01 夕日燃える坂で(再唱の世界)



 温もりたたえた光に目を細めて 見知った坂を歩く

 ほんの少し後ろで 遅れてついてくる君と共に


 大したことのない長さのこの道が 本当に大した事が無いように見えて

 少し落胆 肩を落とす


 毎日共に歩いてきたこの坂は 意外に短かったのだと振り返る


 二人でいる時間 夕日を眺めて歩く記憶

 そんな瞬間がこの先途切れるだなんて 

 過去を切り離して 未来さえも消しさってしまう


 燃える坂 照らす夕日の熱を 忘れまいとこの胸に刻みつける


「俺は、この選択が予想だにしない結末を迎える事になるなんて思っていなかった」


「俺さえ犠牲になれば、きっとすべては救われるはず」


「そう思っていたのに」


 やさしい温もりを背中に灯す 熱のような光であふれたこの坂を

 ほんの少し後ろで歩く君と 途切れる場所まで


 ――あと、もう少しで 俺達は永遠に離れ離れになるだろる


 ――きっと再会する未来など 存在しない


 ――それでも良いと思っていた






「ストーリー」


 俺はお前の都合をまるで考えていなかった。

 世界に置き去りにされるお前の都合を。

 同じことを、お前にやられて初めて気が付いたんだ。

 俺は、なんて残酷な事をしようとしていたのだろう。


 ある日、ある場所で俺は魔女に出会った。

 俺はどうしてもあいつを助けたかったから、魔女と取引をしたのだ。

 俺がいない世界にするかわりに、あいつを助けてくれと。

 でも、消えたのは俺じゃなくてあいつだった。


「人間一人を消す代わりに、世界をよりよく」


――私は魔女、約束は守る。ちゃぁんと言葉通りにしたわよね?


――でも、言葉通りの事しかやらない。


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