フェルサの旅

テスジェペ攻防戦

　魔物達によるテスジェペの攻撃が始まった頃、フェルサはグノンバルで新兵器のテストを行っていた。ゲオン達は先に旅立った。

　「もう少しで出来上がる。レンディそれまで耐えてくれ……」

　フェルサは呟きながら計器をチェックした。

　一方テスジェペに集結した各地の抵抗軍は空を飛ぶスレイサ隊と歩兵隊に分かれて魔物と戦っていた。

　「スレイサ隊は魔物を倒しつつ、上空の破壊兵器を潰す！」

　スレイサに乗ったゲオンが機体を上昇させると数十機のスレイサも共に上昇を始めた。

　「くっ、ギラド人が！」

　目の前に翼を広げて飛ぶギラド人をゲオンは光弾で撃ち抜いた。ギラド人の体はその場で消滅した。

　「大将がいないと案外脆いもんだな」

　雲を抜けた先には兵器が発射体制に入っていた。

　「まずい。黒いやつを撃ち落とせ！」

　ゲオンが無線機に向かって叫んだ。スレイヤの一斉射撃が始まった。

　空に浮かんだ黒い球体はバランスを失って稲妻を発射せずに墜落していった。

　「他にもある筈だ。周辺を探せ。新手か！」

　ゲオンが見た遠い方向に翼を広げたギラド人達が飛んでいた。

　「何だ。あいつらが持っているのは？まさか新兵器……各部隊は引き続き迎撃を！グノンバル隊は俺に続け！」

　ゲオンは機体をギラド人達に向けて飛んだ。

　ギラド人が持っているのは大型の銃だった。

　「まさか、あれでテスジェペを撃っても効かないだろう。この下の連中を狙っているのか！レンディ。上空から狙っている連中がいる。退避させろ」

　デオンの怒鳴り声に「何！了解した」とレンディが答えた。

　「ラック。どうだ」

　「ああ、確かに真上に何かを持っている奴が狙っている。逃げるんだ」

　レンディの耳につけた無線機からトトに乗ったラックが答えた。

　「間にあわない。光壁を張る。信号弾の方向に集結」

　レンディの指示で信号弾が上空に発射されて長身の銃のような装置を持った兵士達が次々と銃身を空に向けた。

　「展開しろ！」

　レンディの合図と共に光の傘が地上のあちこちに広がった。

　上空に止まったギラド人の銃口から青白い稲妻が発射された。

　「くそっ、間に合わないか」

　デオンが光弾を発射しながら呟いた。

　「いけるぞ」

　トトに乗ったラックが地上を眺めながら言った。

　「傘のようにあちこちに広がった光の壁がギラド人が放った稲妻を受け止めた。稲妻は消滅した。

　「よし、よくやった。この野郎。まとめて落としてやる！あいつらを狙え！」

　デオン達がギラド人達に向けて一斉に光弾を発射した。ギラド人達は次々と地上に落ちて行った。

　「うわあああ！」

　無線に入って来た叫び声にデオンは「どうした！」と訊いた。

　デオンの目の前にラックが飛んできた。

　「何だ。味方の魔物使いか。おい、どうした！」

　「ここから先に稲妻の兵器が浮かんでいる」

　「わかった。それから急に姿を現すなよ。仲間がその魔物に撃つかも知れないからな」

　デオンが手を振りながら言うとラックは「わかったよ」と地上に降りて行った。

　「全く……フェルサの仲間は濃い奴ばかりだな」

　デオン達は遥か先に点の様に見え黒い球体を目指して飛んだ。

　「くそっ、キリがないぞ」

　「お兄様、弱音を吐くのは早いです！」

　地下街に通じる入口付近でベリフとチャミは魔物の大群と戦っていた。

　ベリフの長剣とチャミの蹴り技が炸裂して魔物を次々と倒していったが一向に減る気配はなかった。

　「くそっキリがないぜ」「どこかから湧いているのか」

　兵士達の言葉にベリフはハッとした。

　「そうか。瞬間移動しているんだ！どこだ」

　ベリフは魔物達を倒しながら群れを見渡した。

　「ラック、地下街を襲っている敵の流れの源はどこだ」

　「ちょっと待ってくれ。見つけ次第、信号弾を落とす」

　ベリフの耳につけた無線機からラックの声が聞こえた。それから程なくして南西の方向に光が落ちた。

　「あそこか。チャミ、来い！」「了解です！」

　ベリフとチャミは敵を倒しながら信号弾が落ちた場所に走った。

　「やっぱりそうか」

　そこにはアーチ状の機械が設置されてそこから魔物達が出入りしていた。

　「せこい真似を！」

　二人は魔物の合間をかわして移動装置の前に立った。

　「もらった！」

　ベリフが剣を振り下ろした。

　「うっ！」

　背後からベリフの体を貫いた。ベリフは剣を落とした。

　「よくわかったな。やはりお前を先に殺しておいた方が良さそうだ」

　カリュスがにやけながら言った。

　「お兄様。カリュス、よくも！」

　チャミが蹴りを入れようとしたがカリュスは軽くよけてチャミの足を掴むとそのまま地面に何度も叩きつけた。

　チャミは「ぐわっ！」と口から血を出して気を失った。

　「俺は子供だからとか遠慮はしないからな！」

　カリュスは倒れたベリフとチャミの体に何度も蹴り入れた。二人は動かなくなった。

　「まあ、この位にしとくか。胸くそ悪いしな。地下街を目指す。我に続け！」

　カリュスの声にギラド人や魔物達がついていった。

　「何、ベリフとチャミが！」

　「幸い殺されなかったようだが、こっちは助けに行けない。それに奴らは地下街に入るようだ」

　「わかった。引き続き調査を頼む」

　レンディは冷静に答えながら拳に力を込めた。

　「光壁を地下街入口に」

　レンディが無線で指示を出していると頭の上に大きな影が落ちた。

　「何だ！」

　その巨体はゆっくり降りて来た。