか腑抜けてる大地の目をばちっと覚まして、さっさと行きなさいと――


 え。


 ええ?


 大地は何て言ってるの?


 嘘でしょ。


 ねぇ大地ぃ……どうしちゃったの?


 大地がこんな事を言うのが信じられなくて、悲しくて、悲しくて……


 あぁっ、だめ……涙がこぼれ……ちゃった。


 だめなのにぃ、こんな事で泣いちゃ……大地は私が泣くのを一番悲しむんだから。


 それに、涙で同情を誘うなんて、そんなズルイこと、したく、ないわ。


 だからお願い、涙よ止まって!


「っっ! 泣いてなんかない!!!」


 でもなんで……なんでなのよぉ、大地?

 大地のことが解らない……。


「あたし、こんな、こんな大地なんて見たくなかった!」


 うぅぅ、こんな状態じゃ、大地の顔なんて見てられないし……こんな弱いところを見せたくもない。

 それに早くひなさんを助けなきゃ。思ったより相当深刻な状況だったし。

 そうして戸惑う大地を一人残すと、元来た道を走りだした。




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 引き続き第2幕もお読みいただきまして、誠にありがとうございます。

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