ゾルサムの兄妹
ベリフとチャミはゾルサムに戻って仕事の引継ぎと修業に明け暮れていた。
「いくら竜の鱗の剣を持っているからって使わなかったら意味ないぞ」
二人の父親であり長老のバリンツはベリフの相手をしていた。
「くそっ強い」
立ち向かう度に木刀で叩かれるベリフは悔しさをにじませていた。
その横でチャミが腕立て伏せをやっていた。
「お父様、厳しすぎます」
「寝言を言うな。お前達が何も出来なかったからあちこちの町がやられたようなものだ。全く、こうなるのなら最初から厳しく教えておけば良かった」
「まあ、そう力むなよ。兄貴。チャミ、腕立てが終わったら相手してやるよ」
バリンツの妹のケリンが靴を脱いで蹴りの練習を始めた。
「うわあ、叔母様まで……死にそうです」
「泣き言なら後で聞いてやるから今はかかってきな!」
こうして二人は体を鍛えていた。
夕方からは仕事の引継ぎをやっていた。
ベリフは他の町との調整を行う大臣の役割を担っていた。代役はテリという中年の男でいつもベリフの補佐を行っていた。
「すまないな。テリ。お前の仕事を増やして」
「気になさらないで下さい。長老はああ見えてベリフ様とチャミ様に期待しているのです。確かに戦いの結果は不本意でしたが次は絶対に勝てると信じているのですよ」
「そうかな。俺は背負うものが何か足りない気がする。フェルサやレンディ達と違ってさ」
「あのお方達は違いますからね。フェルサ様は特に……」
「フェルサがどうしたんだ?」
書類の整理をしていたベリフがテリを見た。
「いえ……シャルマ様をまた殺されて無念だっただろうと」
「そうだな。でもテリ、それだけじゃなさそうだな」
「ハハハ、さてどうですかね。大臣は心の中にしまう物が多いですから」
「それは親父の教訓だがな。まあいい。フェルサか……元気にしているのかな」
こうして二人は毎日話し合っていた。
一方のチャミは靴の調整をしていた。
「やっぱり私も同行しましょうか?」
チャミの靴の技師であるメッテンが心配そうに訊いた。
「いや。大丈夫です。闘技は足が大事だから壊れたら脱いででも戦います」
「本当に勇ましいのですね。チャミ様」
「シャルマを守ってあげたかった。可哀想です」
チャミが泣き出した。
「そうですね。今度はチャミ様が悲しんでいるフェルサ様を守ってあげないといけませんね」
メッテンがチャミの頭を撫でた。
「そうね。そうよね。私が守らないと……頑張る……」
チャミは涙をぬぐってメッテンから靴の修理の仕方を学んだ。
こうしてゾルサムで過ごした日々は終わり、二人はスレイサに乗ってテスジェペに向かった。
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