焼けた世界で
ギランクスからの攻撃を受けて多くの町が壊滅的な状況になった。
旧時代の技術が蓄積されたテスジェペは光壁で防いだものの、ホルベックは跡形もなく焼けてしまった。
そんな町でも事前に連絡が広がり多くの住民はよその町や洞窟に隠れていた。また近くのゼロラ人の隠れ里は攻撃を免れて法王のカロクら寺院で勤めていた者達はそこに身を寄せていた。
「どうだ。維持装置の出来は」
「ここにあった予備の部品で組み立てましたが、修理用の部品があまりないようです」
「そうか。グノンバルに頼んでみるか」
ダルキアの答えにカロクは腕を組んで答えた。
「法王様、私が頼みに行きます。フェルサの様子も見に行きたいですし」
そばにいたレルリが答えた。
「そうだったな。それじゃ二人に任せる。頼んだぞ」
カロルはそう言うとゼロラ人の民家に入って行った。
「法王様、お疲れですね」
「まあ仕方ないな。いくら事前に住民を避難させたとは言えホルベックが跡形もなく消えたからな。代々町を守ってきた法王様は胸を痛めているのだろう。私達が支えないといけないな。避難を誘導した他の司祭が戻ってくるまでここで動けないから、レルリ殿は技師のペイジーと一緒に行ってくれないか」
「わかりました。ギラド人は同胞を狙うとは考えにくいですがここも安全とは言えないですものね」
「ああ、前の襲撃もあるからテスジェペの要請よりも彼らを守るのが優先だからな。頼んだぞ」
翌日、レリルはグノンバルへ出発した。
「どうしてテスジェペに残らなかったんだ。この程度のサイポスの通信でも良かっただろう」
ダダンが端末を見ながらフェルサに訊いた。
「戦いに役に立たない人間がいても仕方ないだろ」
「随分あっさり言うな」
「俺は俺の戦い方をする。それにはテスジェペじゃなくてここが必要なんだ。俺がいたら邪魔か?」
「いや、むしろずっといて欲しい位だ。ただお前はいつか仲間の所に行くんだろ」
「ああ、その時が来たらな。できれば次のテスジェペの作戦には行きたいな。その為には新しい兵器が必要だからな」
「だがその兵器が出来たら人間はどうすると思う」
「どうするって……」
ダダンが訊くとフェルサは言葉に詰まった。
「わからないよ。そういう小難しい事は。レンディならきっとズバッと答えるだろうけどよ。あいつ時々オッサンみたいな事を言うんだよな」
「ハハハ。今じゃ抵抗軍を束ねようとしているリーダーだからな。その位じゃなきゃ務まらないだろう」
「けど、まだ俺よりちょっと上の女の子だぜ」
「その女の子でも未来を背負わなきゃいけないのが今の時代だ。俺達も負けてられないぜ」
ダダンがフェルサの肩を叩いた。
「そうだな」
フェルサは答えてダダンと設計図を見て話し合った。
テスジェペの近くの地底湖には相変わらずシュルギマトラが休んでいた。
「古竜よ」
脳裏によぎる声に竜はフッと微笑んだ。
「どうした。カミラガロル。お目覚めで調子よさそうだな」
「いきなり皮肉か。年を取りすぎると人間は性格が捻くれるそうだがお前も同類か」
「よく言う。それで用件はなんだ」
思念で送られる声に竜は微笑んだ。
「テスジェペを攻める事にしたよ。お前を敵にするのは厄介だが」
「私は人間に手を貸すつもりはない。好きにすればいい」
「そうか。それなら安心した。その割にはフェルサ達には鱗をくれてやったそうじゃないか」
「遊びで戦ったら奴らが勝ったから約束の鱗をくれてやっただけだ」
「それなら良い。てっきりフェルサに肩入れしているのかと思ったぞ。地の門の守り手の末裔だからな」
「何だ、あいつの事を知っていたのか。確かにボレダンの子供だからな。あいつの血を調べたら私を作った人間の末裔なのは確かだ。しかしそんな人間は今の時代には他にいるから奴だけが特別という訳ではないぞ」
「そこまで達観できるなら安心した。てっきりお前の体に血族に手を貸すように細工されているのではないかと思ったぞ。それじゃ予定通りテスジェペを攻撃させてもらう。そこの洞窟には攻撃させないように部下に言っておくよ。それじゃな」
カミラガロルの思念は途切れた。
「ふん。律儀な魔物だ」
竜は軽くにやけて湖の底で眠りについた。
その数日後、ギランクスから無数の魔物が飛び立った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます